表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅰ Episode 3 翼――それは絆を紡ぐ〝もの〟
71/151

Feather 11 ଓ 襲来 〜invasion〜


    ଓ


 あの日――「手応え(・・・)」があった時以来、エリンシェはまるで吹っ切れたかのように、成長を遂げていた。

 一番変化があったのは〝聖杖ケイン〟である〝幸いの天使(フィルネリア)〟の〈声〉が確実にきこえるようになったことだった。

 最初の頃はきこえないこともあったが、根気強くフィルネリアに声を掛け続け、ゆくゆくは魔法陣なしでも〝封印コンテイン〟が使えるようにと修行を続けるうちに、少しずつ〈声〉がきこえ始めたのだ。そして、魔法陣を暗記した頃にはすでにフィルネリアと〈話〉ができるまでになっていた。

 とはいえ、エリンシェはそれだけで完全にフィルネリアと心を通わすことができたとは思っていなかった。――まだまだ序の口で、これからもフィルネリアに声を掛け続けることで、さらに〈彼女〉と通じ合うことができるのだろうと考えていた。


 そんなある日のこと、エリンシェはアリィーシュから警戒するように忠告された。――いよいよ、【敵】が動き始めたのである。

 動いたのはゼルグではなく、新たなる【敵】――リノウという名の女性の邪神だと、エリンシェはアリィーシュから話を聞いた。なんでも、彼女やゼルグと共に封印されていたのだという。

 当時、アリィーシュはリノウだけなら何とかなったかもしれないと見ていたそうだが、感じ取ったリノウの【気配】からは並々ならぬ【悪意】――憎悪などを察知したのだと、アリィーシュは話していた。――たとえ、リノウがどれだけ【力】を増していたとしても、アリィーシュは一緒に戦い、エリンシェを守り抜くと宣言した。

 ……だが、そういうワケにはいかない。守る、と言われて黙っていることはできなかった。――エリンシェにも矜持(プライド)がある。あの日心の底から感じた、大切な「もの」をまもりたいという気持ちがある限り、エリンシェも現在(いま)は全力で戦いたいと思っていたのだ。

 それ以来、エリンシェはより一層、修行に励むようになっていたのだった。


    ଓ


 ――そして、その日は突然やって来た。

 いつも通り修行をしていると〝神殿〟にドンッという衝撃が走った。

 手を止め、エリンシェは天を見上げる。「まもり」は万全なはずなのに、それを破ってでも此処へ侵入しよう(はいろう)としている【モノ】がいる。……凄まじい【執念】だ。

 側でエリンシェのことを見守っていたシンシアとメラニアも顔色を変える。――少し強張こわばっているが、どこか勝ち誇ったような表情かおを浮かべていた。

 アリィーシュも姿をあらわし、辺りを見回す。〝……カノジョだわ〟とつぶやくと、〝ステッキ〟を手にした。


 ――それが「合図」だった。


 突然、アリィーシュの手元に向かって、どこかからか【鞭】が伸びてきた。彼女はひらりとそれをかわすと、後ろに跳んだ。それと同時に、【闖入者ちんにゅうしゃ】――女性の邪神が姿をあらわした。……リノウだ。

 涼しい顔を浮かべているアリィーシュに対し、エリンシェはほんの少し物怖じしていた。――リノウがあまりにも歪んだ表情かおを浮かべていたからだ。カノジョからは憎悪、嫉妬などといった【悪意】しか感じ取ることができなかったのだ。

〝あら、お久しぶりね〟

 〝ステッキ〟をリノウに向けながら、アリィーシュがなんてことないように声を掛ける。答える代わりに、まるで獣のように、リノウが唸り声を上げた。

【黙れッ!! オマエのせいで、あの方(・・・)は封印される羽目になったのよ!! ――オマエだけは絶対に許さない!!】

 そう言って、リノウが【鞭】を振り上げる。――が、カノジョの脇から二つの棍が伸び、それを阻止した。

〝侵入者よ、控えよ! 此処ここを何処と心得るか!〟

〝お前が足を踏み入れたのは神聖なる「聖域」! 我ら「守人(もりびと)」はお前のような侵入者を決して許さぬ! ――覚悟せよ!〟

 ――シンシアとメラニアだった。双子は強い口調でそう言い放つと、勢いよく地面を蹴って、棍を支えに跳び上がった。

 慌てて、リノウが双子の攻撃をかわそうと飛び上がる。間一髪のところで、棍をよけると恨めしそうにまた唸ると、ふと後ろへ振り返った。

 そこで初めて、エリンシェはリノウと目が合った。……カノジョから感じ取れる凄まじいほどの【悪意】に、思わず鳥肌が立ってしまう。カノジョの()には殺意すら宿っている。エリンシェはすぐに、ソレが自分に向けられたものだと気付いたが、今度は物怖じせずに〝聖杖ケイン〟を手にして、リノウへ向き直った。

【……お前か】

 つぶやくリノウには応えず、エリンシェは心の中で〝幸いの天使(フィルネリア)〟の名前を呼んだ。すぐに、〝聖杖ケイン〟があつくなり「応え」が返ってきた。

【……なるほどね、理由は分からなくはないけど、やっぱり気に入らない。 此処ココで殺してやるわ】

 エリンシェの目には、そう言って【鞭】を振り上げるリノウの姿がまるで本物の「(ケモノ)」のように映った。カノジョをこのまま野放しにしておけば、何をしでかすか分からない。……だから――。

(――〈フィー〉、カノジョを絶対にとめなくちゃいけない。 私に力を貸してくれる?)

〈えぇ、もちろんです。 ――大丈夫、私たちは一緒に今日(こんにち)まで修行を重ねてきました。 まだ完全ではありませんがきっとできるはずです〉

 力強く応える〈声〉に、エリンシェはうなずいてみせながら、リノウをじっと見据えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ