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ちみっこ魔女転生~使い魔がコアラだったので、たのしい家族ができました~  作者: ゆいレギナ
2章 燃える森の秘密

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9話 幼女とふしぎの森

2章スタート! さいしょちょっとだけ長めです。


 燃える森。

 そう称される森は、およそ一年前に、とある領地に突如出現したらしい。

 十数年前に流行病で廃村となった場所に、突如生い茂る森が出現。苗木から木が生長するまでには四、五十年かかるものだし、その領主も植林を命じた覚えがないという。


 そのため、何か未知な魔法やモンスターが原因ではないかと、調査依頼が王城まで回ってきたらしいのだ。


 旅立つ前日に、豪華なレストランでおいしい食事をいただいている。

 無論、個室だ。王族だなぁ。


「それで、普段魔法や使い魔の研究と称してあちこち放蕩している僕に、お鉢が回ってきちゃったんだよね~」

「殿下が趣味の旅ついでに現地に行ってきたらいいじゃないですか」

「殿下じゃなくて、パパって呼んでよ」

「パパらしいことしてくれたら検討します」


 モグモグと食事をいただきながら、「パパらしいことってなんだろう」と真剣に考えだすミハエル殿下を尻目に見る。本当に真意が読めない御方だ。コアラが目的なのは明白だけど、かといってわたしとコアラを離そうという気はないらしい。合わせて研究などするにしても、どこかに隔離するわけでもなく、外の危ない場所に調査に行けと? しかも護衛も何もないらしい。くっそ、イケメンめ。イケメンだからって何でも許されると思うなよ!


 と苛立っても、おいしいご飯に罪はないのでモグモグしていると、殿下が話を戻すらしい。


「ともあれ、僕に時間があれば自ら調査に行きたいところなんだけど、ほら、僕って今、学園の教師もしちゃってるじゃない? まあ、きみのコアラくんとお近づきになりたくて、無理矢理押し込んでもらったんだけど」


 結局、カーライル殿下との決闘事件しかり、わたしの休学もこいつが諸悪の根源……という思想はご馳走とともに咀嚼していると、二十五歳の父親(仮)がウインクする。


「でも代わりの先生を用意するのも時間がかかるっていうから……ね? おねがい♡」


 父親(仮)からの♡付きお願いとは、いかに……。

 くっそ、イケメンだからって何でも許されると以下略。

 ちなみに、コアラは豪華なお皿に載ったドレッシングなしユーカリを、とても美味しそうにむしゃむしゃしている。


「コアラくんも喜ぶと思うよ?」


 殿下もそんなコアラに向かって、にこりと微笑む。

 意味深なことを言いやがって、イケメンが。

 そんなイケメンに、わたしは粛々と尋ねる。


「そーいや、カーライル殿下から届いた絶縁状はどうすればいいですか?」

「スルーしておけばいいと思うよ。僕のほうから上手くいっておくよ」


 ほんとに信用していいのか定かではないけど、こう言うってことはミハエル殿下からカーライル殿下にコンタクトをとるということなのだろう。


 大好きな叔父さんと話せる機会が増えるってことは、カーライル殿下もうれしいよね?


「なら、よろしくお願いします」


 そういうわたしの口周りを、ミハエル殿下が嬉しそうに手を伸ばして拭ってくれる。

 身体は四歳なのだ。どうしても大人のときのように器用に食べるのは難しい。


 それでも少しの屈辱に口を尖らせると、ミハエル殿下が嬉しそうに目を細める。


「今のはパパっぽかった?」

「……全然」




 というか、『燃える森』なんてカッコいい言い方していても、ようは森林火災ってことだよね。魔法もコアラの機嫌次第の四歳児は、近づくことも危ないのでは……?


「ぐもおおおおおおおおおお」


 わたしは容赦なく左腕でいびきを掻いているコアラをぐりぐり撫でる。

 あーあ、今日もわたしのコアラがかわいいなー!!


 そういうことで、ルルティア=フォン=パルキア(無事に苗字が変わったことも確認しました)、森までは馬車で快適に連れてきてもらいました。


 たしかに、十年くらい前まで廃村だったとは思えない鬱蒼とした森だ。

 ここからはコアラとふたりぼっち。


 わたしは生唾を呑む。


「モンスターが襲ってきたら……退治してくれるんだよね?」

「ぐもおおおおおおおお」

「やっぱり寝てやがるううううう!」


 コアラはさっきまで起きていたから、とうぶん起きることはないだろう。

 かといって、馬車はすぐに引き返してしまったし、今はお昼過ぎくらいの時間だから、モタモタしていたらあっという間に日が暮れること間違いなし。


 噂によれば現状、モンスターの報告はないものの、野盗の被害報告は出ているらしい。当然、歩いて帰れる場所に宿はナシ。


「こんな場所に、四歳児を派遣するなよ」


 誰もいなければ、口も悪くなるというもの。

 諦めて、わたしはいざ、森の中へ。


 お天気のよい中での森林散策。周辺の気候に比べて、森の中は上着がいらないくらいに暖かい。縦にながーく伸びた木々は前世日本では馴染みのない風貌だが、わたしは動画で見たことがあった。


「ほんとにユーカリだあ!」


 前を見ても、後ろを見ても、ユーカリの木。

 ここはまさにコアラにとっての楽園である!


 ちなみに殿下がくれていたユーカリの葉も、調査の一貫で送られてきたものだったらしい。つまり、コアラのお口に合う代物ということ。


「ま、肝心のコアラは寝てますけどね」

「ぐもおおおおおおおおおおおお」


 ほんと、おうちのご近所にあれば最適なお散歩コースになるだろうユーカリの森である。


「だけど……四歳児がさぁ、派遣されていい場所じゃないと思うんだよね」


 森に入って、とうとう日も暮れてくると気分も落ちてくるというもの。

 持てる限りの水や食料は用意してもらったけど、しょせんは四歳児のリュックに入る程度。この世界には、チート異世界系お決まりの容量無限収納道具なんて存在しないらしい。


 わたしにあるチートは、(起きていれば)最強のコアラのみである。


 ……いや、最強だよね?

 まだカーライル殿下との決闘でしか魔法を披露してもらったことないけど……チートだよね? 頼むから最強コアラであってくれ。せめて『コアラ無双deちみっこ魔女転生』でありたい。


「……現実逃避はやめよ」


 わたしはため息をついて、今一度現状を確認する。


 調査というわけで永住する必要はないにしろ、しばらくこの森に滞在する必要がある。


 謎のユーカリの森。付近にまともな村もない。

 川もない。大人もいない。わたしは四歳。

 将来の夢はすっごい魔女になること。


 だけど魔女になる前に、こんな場所でひとり、どうやって生きていけと?


 詰んでいる。やっぱりわたしは詰んでいる!


「……というか、燃える森、ユーカリ……なーんかここまで出かかっているんだけどなぁ」


 そう、調査で来ているのだ。この謎が解明できれば、今すぐにでも帰れるわけで。

 詰んでいる状況から早急に脱却すべく、前世知識を絞りだそうとしているときだった。


 やさしい風がふよりとわたしの髪を撫でていく。

 その先から、リンリンと鈴のような音が、まるでわたしを誘っているようで。


「……なんだと思う? コアラ」

「ぐもおおおおおおおおおおおおお」

「やっぱり何の役にも立たねええええ!」


 こうなりゃ自棄だ。何も頼るものがないわたしはリンリンとした鈴の音に付いていくことにする。ダメでも、森のど真ん中で四歳児が野宿するよりマシだと信じて。


 しばらくすると、小綺麗な小屋が見えてくるではないか。 


「おっ邪魔っしまーすっ!」


 幸い、今は四歳だ。ノックなしで扉を開けてみれば、やっぱり無人。だけど人が暮らしているのか、最低限の家具や食器が丁寧に並べられている。


「この様子だと、悪い人の秘密基地……ってわけじゃなさそうだよね」


 この中で、わたしが一番誘われるのはベッドだった。

 薄いマットレスだ。だけど、ベッドなだけマシ。前世は職場のデスクの下で寝袋仮眠をとっていたこともある社畜にしては、贅沢なくらい。


 四歳児の身体で、馬車旅のあとの半日森歩きはツラいんだよ……。

 無意識にベッドに昇ってしまったわたしの視界が、どんどん暗くなる。


 左腕にくっついているコアラを抱き枕にするにも、慣れてきたなぁ。




 ガタガタという物音に、わたしはまぶたを擦る。

 隣ではコアラが「ぐもおおおおおお」しているけど、そんな慣れた音ではない。


 わたしは慌てて身を起しながら、ぎゅっとコアラを抱きしめる。

 もしかして、野盗!? 


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