飲み会(1)
「18時にここのお店集合で!」
時間はあっという間に過ぎ、飲み会の日がやってきた。遅れていくのも気まずいので時間通りに、送られてきたメッセージで示されていたお店の前に着く。しかし、行きたくない思いが強すぎてこのままドタキャンしてしまおうかと考える。今なら間に合う。適当に急用が入ったと言えば大丈夫だろう。そうだそうしよう。
「あれ?三田ちゃん?」
このまま回れ右をして家に帰ろう。そう決意をした瞬間、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。そして、それは聞き間違えるはずもない今回誘ってきた張本人、北井だった。
「今来たところなん?」
まさかの鉢合わせである。まあ飲み会の約束をしてる時点で会うのは必然なのだが。しかし、ドタキャンを決行しようとした私にとってはとんでもないタイミングである。この場にいる以上、急用が入ったなどという言い訳は通用しない。「ここのご飯おいしいんだよね」と言いながら北井はお店の扉を開けた。
「ん?入らないん?」
扉を押さえ、私に先を促す仕草はどこか手慣れていた。まあ、北井は顔も整っており地元には珍しい高身長だ。モテないはずはないだろう。そんなことを頭の隅で考えながら、私は自分がもう後戻りできないことを悟り、おとなしく店の中に入っていった。
「まだみんな来てへんみたいやな。」
嘘だろ。まさかの私たち二人以外全員遅刻である。なんのいたずらか北井と二人きりになってしまった。気まずさと緊張で手足の先が冷えていく。そんな私の様子をよそに北井はタブレットでメニューを見ている。
「何飲む?」
自分の飲み物を選び終わったのか北井はこちらにタブレットを差し向けた。適当にビールを選ぶ。
「お、お酒飲めるん?」
「まあせっかくなんで・・・。」
「へー以外」
北井は何が面白いのか口元に笑みを浮かべている。二人きりというこの状況でも北井は緊張している様子はなく普段通りの雰囲気を保っている。人付き合いに慣れているのだろう。会話が短く途切れてしまい沈黙が来ても「食べ物何にしよかな」と一人楽しそうにタブレットを見ている。
「とりあえず適当に頼んどくな」
そういって北井は注文を一通り終わらせ、タブレットを元の位置に戻す。視線が私に移動し、お互いの目が合う。何か照れくさくなった私はすぐさま手元に視線をずらす。しまった、スマホでもいじっておけばよかった。しかし、北井は特に気にした様子も無く話始める。
「今日来てくれてほんまに嬉しい。三田ちゃんと話してみたかったんよね」
「あ、そうなんですか」
「あー敬語じゃなくてええよ。俺ら同級生やし」
思わず愛想笑いをする。この手のノリは苦手だ。
「ていうか発表まじでありがとな。三田ちゃんのおかげでなんとかなったわ」
「いや私はみんなのサポートをしただけというか」
「いやまじ三田ちゃんいなかったら俺たちぐだぐだだったと思うわ」
「いやそんな大げさです」
会話のテンポに慣れ余裕が出てきた私は手元にあった視線を北井のほうに向ける。北井は相変わらずへらへらと笑った顔をしていた。彼はいつも笑っているような気がする。友達と話すときも、授業で当てられたときも、人前で発表するときも、いつも楽しそうに笑っている。北井を見ているとだんだんこちらの緊張もほぐれ、自然と私の口も動くようになる。
「北井さんのおかげで発表は盛り上がりました。ありがとうございます。」
「いや俺は何もしてへんって」
「私、緊張しちゃって。本当に助かりました。」
北井は照れくさそうに笑っている。あ、以外といけるかも今日。あれほど行きたくない行きたくないと駄々をこねていたはずなのに現金な自分に我ながら呆れる。しかし、あまり話したことのない人にしては会話がうまくいっている。最初の居心地の悪さもとうに消え、私は北井との話を楽しんでいた。
「そういえば三田ちゃんに聞きたいことあってん」
「なんですか?」
「三田ちゃんは彼氏いるん?」
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