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飲み会(2)

沈黙が漂う。先ほどまで盛り上がっていた空気が一気に冷えたような心地がした。しかし、その空気を作り出す原因を作った目の前の男は相変わらず、表情は笑顔のままだった。それに対し私の顔では明らかな変化があった。上がっていた口角が下がり、下がっていた目尻が元に戻る。真顔に顔がもっどていく感覚に私は慌てて表情を取り繕う。


「内緒です。」


うまく笑えていただろうか。右頬に引きつりを感じる。しかし、あくまで笑顔を作るしかない。ここで動揺したり、変なノリをしてしまえば色々面倒なことを私は経験則でわかっていた。


「北井さんは彼女いないんですか?」


話題の矛先をどうにかして自分から逸らそうとする。ここで北井がいると発言すれば彼女がどんな人なのか話を膨らますことができる。北井はその質問に特に驚く様子もない。むしろ先ほどまでの笑みを崩さずこちらをまっすぐ見ていた。思い返せば今日、彼が私から目を逸らすような瞬間を見たことがない。人と話すことになにも恐れや遠慮がなく、堂々としている。そしてその態度がますます私をみじめにさせる。


「俺は・・・」

「お待たせしましたー!」


「ビール二つお持ちしました!」溌剌(はつらつ)とした声が北井の声を遮った。注文した飲み物がテーブルにドンっと置かれる。


「ごゆっくりどうぞー!」


店員が席から離れていく。話が途切れてしまい、二人とも手持ち無沙汰になる。気まずさに先に耐えられなくなったのは私のほうでビールが入ったグラスを自分の方に引き寄せる。自分の冷えた指先をビールの水滴がぬらす不快感を無視しながら、明るく取り繕う。


「とりあえず乾杯します?」


北井の目線が私の手元にあるビールと私の顔を何度か行き来する。北井は少し吹き出し、はにかむような表情を見せた。


「そうやな。乾杯しよ。」


良かった私の発言は間違っていなかったようだ。


「かんぱーい」とお互いにグラスを寄せ合う。カチッと小気味よい音の後、私はビールを一口飲む。緊張かそれとも話しすぎかその両方か、乾いていた口に含んだビールは犯罪的なおいしさだった。本当はもっとごくごく飲みたいところだが、人前なのでそれは控える。ふと目の前の北井を見ると、彼も同じようにビールを一口飲み、「ぷはっ」と一息ついていた。


「うまいな」

「おいしいですね」


結局、彼女の有無については聞けなかった。まあ、どっちにしろそういう経験はあるんだろうなと自分の中で結論づける。でなければ、女子と二人っきりでここまで話せる訳がない。自分の彼氏話に戻られてしまう前に早いところ恋愛とは別の話題を話さなければと、頭の中で考えていると、北井の鞄から音が鳴った。北井はスマホを取り出し、こちらにごめんというジェスチャーして電話にでる。


「お、来たー?了解了解」


一言、二言ですぐに電話を切る。こちらに向き直り、嬉しそうな表情を浮かべている。なんとなく電話の相手は誰だかわかった。


「他のみんなも来たって!」


飲み屋について30分はたっただろう。ようやく北井との時間がここで終わる。二人きりから解放される喜びと同時に今度は大人数の飲み会に混ざらないと行けない緊張感で、私は複雑な愛想笑いを浮かべる。その表情をごまかすように私はビールを一口ぐいっと飲んだ。


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