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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅰ Episode 4 翼――それは〝幸福〟をもたらす〝もの〟
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Feather 7 ଓ 独白 Ⅲ 〜Side 〝J〟 ➳ monologue Ⅲ〜


    ଓ


 ――カツン、と「何か」が落ちる音がした。

 

 はっとして、ジェイトは顔を上げる。

 ふと、窓の外に稲光が走る。振り返って、いつもに増して暗雲立ち込める空を眺めながら、ジェイトは胸を手で抑える。

「……。 エリンシェ……?」

 何か、嫌な予感がする。もしかすると〝彼女〟に何かあったのかもしれない。そう考え、ジェイトは立ち上がった。


    ଓ


 ――僕がきみのことをまもるから。

 ジェイトがエリンシェにそう言って聞かせると、いつも〝彼女〟は決まって、どこか複雑そうな……何か思い詰めた表情を浮かべて微笑んでいた。

 ……何か、あるのだろうか。そう思って、ジェイトは一度自分のことを省みる。けれど、いつも「答え」は出なかった。エリンシェはきっと自分(ジェイト)のことを大切におもい、支えにしてくれている――はずだ。自信はあまりないがそんな確信を持って、〝彼女〟がそんな表情を浮かべているのではないと考え直す。

 では、何故なのか? ――何か……別の理由があって、〝彼女〟は思い詰めた表情(かお)を見せているのだ。ジェイトはずっとそれが「何」なのか、考えていた。そしてそのうちに、推測でしかないが一つの「答え」にたどり着いたのだった。

 ――〝彼女〟は「何か」大切な「こと」を決めてしまっている(・・・・・・・・・)

 そう考えると推測が確信に変わっていくのを感じながらジェイトはあることを思っていた。

 ……どうか、独りで抱え込まないでほしい。――たとえ、きみがどんな「道」を選ぼうとも、僕はそばできみのことをずっと支えていく「覚悟」ができているのに。だから、どうか、独りで抱え込まずにその胸のうちを僕にもわけてほしい。

 そう、心の底から願っているのに、そんな思いは〝彼女〟に届かなかった。それと同時に、〝彼女〟へのおもいがどんどん募っていった。なのに……――。

 ――なのに、いつからか、ジェイトは自分の「心」に【異変】を感じるようになっていた。〝彼女〟へのおもいは確かに胸の中に在る。けれど、深くおもえばおもうほど、何か【(もや)】がかかるような――いや【(むし)ばれて】いるような、そんな「感覚」に陥っていた。

 「ソレ(・・)」はどこか、「記憶(・・)」を失くしていた時の「感覚」に似ているような気がしていた。だが、ジェイトは必死に抵抗を続けていた。……決して「二度」はない。――〝彼女〟のことを絶対に離すことはしない!! ジェイトはそう固く心に誓っていた。

 その甲斐あってか、【蝕み(・・)】を止められはしないものの、〝彼女〟をおもう「心」を何とか繋ぎ止めることができていた。――「何」があろうとも、自分の「心」を手放すことだけは断じてないと心に誓っていたのだ。

 人知れずジェイトが【蝕み(・・)】と戦っていた一方で、いつの頃からか、〝彼女〟が何か「隠し事」をするようになっていた。――いつものように〝彼女〟はジェイトを頼ってくれてはいたが、以前(まえ)と違ってあまり心の内を話してくれなくなっていたのだ。

 そこで、ジェイトは今一度自分のことを省みることにした。……ひょっとすると、打ち明けていないが〝彼女〟は【蝕み(・・)】のことを察していて、ジェイトに黙って何とかしようと動いているのではないだろうか。だとすれば……。

 ――だとすれば、どうして話してくれないのだろうか。……いや、自ら【蝕み(・・)】のことを打ち明けていないことは反省すべきだとは思うが、これはジェイト自身の問題でもある。これまでも独りで戦って来たのだ、一緒に探せばもっと早く解決策が見つかるかもしれないのに。

 そう考えると、やはり落ち度があるのはきちんと話していない自分(ジェイト)の方だろう。今の状況を正直に、〝彼女〟に打ち明けようと決心した。

 その矢先のことだった。


 ――――……がい。 あとは頼んだわよ、ジェイト君。


 不意に、そんな「声」がきこえた気がしたのだ。

 「声」はアリィーシュのものによく似ていた。

 不思議に思っていると、続けざまに、何か身体にガクンと「衝撃」が走り、あの「何か」が落ちるカツンという音が聞こえたのだった。


    ଓ


 ふと振り返ると、視界の隅で「何か」がきらりと光った気がした。見ると、机の上にあるはずのない物が無造作に置かれていた。

「……!!」

 ――それはエリンシェが身に着けているはずのペンダントだった。先ほどの音の正体はおそらくこれが落ちたものなのだろう。

 エリンシェにとって大切なものであるはずのペンダントがここにあるということは、おそらく〝彼女〟の身に何かあったのだろう。

 そう考え、慌ててジェイトはそのペンダントを手に取った。


 ――その瞬間、〝彼〟を呼ぶ〈声〉が頭に響き渡ったのだった。

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