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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅰ Episode 4 翼――それは〝幸福〟をもたらす〝もの〟
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Feather 15 ଓ 〝神格化〟 〜〝apotheosis〟

 「すぐに」と宣言していただけあって、エリンシェがその名を呼ぶと、大神(おおがみ)・ディオルトはテレスファイラの地に降り立った。

 ディオルトはすぐに、エリンシェが珠を手にし、魂を側で保護しているのを目にして、はっと息を呑んだ。

〝もしや……?〟

「――はい。 テレスファイラの地を侵していたゼルグを私が封印しました。 ……ですが、私の〝力〟が足りず、永久封印には至らなかったようです」

 すぐにうなずいたエリンシェはそう報告をして、目を伏せた。――そう、ジェイトと〝幸いの天使(フィルネリア)〟の力を借りて、ゼルグを封印することはできたものの、「手応え」はあまりなく、【カレ】を永久に封じることはできなかったのだと悟っていた。そして、自分のことを「力不足」だと感じていた。

〝いや、十分だよ。 ――この地を守護して(まもって)くれたこと、深く感謝する。 それで……私を呼んだということは何か(・・)用件があるのだな?〟


 ――だがそれでも、エリンシェにはすでに(・・・)決心が着いていた。

 アリィーシュとガイセルから〝神格化〟の話を聞いた時は途方もない話だと思っていた。けれど、気が付くと、「選択」は決まっていた。

 現在(いま)でも理由は分からないが、何らかの「()」で自分に与えられた〝力〟。どう向き合えば良いのか、分からずにいたが、エリンシェはできるだけ「正しい」使い方で〝力〟と向き合おうとしてきた。

 そうしていくうちに、エリンシェは〝力〟を大切なひとたちのために使おうと心に決めるようになっていた。そして、いつしか、与えられたこの〝力〟は「そのため」に有るのではないかと考えるようにもなっていたのだ。

 もちろん、エリンシェは、最初のうちはかなり戸惑っていた。――まさかそんな、自分が大きな「使命」を背負っているとはとても考えられなかったのだ。けれど、それ以上に、大切なひとたちのことをこの〝力〟で守りたいとそう強く願うようになっていた。

 その願いはエリンシェ自身をも強くした。

 そして、どんどん強くなればなるほど、エリンシェの中でとある「覚悟」が定まっていた。

 ――この〝力〟で、大切なひとたちとテレスファイラ(このせかい)守護して(まもって)いこう、と。そして、皆の幸福(しあわせ)をまもっていこうと。

 そんな「覚悟」は強くなり、アリィーシュとガイセルが〝神格化〟の話を持ち出した時にはほとんど、エリンシェの中で「答え」が決まっていたのだ。

 けれど、一方で、決して独りの力ではないことも理解して(わかって)いた。――ジェイトがいなければ、その「答え」にはたどりつけなかっただろう。

 ……だが、エリンシェと違って、何の〝力〟も持たないジェイトにはそこまでの「覚悟」はできていないだろう。だから、今は(・・)エリンシェが一人で背負うだけで良いだろう。


「――はい」

 エリンシェはうなずいて、ディオルトの側で膝をついた。

 そして、今まで(いだ)いてきた「覚悟」をこめ、彼をじっと見つめながら口を開いた。

「大神様、私、すでに決心しています。 ……私、大切なひとたちが暮らすテレスファイラ(このせかい)がすごく大事なんです。 それで、与えられたこの〝力〟でこのせかいをまもりたいって心の底からそう思うんです。 ――そして、大切なひとたちとこのせかいに幸福(しあわせ)をもたらせる存在でありたいとそう思っています。 だから、大神様。 ――どうか、この身をテレスファイラ(このせかい)のために使ってはいただけないでしょうか?」

 背後で、エリンシェの言葉を聞いて、ジェイトとアリィーシュが息を呑んでいるのが分かった。……けれど、エリンシェは一切揺らがなかった。――それほどまでに〝彼女〟の「覚悟」は固くなっていたのだ。

〝……確かに、テレスファイラの守護神はほとんど空席と言える。 そして、貴方の「力」は神に匹敵――いや、それ以上と言っても過言ではなく、今や心も神々(我々)と同じ「聖なる心」を持ち合わせている。 ――よって、貴方をこの世界の「守護者」として認めることは可能だ。 ……だが、本当に良いのだな?〟

 もう一度、ディオルトが念押しをする。

 だが、エリンシェの「覚悟」はやはり揺らがない。――宣言した通り、もうとっくに決心はしていたのだ。

「――はい」

〝よろしい〟

 エリンシェの返事にうなずいてみせ、ディオルトはどこからか〝聖杖ケイン〟を取り出した。そして、それを強く握ると先端の宝珠を見つめながら、しばらくその場に佇んでいた。

 おそらく、ディオルトはしばらく〝聖杖ケイン〟と〈会話〉していたのだ。なにせ、〝神格化〟が以前(まえ)に行われたのは「太古」の時代。現代の大神ですら知らない〝もの〟なのだ。

〝――よし分かった〟

 ふと、ディオルトはそうつぶやいて、〝聖杖ケイン〟をエリンシェの方へと向ける。

 エリンシェははっとして(こうべ)を垂れると、「その瞬間」をじっと待った。

〝大神の名において命ずる。 ――汝、エリンシェ・ルイングをこの世界・テレスファイラの「守護者」とする。 その恩恵として、我ら神々の生命の一部を分け与えん。 どうか、その(なが)き生命が尽きるその日まで、この世界を平和と幸福に導き給え〟

「――(うけたまわ)りました」

 すぐに返答したエリンシェに、ディオルトは小さくうなずき、〝聖杖ケイン〟を両手で握った。そして、大きく息をすると、凛とした声で唱えた。

〝「神格化(アポテオシス)」!!〟

 その瞬間、辺りはまばゆい光に包まれたのだった。

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