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――駆けて行く。ただ、会いたい気持ちを胸に、「キミ」の元へ。
「カルド!」「ミリア!」
同時に、ふたりは声を上げた。目が合うと、自然と笑みがこぼれ、ふたりして口元を緩める。
どちらともつかず、互いに手を差し出す。
すぐに、ふたりは手と「て」をとりあい、優しく強く握手を交わして、笑い合った。
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その後、ミリアとカルドはあまり言葉を交わさず、目配せだけで互いの意思をくみ取り、それぞれ、やるべきことを行動に移した。――ミリアはエリンシェ、カルドはジェイトの元へと急ぎ、次の授業で確実にエリンシェとジェイトのふたりが隣同士で座れるよう、働きかけた。
そして、当然のように、ミリアとカルドも隣同士で席につき、やがてエリンシェとジェイトが会話を交わし始めるのを眺めていた。
「やったね」「やったな」
ミリアとカルドはその瞬間、同時につぶやいていた。顔を合わせ、またふたりで笑い合うと、授業の合間を縫って話し始める。
「それで……そっちはどうだった?」
先にそう切り出したのはミリアの方だった。カルドがうなずき、優しく微笑みを浮かべてみせると、口を開いて言った。
「あぁ、お前の言う通りだった。 何となく、エリンはジェイトに似ていて、これから見守っていきたいってそう思った。 だから、これから時間を掛けて、エリンとは仲良くしていこうって決めたんだ。 ――ミリアを信じて良かった」
――カルドのその表情は、ミリアが今まで見たことがないくらい、とても優しいものだった。
思わず、ミリアはどきりとして顔を赤らめてしまう。そんなところを見られたくないとそっぽを向きながら、「そりゃ良かった」とだけつぶやいた。
「ミリアはどうだった?」
「……うん。 あたしも、ジェイトのことを見守っていきながら、仲良くしていきたいってそう思った。 だけど、あいつ、何だか頼りないから、カルドには悪いけど、あたし厳しくしようと思ってるよ!」
そんな彼女の様子を気にせず、同じ質問を投げかけたカルドに、ミリアはいたずらっぽく笑いながらそう言ってみせる。
「あぁ、頼むよ。 ミリアのやりたいようにやってくれ」
思わず吹き出したカルドが、優しい表情を浮かべたままうなずいた。その瞬間、今度はふたりの視線が重なり、お互いにつられるようにして笑い合った。
しばらくそうした後、ミリアとカルドは同時に、エリンシェとジェイトが座る席に目をやる。……どうやら、少しだけではあるが、ふたりも話をすることができたようだった。
「……上手くいくかなぁ、あのふたり」「さあな」
笑みを浮かべながら、ふたりの様子を見守っていたミリアとカルドだったが、少し経つと授業が本題に入り、集中せざるを得なくなる。
「だけど、上手くいくといいね」「でも、上手くいくといいな」
授業に集中する前に、ミリアとカルドはほとんど同時に、そうぽつりとつぶやいた。思わず、ふたりは顔を見合わせ、笑いをこぼすと、満足したかのようにうなずき合い、授業に臨むのだった。
……けれど、エリンシェとジェイトのふたりの関係はそれ以降、劇的に進展することはなかった。
だがそれでも、少しずつ進んでいくふたりを、ミリアとカルドは自分たちの仲を深めながら、そっと見守っていくことに決めたのだった。
――そして、「あの事件」が起きたのである。




