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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅱ
99/151

Wing Ⅱ Prologue ଓ 「翻弄」 〜〝tear〟〜


    ଓ


 ――【咆哮(・・)】が、きこえる。


 戦慄しながら、とある一人の女性が目を覚ます(・・・・・)

 目は……何とか開けることができたが、上手く身体が動かせそうになかった。……まるで、自分の身体が自分のものではない感覚だった。

 ……今の今まで、【カノジョ(・・・・)】が動いたことはなかったのに。けれど、【カノジョ】の「目覚め(・・・)」も完全なものではなかった。――まだ、自分が自分で在ることができる。

(大丈夫……まだ戦える(・・・)でしょ)

 彼女は自分にそう何度も言い聞かせる。そうしていくうちに、指先が少しだけぴくりと動いたのを目にすることができた。

 ……ほらね。――私は「私」、でしょ! そう心の中で唱えながら、彼女は勢いよく身体を起こした。

 ようやく、身体が自分のものであるという実感を得て、彼女はほっと胸をなで下ろす。……だが、それも長くは()たないだろう。

 これは【呪い(・・)】なのだ。――過去に()大きな「()」を起こした先祖(オトコ)によりかけられ、その血族すらもその償いをしなければならないという、永遠に(ずっと)続く【呪い】なのだ。そして、何人(だれ)もその【呪い】を解くことはできないのだ。

 なのに、誰かに救ってほしい、なんてコトを願うのはあまりに虫が良すぎる。命尽きるその時までこの【呪い】を背負っていくしかないのだ。できることといえば、少しだけ戦う(・・)ことくらいだった。

 ……それにしても。どうして、【カノジョ】は突然動いたのだろうか。そんな疑問が浮かぶ。もしかすると……。

 ――もしかすると、何か、【カノジョ】が動くほどの事態(こと)がこれから起きるとでも言うのだろうか?

 そんな答えが浮かんだが、彼女はすぐに首を横に振って打ち消した。……だとしても、期待などしてはいけない。ただ、【カノジョ】が更に罪を犯し、未来(さき)の血族にまた【呪い】を重ねてしまうだけだろう。

 ……けれど、どうしてだろう。なぜ分からないが、〝()〟を捨てきれない。――まだ現在(いま)の段階では希望を捨てず、戦わなければならない(・・・・・・・・・・)という気がしてならなかった。

 一体何を考えているんだろう、私は。自嘲するように鼻を鳴らすと、彼女はその場を後にするのだった。


    ଓ


 ――「目覚め(・・・)」の「音」は別の「者」の耳にも届いていた。


 「()」がゆっくりと目を開ける。

〝ついに動く時が来たの?〟

 いち早く、そのことに気付いたとある〝神〟が「姫」に声を掛ける。

 「姫」はうなずくと、手を伸ばした。するとどこからか、一人の「騎士(・・)」があらわれ、その手を掴んだ。

 ふたりは互いに手を強く握ると、うなずきあった。そして、何かを伝えようとするかのように、〝神〟のことをじっと見つめた。

〝あー分かってる、分かってるから。 「転生しない」って言い張るくらいだもの、よっぽどの理由があるんでしょ? ちゃんと終わるまで待ってるから〟

〝――そう、このふたりにはどうしても救いたい「(もの)」がいるからな。 リム(・・)、何も心配しなくていい。 ――ふたりのことはこの私が預かっているからな〟

 そういってわずらわしそうに手を振る〝神〟とふたりの間に、もう一人別の男性の〝神〟が割って入る。

あなた(・・・)にそう言われちゃ……。 ――分かった。 ふたりのことはルディに任せます。 わたしは立場上、どのみち動くことはできないし、ね〟

 リムと呼ばれた〝神〟はそう言って肩をすくめると、ふたりに向き直った。

〝大丈夫、あなた達の願いはちゃんと託したから。 だから、全部終わらせたら戻ってきて。 何もできないけど、応援してる〟

 ふたりはうなずいてみせると、姿を消した。

〝……さて。 私も動くかな〟

 そんなふたりを見送った、ルディと呼ばれた〝神〟も後を追うようにその場を後にする。

 残されたリムは目を閉じ、祈りを掛けた。そして、しばらく経ってから、彼女は自身の「役割」を果たすため、行動を起こすのだった。

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