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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
2章 燃える森の秘密

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10話 コアラと盗賊

 野盗……なんてファンタジーな物言いをしているが、前世チックな言い方をすれば強盗だ。


 強盗相手に、四歳児ができることといったら隠れることだ。

 ベッドの下とか、クローゼットの下に隠れて、騒ぎが収まるのを待つだけ。


 アラサー女子だとしても同じだな。決して女子どもが戦おうとしてはいけない。いのちをだいじに。いのちより大切なものはないのだから。


「でもなぁ……わたし、一応、魔法使い」


 今更ながら、魔法使いとは、この世界でも魔法を使う人のことである。

 この『マジカルティア』の住人全員が魔力を持っているわけではないらしい。だいたい一、二パーセントの割合の人が魔力を持ち、だいたいが魔法使いの道を歩む。モンスターもいる世界において、魔法使いの仕事は、モンスター退治はもちろん、下水道の整備や道の開拓などの公共事業等多岐に渡り、決して食いっぱぐれることはない。公認魔法使いになれたら、それこそお城にある魔導研究所の研究員や、王様直属の魔導兵団員など、エリート街道まっしぐらだ。


 と、そんな魔法使いの卵であるわたしが逃げるなんて選択肢をしていいのだろうか。


 ましてや、わたしたちの夢はすっごい魔女になること。

 すっごい魔女が、強盗から隠れるだけでいいのかな……?


 そんな逡巡をしたせいで、わたしの行動は遅れた。


 扉が乱暴に蹴り開けられてしまったのだ。


「よし、あの野郎はいねえ……ん?」


 目が合うのは、スキンヘッドの男。


 シミターっていうんだっけ?

 弧を描いた剣を肩に担いで、大股開きでにじり寄ってくる。


「なんでぇ? 女の子……あいつ子持ちだったのか?」


 幸い、敵はひとり。わらわらタイプの盗賊じゃなくてよかった……。

 だったら……。


「しかもかわいいツラしてるじゃねーか。高く売れるぜ」


 と、野盗が手を伸ばしてきたときがチャンス。


「えいっ」


 わたしはスキンヘッドの顎を目がけて頭突きした。

 すぐさま身をかがめて、ダッシュ。もちろんコアラもぎゅっと抱きしめて。


 リュックを持ち出す暇はない。いのちをだいじに。一目散に小屋から逃げ出そうとするも……扉から出た途端、足が止まってしまう。


 ……外で仲間が待っているなんて、聞いてないなぁ?


 何人くらいいるのだろう。二十人くらい……まさに盗賊団と呼んでよさそうな集団である。

 各々みんな武器を担いで、粗野な恰好をした男集団がわたしを睨んでくる。


 思わずたじろいだとき、うしろから肩を押さえられる。


「動くな。大人しくしてりゃあ、怪我させねーから」 


 前世は魔法もなかったけど、剣とも無縁の生活だった。

 背中から刃物を突き付けられているという経験は、異世界でも勘弁だったな。

 万事休すとは、まさにこのこと。


 あぁ、わたしの異世界生活……今度は奴隷編に突入か。奴隷商人がイケメンのお兄さんだったりするのかな? それとも盗賊たちの根城に帰ったら、イケメンの首領がいたりするのかな。


 なんて懸命にポジティブ考えようとしても、手も足も震える。

 どんな環境になっても、コアラだけは守らないと……。

 そう、モフモフをぎゅっと抱きしめたときだ。


 盗賊のひとりがケタケタと笑ってくる。


「かーいいぬいぐるみ抱えちゃってまぁ……いいぜ。そのぬいぐるみも高く売れそうだが、特別お嬢ちゃんと一緒に――」


 モフモフのかわいいぬいぐるみを見たら、眺めたくなるのは人間のサガ。


 だけど、彼らは知らない。

 わたしが抱きかかえているのは、ぬいぐるみではなく生きているコアラであることを。


 そして、コアラの爪は鋭くて強烈だということを。


「いっ……いててええええええええ。何すんだてめえええ」


 何すんだてめぇ、は、コアラのセリフであろう。

 コアラは木登りする都合上、爪がけっこう強靭にできている。

 いきなり知らない人に触られそうになって、ぺしっと引っ掻かれたらかなり痛いだろう。

 わたしは幸い飼い主補正で、よじ登られようが痛くもなんともないが。


 ともあれ、コアラが起きた! これで形勢逆転だ!

 盗賊たちが一斉に剣を抜いてきても、コアラが起きたなら負けない!


「コアラ、反撃だよ!」

「ぐもおおおおおおおおお」

「ちょっと待って、まだ寝てるの!?」


 たしかにまだ寝てから二十時間経ってないけども!?

 でも、飼い主のピンチだよ! たまには融通利かせてくれても……。


「ぐもおおおおおおおおおおおおお」

「やっぱりだめだあああああああ」


 詰んだ……今度こそ絶対に詰んだ……。

 そう絶望したときだった。うしろのほうにいた盗賊たちが「ぎゃっ」「ぐぎゃっ」と鈍い声をあげて吹き飛んでいく。そんな騒動に前方の盗賊たちも気が付いたのだろう。だけど、振り返ったときにはすでに吹き飛ばされて……その巨体は、わたしの前までやってきた。


 森に生息する茶色い毛むくじゃらの巨体は……四歳なら、こう呼ぶべきだろう。


「森の、くまさん……?」


 


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