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僕は無難にニューライフがしたい  作者: OGRE
異世界転移と拠点の構築
2/215

2ーいきなりゴブリンの巣強襲作戦ー

 クレステッドゲッコーの二体が無事に帰って来た。僕を含め、同居組の全員が生まれ変わっているので大きさはかなり縮んでいるが、動きは以前よりも格段に良い。……と思う。


「ギュッケ!」

「ギュケー!」

『帰ってきましたな。では、主の考えた作戦通りに動きたいと思います』

「今の鳴き声一つで意思疎通できてるの?」

『もちろんにございます。我と妻が最前線に立ち、突き崩します。また、アカメカブトトカゲ部隊にて陽動と零れの掃討。クレステッドゲッコー部隊は主殿の警護に付きます』


 その他の遊撃部隊としてフトアゴヒゲトカゲの太陽、マダガスカルダイビングスキンクの夫婦であるナギサとミギワ。サルバトールモニターのペロ助は状況の推移と共に動き回る。僕は転生直ぐでマイナス補正が大きく、動かない方がいいかもしれない。

 だから、僕も魔法で援護する。光の神が言うには僕は近接戦闘に特化した補正は受けていない。この場に居るのは種族こそバラバラだけど全員が異世界転生者だ。それも僕も含めて全員が人外。この世界の平均というか、通常レベルが分からないので用心してし過ぎることは無いだろうけど。


「ギュオッ!」

「グギュオッ!」


 光の神により特殊な権能を受けた個体以外は武装という武装はない……。ならば必要になるならば作ればいい。

 僕の先天的異能傾向は“製作者”だ。そこらの石と木材なので品質は最低だけど、無いよりはマシ。特に矢面に立ち、ゴブリンと正面からぶつかるオオヨロイトカゲの二体には防具も必要になるだろう。わからんけど……。このような不確定な状況だからこそサポーターである僕も全力を投じるべきだ。

 策謀が固まり次第強襲作戦を実行に移す。ゴブリンが油断し、僕らに気づいていない今がチャンス。ゴブリンが無防備な状態を狙いオオヨロイトカゲの二体と、アカメカブトトカゲの10体がバラバラの地点で大暴れを開始する。


「ギャッ! ギャッ! グギャーッ!」

「ギっ?!」

『ふん、所詮はゴブリンか。取るに足らん。シズカよっ! そちらは問題ないか?』

『アタイがこんな雑魚に遅れを取るわけがねーだろうが。ンなことよかよ。小さい連中のアレは大丈夫なんか?』

『作戦通りと言うには派手にやっておるが、問題なかろう』

『アタイとしてははっちゃけすぎだと思うがね』


 前線部隊の先頭を飾っているのが、我らが陣の特攻隊長であるオオヨロイトカゲの夫婦だ。光の神から“一騎当千”と言う武人系統のスキル傾向ツリーを受け取っている。対多数戦にめっぽう強く、“魔装”と呼ばれる生体武装を展開できる。

 その無双はぶっちゃけ怖いレベルだ。

 生まれ変わったばかりのはずなのだが、動きがよすぎる。身長1m足らずのゴブリンの3分の1も無いはずなのだが……。マサムネは槍をメイン武装に太刀を腰に携え、寄せくるゴブリンを刺し貫き、叩き切り……。更に強烈なのが彼の妻である静だ。左手に握られているタバルジンでゴブリンを次々に叩き割る。右手には大振りなラウンドシールドを装備しており、そのラウンドシールドでのシールドバッシュもかなり強力。彼女は前のオーナーの管理が悪く、右手の指が全部腐り落ちてしまっている。それでもこの強さなのだ。ヤバいと思う。

 今のところは僕が補助するタイミングが無いし。


『やっべ~……。アレはヤベーな』

『な~。悪鬼羅刹かってな~……』

『無駄口叩く暇あったら仕事しろ。俺らも戦列の一翼なんだぜ』

『『ういーっす』』


 オオヨロイトカゲの夫婦が大太刀周りをしている周りでも、僕らの仲間達が動いている。全部で十体のアカメカブトトカゲ部隊だ。

 アイツらは光の神も当惑するようなスキル傾向を選択し、その結果に彼らに根付いた(ジョブ)は“特殊戦闘員(アサルト)”。特殊戦闘員の特性はその応用範囲と万能性。あらゆる作戦に効果的なスキルを持ち合わせ、近接戦闘はもちろんの事で、成長すれば戦略級大魔法を放てる化け物へと至るらしい。ただ、その分の分岐が多く、本職程の伸びは期待できない弱点もある。また、特殊戦闘員に備わるスキルツリーは満遍なく上げねばならず、一点に偏ると部隊運用時に足でまといになりやすい。その為、大器晩成型と言えるのだが……。

 アカメカブトトカゲ部隊はその中でも見え隠れする個体差を利用し、作戦を円滑に運用するバックアップに注力。中でもヤバいのが十体の中に混ざっている最年長の二体だ。

 実はこの二体は残り八体の両親で、もういつお迎えが来てもおかしくないくらいの個体だったのだが……。二体とも弓や投擲武器でゴブリンの巣を外縁から掻き乱し、子供達を適切に指揮して包囲網を形成している。彼らを敵にはしたくないな。


「僕の出番はまだまだなさそうだね。じゃ、そろそろ君達も出ようか? ミギワとナギサはそろそろ疲労が蓄積してくるマサムネとシズカのバックアップ。太陽とペロ助は最後尾にいるだろうリーダー種とかキング、巣の規模からロードは居ないと思うけど健闘を祈る」

『フシャッ!』

『フシュッ!』


 本陣に残しておいた部隊をさらに投入する。光の神から与えられた権能はかなり便利で、僕も僕で考えようによっては戦えると思う。ただし、僕はトカゲ部隊やヤモリ部隊のように機敏な動きはできない。なので出撃したとしても固定砲台となる。

 それからこれも異世界補正なんだろうけど、卵から出て来た時のサイズが地球基準のサイズよりも全体的に大きい。特に大きかったのはオオヨロイトカゲの夫婦とサルバトールモニターのペロ助。大きさがそれ程変わらないアカメカブトトカゲやファットテールゲッコー、レオパードゲッコーも骨格が微妙に変わっている。こういう変化もいろいろ調べて行かなければいけないな。


『ギャハハハハハッ!! 俺にも手番が回って来たぜええええぇぇぇ!!!!』

『ペロ助君……。もう少し落ち着こうよ……』

『あ゛あ゛んッ? いい子ちゃんぶっても飯が増える訳じゃねーだろい? それにご主人も大暴れを許してくれたんだぜ。俺好みの仕事じゃねえかよおおおおおおぉぉぉぉッ!!!!』

『まあいいや……。それじゃ、お互いに干渉はなしで。僕に躍りかからないでよ?』

『おう! 仲間に牙を立てる程落ちぶれちゃいねー。そこは安心しろい』


 真っ先に咆哮を上げ、ゴブリンが密集する隊列に突っ込んだのがサルバトールモニターのペロ助。僕が飼っていた時からいつも大暴れしていた問題児ではあったけど、異世界に解き放たれて本能のままに暴れられるのが余程嬉しいらしい。ペロ助は前の飼い主が飼いきれなくなった個体を僕が引き取った個体で、転生前の時には1m50㎝を軽く超えていた。スーパーで売っている鶏レバが大好物。……それはもう暴れん坊で、ケージをいくつ壊したことか。このペロ助の職は“バーサーカー”。まさに天職だと思うよ。

 表立って突っ込んで行ったのはフトアゴヒゲトカゲの太陽。この子は単純にアルバイト先のペットショップでの売れ残り個体。この太陽は尾切れ個体だが、そこそこ珍しいカラーだった。あのカラーは売れ残る方が珍しかったのだけど、店頭販売で50㎝を超えていると余程の好事家でないと買ってくれないんだよね。その太陽はまさかの“剣聖”という職を選択。剣聖も生体武装を展開できるらしく、太陽は身の丈サイズの美麗な装飾の輝く剣を担ぎ、ゴブリンの塊を食い破って行く。


『ペロ助のヤツやり過ぎないといいけど』

『そうだね~……。でも、間違いなくリーダー格の個体は彼が叩くんじゃない? あ、居た居た。マサムネくーん。シズカちゃーん。お疲れ様あ。私達がインターバルに入るよー』

『そうか? だが、そこまで疲弊はしておらぬぞ』

『おう。ホレ、木の上のアイツらが射かける爆裂矢に吹き飛ばされるゴブリンが多いからな。アタイらが押し返す必要はあまりないんだよ。ここに来るときにはだいたいボロボロだからな』


 ペロ助と太陽が突貫した後、ゆっくりと動き出したのがミギワとナギサ。

 ミギワは“聖騎士”の職ツリーを取得しており、回復と防衛戦闘に高い適性があるらしい。大ぶりなメイスとカイトシールドを構え、マサムネとシズカと戦列をスイッチする。その妻であるナギサは“ハイプリースト”。ミギワが回復もできる戦闘職であるのに対し。ナギサは回復メインで防衛もできる聖職者という感じ。切り崩しが得意な対多数戦闘員のマサムネとシズカとは異なり、二人だけで戦列を維持できる防衛戦闘の要となるタンクユニットになる。

 この二体は落ち着いた性格で、餌に飛びついて来る時以外は基本的にシェルターに隠れていることが多かったな。前までの性質と変わっていないのか、二体は前には進もうとはせずに現状維持。時折突っ込んで来るゴブリンをカイトシールドで押し込め、メイスでぶん殴って絶命させていく。かなり戦況が落ち着いていたね。

 マサムネとシズカの無双モードを見ている限り、我が家のペット部隊はかなり強力な各種戦闘ユニットだと判断できた。この状態ならば陣を押し上げつつ、ゆっくりと敵を追い込んで行けばいい。それに一番近い戦線は落ち着いてきているが、ペロ助が突っ込んだ場所は大荒れだ。楽しそうなペロ助の咆哮が響き続けているので、彼は問題なく暴走しているのだろう。


『陣、押し上げないのか?』

『その辺りはご主人次第である。クレス部隊の報告よりもゴブリンの数が多いとなると、この先も戦闘は続く。相手は数の暴力で押し込めるが、我らはそうもいかん。焦りは禁物だ』

『りょ。なら俺達の半分はペロ助ニキの様子を見に行く。危なげないとは思うけど』

『うむ。よろしく頼むぞ。一号』

『あーい』


 僕とファットテールゲッコー、レオパードゲッコー、クレステッドゲッコーの集団が最前線の自陣まで前に出ると、戦力を半分に割った形で仲間達は動きを止めていた。

 本当に賢い。僕らが聞いていたよりゴブリンの数が多い。クレステッドゲッコーのヒノエとキノトも敵陣の奥深くまでは侵入できなかったはず。そう考えると、敵陣の奥に大きな拠点があると見て間違いない。唯一筆談できるマサムネが個々で陣を止めていたのも、敵の勢力が測り切れなかったから。そこで僕の意見を聞きたい事と、最前線が静かになったことからあちらにも変化があったのだろう。

 そうやって筆談していると、ずるずると何かを引き摺る音が聞こえ始めた。

 そこに現れたのは我が家の暴れん坊のペロ助と太陽、五体のアカメカブトトカゲ。目視で数えた所、こちらには欠員は一人も居ない。一人で大暴れしていたせいか、それなりにペロ助は手傷を負っていたがかすり傷程度。そのペロ助の討伐成果はとても大きな物だったと言えよう。


「ゴブリンキングとゴブリンシャーマンか……。前線にキングが居たとなると下手するとロードも居るかもな」

『ゴブリンキングはまだ居たぜ。一番強そうなコイツをぶっ殺したら、洞窟の中に逃げて行きやがった。流石に洞窟内の強襲は面倒だからよ。一旦帰って来たんだ』

「マサムネ、なんて?」

『キングが複数いるそうです。また、ヤツラの本拠は奥に構えられている洞窟という事になります』

「洞窟か……。面倒だな。下手したらもう本命は裏口から逃げてるかもしれないな」


 ここでもう一度陣を張り直す。

 マサムネを介して改めてバトルロールを組み替える。現在攻めている僕達を疲弊させる、もしくは籠城して乗り切る、最悪は既に首魁であるゴブリンロードは逃げ出している……。となると、まず必要なのは調査だ。

 この中で一番の諜報能力があるクレステッドゲッコーのヒノエとキノトには、洞窟内の罠解除も兼ねて侵入し調査をしてもらう。そのヒノエとキノトの進捗に平行し、嫌でも目立つペロ助を解き放って少しずつ抵抗力を削ぐ。ここはペロ助の判断力に任せることになるが、少し離れた位置で同行してもらうミギワとナギサにも調整してもらう事になるだろう。

 さらに同時並行の一手。

 アカメカブトトカゲ部隊の十体と、レオパードゲッコーのブラックナイト部隊を展開。この洞窟がぽっかり空いている小山を、できるだけくまなく調べてもらう。これは最悪の状態であるゴブリンロードの逃走を何とか阻止するための保険。逃がしていたとしても痕跡を追って追跡し、周辺の縄張り変動をなるだけ小さく抑える。最後に残っているレオパードゲッコー、ファットテールゲッコーの一部は僕と共に生産系スキルで矢などの消耗品を製作してもらう。手数としては十分。ペット部隊には矢玉などを製作してもらい、僕は投石器や大弩をスキルを元に組み立てる。これが最善だろう。


「できればやりたくないけど、洞窟ごと爆破することも可能だから、最悪はそれも視野に入れて作戦を組んで。ペット部隊の指揮はマサムネに任せるよ」

『御意!』


 これで良し。異世界転生すぐのこの展開だけど、何とかなりそうだ。頑張ろう。

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