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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
拠点の拡充を始めよう
75/221

75ー本格的な夏の到来と新たな太守との関わりー

 異世界転生から約500日。ここ2ヶ月程は大きな問題もなく、つつがなく無難に異世界ライフを楽しんでいる。最近の楽しみはかき氷や氷菓子。この魔物の森は非常に過酷な気象をしており、この体じゃなければ間違いなく死んでいたかも……。地球の頃も暑さには弱かったけど、ここは尋常じゃない暑さをしている。

 マジで、本気で、とにかく、でら暑いのだ……。

 その弾みで魔晶湖の城塞エリアの屋敷周りにプールまで作ってしまった。それに暑いと思っていたのは僕だけではなく、皆楽しそうにプールで遊んでいる。一番遊びに来るのは……何故かチビセイレーン達なんだけどね。


「それから皆さんも来るのは構いませんけどね? その水着はどうしたんです? お針子班の仕業ですか?」

「せやの~。この水着?は服飾に携わっておる娘達の作品じゃ」

「異世界の遊泳着は特殊なんだな。面白いから着てみたぜ」

「うむ。新鮮なデザインだからな。新鮮な気持ちになれるぞ」


 チビセイレーン達はまあ、構わない。言うて小さな人魚だからね。水辺ならどこでもいるし、歌声に各種効能がある面以外は小さく可愛らしいだけだから。たまにかき氷に埋もれながらアイスフルーツにむしゃぶりついていたりもするが。

 問題はお客人達だ。普通に目の毒なんだよ。特に毎日来る三太守。なんで無駄に派手だったり布面積の小さな水着を選ぶかな?

 一番派手なデザインなのはスリングショットとか言う水着を選んだタマモさん。興味本位でならばまだしも似合ってしまってるから余計にタチが悪い。

 意外にも泳ぐのが好きなヴィエラさんはハイレグの競泳水着。こっちの世界では平泳ぎに似た泳ぎ方だけらしい。だから、僕がちょこっと異世界の水泳の知識を教えたら、楽しそうに泳いでいる。チビセイレーンと一緒に流水プールを逆流するのはやめて欲しいけど。

 最後のサンドラさんは紐ビキニにパレオと言うありそうな組み合わせ。なんだけどサンドラさんの女神的ボディが水着のサイズにあってない気がするんだよね。もう少し布面積を大きくしてもいいだろうに……。


「ユウゼン殿もあまり肌を晒さないから目立たないが、こう見ると生後に似合わずかなりしまった体をしておるのじゃな」

「そうだな。タマモは体術関連の教導には参加せんから知らんのか。元から鬼種は筋肉質になりやすい種族だ。それからユウゼン殿は人型だからなおさら分かり易いだろう」

「ユウゼン殿はいつもぶかっとしたローブ調の衣服を纏っているからな。分かりにくいのも頷ける」

「そうですかね? その辺はあんまり気にしたことが無いのでよくわからないですけど」


 僕はトランクスタイプのオーソドックスな水着を選んだ。僕はあまりにも奇抜な物でなければ、衣服には特に選り好みはない。大事なことだから二度言うけど、奇抜な物はNGだから。

 生産道には僕と記憶を共有している一緒に転生したメンバーが居るから、その誰かから知識を吸い上げてそこから衣服を作り上げているんだろう……。お針子班のメンバーは実に楽しそうにいろいろな衣料品を作っている。この世界の文明では存在しない衣服のデザインや素材面など。僕からすると普通でもこの世界では普通でない衣料品がこの拠点にはある。

 その代表格が化学繊維に含まれる“撥水素材”。この世界にも魔物素材で撥水素材は作れるが、化学繊維は偉大だ。それからこちらの世界では植物繊維が基本で、異世界独自の繊維として先程挙げたように魔物の素材から得られる特殊な繊維や革がある。それを越える性能を引き出したのが僕。地球の知識で加工したこちらの世界の繊維や布製品は、元からこの世界にはない飛びぬけた性能を持つ。先程の撥水素材は雨合羽として使ったり、エビ養殖用の作業着に使ったりとかなり便利。それからこの撥水素材は魔力を流すことで、撥水力を調整できる特徴があるんだよね。浮き輪無しにぷかーっと浮くことも可能だったりする。


「それにしても異世界には前衛的な外観の衣装があるのだな。少し前にこちらのお針子に妙なことをされたが……。そう言ったことをすればこのように体にあった衣服が作れるというしな」

「あー……。スリーサイズを測られたんですね……。嫌だったら拒否してもいいんですよ?」

「いや? アチキも最初は驚かされたが、その辺りはしっかりと説明してもろうたしのう。以前までは魔力で作り上げるのだが、最近ではこの土地で作った衣服を物々交換することが多いな」

「そうなんですか?」

「うむ。何だったかな? おーだーめいど?だったかのう。一点物の限定生産品を作ってくれるのでありがたい。アチキの娘らも最近は着飾って楽しそうにしておる。それに異世界の服はとても着心地がいいのでな」


 やはり女性は綺麗な衣服に袖を通すのが好きな割合が多いのかな? 皆が皆そういうわけではないだろうけど、タマモさんは衣服や髪形などの外見を気にしている雰囲気が強い。なので彼女からしたら非常に好ましいのかもしれないね。タマモさんはそちら側に傾倒している感じはあるけど、サンドラさんも生体武装と同じ魔力で作り上げるドレス以外の衣服も着るようになってるし。そう言う事に無頓着そうだけど、ヴィエラさんもそれなりに見た目は気にしている感じがある。

 三者三様というかね……。三太守だけでなく、拠点の女性陣も衣服の好みが違う事もあって最近の拠点内は実に華やかになった。

 資源的にも施設や設備の面でもかなり充実してきているから、僕だけでなく住民の皆も生活の質が向上しいいことづくめなのだろう。最近は大きな面倒事が無いから、特に拠点内の設備拡充に目を向けられた成果かな? 女性陣は特に衣料品や宝飾品、甘味の傾向に興味を持つことが増えた。数が少ない男性陣も制服や揃いの防具、武器などが充足して喜んでいるし、一番求めている酒や食事、娯楽の面が充足して楽しそうだ。

 あと、これもここ最近の変化なのだけど、今は真夏なのだがこの拠点にはあちこちで春が到来している。


「う~む……。ほんに増えたのう。あの春爛漫はどうにかならんのか?」

「いいじゃないですか。そういうのは当人達の意志で決めてもらえば。僕はこの拠点も上部に街も作りましたし、なんならクルオンサータの里もありますから。次世代への継承はいずれなさねばなりません。この拠点は多種族多文化の集合体。寿命も異なれば種族も違うのです。その辺りは完全に当人達の意志しか決定札になる要因はないでしょう。僕も縛るつもりもないんですから」

「しかしだなあ……。あそこまで大っぴらにベタベタされるとこっちまで気恥ずかしくなるんだ」

「まあ、風紀は大切ですかね。その点も一応伝えておきますよ」


 この拠点は様々な種族の集合体だ。首長の僕はこの世界で大勢を占める人類種ではないし、この拠点の実に半数以上が魔物やその系統の種族。ではあるのだけど、一応人類種に含まれる種族はいるし、この世界では割と異種族間恋愛は普通に行われている事らしく、目に付くだけで十数組のカップルがいつの間にかできあがっていた。

 それ自体は何ら悪い事ではないし、節度さえ守ってくれたらば特に否をつけることはない。たまに困惑するような組み合わせも見かけるが、その辺りは本当に当人達の感情と意志次第なので……。僕が当人達の間に割って入るような無粋なことはしない。

 それからあまりにも北、南、東の三太守が入り浸り過ぎており、僕の拠点では新参であるエルフ族の移入者などは3人を僕の伴侶だと勘違いしている者まで居る。僕もそこまでバカではないので、3人の態度には薄々気づいているけど、肯定も否定もしていない。その辺りはまだ僕が生体的な面でも幼過ぎること、それから3人は太守でバランスのある事があげられるから、今もつかず離れずを維持している。

 この拠点の恋愛事情はまあそんなところだろう。目立つ例で言えば拠点の雑事を全面的に預かるサテュロスのイータが、人族のバーテンダー兼マスターのガンテツさんと正式に結婚を視野にお付き合いしているらしい。僕に許可を取りに来たけど、僕は個人間の事には非干渉。なので敢えて何も言わない。だけど、言葉としてはちゃんと“許可”を出している。そうしないと伝わらないし……。他にも数組いるけど、一番話が進んでるのはこのカップルかな?


「じゃん! 居たじゃん! ご主人! 大変なことが起きたじゃん!」

「え? 何? 緊急事態じゃん?」

「危険は……たぶん無いじゃん! だけど、急いで来て欲しいじゃん! ブルーフィンが凄く困ってたじゃん!」

「ブルーフィンが?」


 相変わらずじゃんじゃん五月蠅いのはスーパーマックスノー一号。そのスーパーマックスノー一号が僕を探していたらしく、僕はアランドール氏の遺物である魔導王のローブを纏い、そのまま下階へ降りて転移の間まで向かった。転移の間にはこの魔物の森のあちこちに繋がる任意発動型転移陣があるので、防衛面でもかなり堅固だ。僕であっても一応身分証明と危険物の持ち込みをチェックされる。もちろんじゃんじゃん一号も。

 そこから僕とじゃんじゃんはここ最近は轟雷の平原で魚介類の生態調査と、資源調査、漁業の支援をしているブルーフィンの所に向かう。セイレーンは繁殖事情が特殊なので、自家繁殖?のような形でどんどん増えていく。一応は有性生殖なのだが、必ずしも同種の生物との交配でなくとも増えるのだ。しかも増えていくのは母親のクローン個体なので、セイレーン族には名づけは諦めている。だから、一部とは言え、轟雷の平原方面に移っているのに数が目減りした感はゼロだ。むしろ増え続けてしまい、いつオーバーフローするか気が気じゃない。

 そんなことを考えつつ、僕は南西の大拠点に転移。ここは船乗りたちが集まる集会所であり、酒場、待機場のような施設だ。今は漁師小屋のような場所も併設され、猫型の魔物や数は少ないが獣人が漁師として働いている。そこに困り果てた顔をしたライゴウさんが居た。なので彼女にも事情を聴いてみることに。じゃんじゃんはブルーフィンが困っているとしか言わないので……。


「お、ユウゼンの旦那! よく来てくれたね!」

「ええ。何かブルーフィンが困っているとじゃんじゃん五月蠅いヤツが駆け込んで来たので」

「お口チャックじゃん?」

「いや、今はいいよ」

「お口オープンじゃん!」

「ああ、まあ、その認識で間違いないし、実害はねーよ。ただ、アイツのせいで今日は漁に出れねーけど」

「アイツ?」

「ほら、あそこにセイレーン族用に作ったスペースでブルーフィンに物理的に絡んでるのがいるだろ? アイツが原因だ。あのバカ、ブルーフィンに一目惚れしたとかぬかして、水中に墨をぶちまけやがったんだ。アイツの墨が水中にある内は獲物は寄り付かねーからな」


 それでそのブルーフィンに一目惚れした?という者の様子を観察すると……。まあ、形容するならタコ足の人魚。上半身のみてくれは高校生くらいで、かなり長い青髪を編み込んでいる若干奇抜な風貌の少女だ。外見としては溌剌としたカワイイ系。それはもう困惑しきっているブルーフィンの体に…たぶん足なんだろうけども、がっちり絡みついている。ブルーフィンがそこそこ高身長な爽やか系のイケメンなのだが、この構図は僕にもちょっと面倒が過ぎる。他人の恋路を邪魔すると、後でとんでもない目に遭わされるのが常道だ。できれば触れたくはないけど、僕はブルーフィンの雇い主と言うか、彼が預かる派閥の管理者。触れねばならないのだろうか?

 ……などと思っていたらば、僕らの背後から僕とセットの扱いになっている三太守が現れた。

 流石に着替えてきたから時間がかかったんだろう。その三名の内の最年長であるサンドラさんが代表してタコ型人魚…スキュラであろう少女へ声をかけた。一応面識があるんだろう。流石に竜の太守が近づけば身構えると言うか、気配には気づいたようだ。スキュラの少女もこの異様な空気にようやく気付いてくれたようで。僕もサンドラさんの後を追うようにスキュラの少女の方向へと歩み寄る。


「お主が深淵の水域から出てくるのは珍しいではないか。“水貫の太守ブリューナク”よ」

「あ~、サンドラお姉さんじゃないですか~。お姉さんも縄張りを出てくるのは珍しいですね~」

「最近はそうでもないぞ? この男の縄張りは実に居心地がいいのでな。最近では中央に出て楽しませてもらっておる」

「え? あの魔素の薄かった場所ですか~?」

「お主は引き籠って歌ってばかりおるから知らんだけじゃて。今では魔物の森は大きく動いておるぞ。それから、そのブルーフィンはこの男の配下にある者だ。まずは、その頭領への挨拶が先ではないか?」

「そうなんですね~! 初めまして~! 私は水貫の太守ブリューナクなんて呼ばれてます~! ブルーフィンさんとは結婚を視野にお付き合いを……」

「こ、こら……。待たんか! 先走る出ない。我は主殿より一族の方針を任されて居る者だ。そう易々とは決まらぬ。まずは主殿の意志をだな?」

「え? 別に僕は反対しないよ? 当人同士が良ければそれで良し! 自由恋愛万歳」

「ばんざ~い!」


 ブルーフィンは豆鉄砲をくらったようだが、僕は今の言葉通りである。ブルーフィンの再起動まで時間がかかったが、とりあえず彼にブリューナクさんを拠点まで案内するように言い含め、僕は先に拠点に帰って来た。歓待と言う程ではないけど、ちゃんとした食事会程度には準備を整えておきたいから。その間に貸し出し用の“変化の首飾り”ももって来たし。準備はオッケー。新しい太守ね。ここで出てくるとは。

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