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――恋なんて、するワケないと思っていた。
親友さえいればそれで良いと思っていた。
……けれど、〝おもい〟は人を強くするのだと初めて知ることになった。
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彼女――ミリアが〝彼女〟と出会ったのは物心がついたすぐ後だった。
母親であるレイナに連れられ、初めて〝彼女〟の家を訪れたのだ。
「さ、あなたの新しいお友達のエリンよ。 ご挨拶して」
「ミリアです、よろしくね!」
そう言って、にこやかに顔を上げると、そこにはとてもきれいな女の子がうつむきながら立っていた。
――〝彼女〟がミリアの心を掴んだのはほんの一瞬だった。ミリアからすれば、〝彼女〟は芯が強そうに見えるのと同時に、どこか儚げで……。ミリアはなぜか、〝彼女〟を守りたい衝動に駆られた。
「私、エリンシェ。 皆からは『エリン』って呼ばれてるの。 だから、あなた――ミリアもそう呼んでいいよ」
そう言って、無邪気に笑う〝彼女〟――エリンシェに、ミリアは更に心ひかれた。思わず、前へ出て、その手を優しくぎゅっと掴むと、ミリアも微笑みながら、勢いよく口を開いた。
「ありがとう、エリン。 ね、あたしたち、お母さん達みたいに仲良くしよう! それで、ずっとずっと親友同士になるの! ねぇ、いいでしょう?」
すぐにエリンシェが「もちろん」とうなずいてみせると、きらきらとした瞳をミリアに向けて、小指と小指を絡ませるとにこやかに言った。
「じゃあ、約束」「――うん、約束!」
大きくうなずいてみせ、ミリアは繋がれた手を大きく振った。何度も何度もそれを繰り返したのに、エリンシェは嫌がることもせず、楽しそうに笑っていた。――そんな〝彼女〟に、ミリアはますます心ひかれたのだった。
ミリアとエリンシェが仲良くなるのに、それほど多くの時間は掛からなかった。
エリンシェに会いたくて会いたくて仕方がなくて、ミリアは毎日のように、母であるレイナに〝彼女〟に会いに行きたいとせがんだ。苦笑しながら、レイナはその願いを聞き入れ、週に一度はエリンシェの元を訪れることをミリアに約束した。
その結果、ミリアとエリンシェの二人は顔を合わせる度に仲を深め、幼なじみであり、姉妹のようでもあり、何よりの親友でもある――そんな関係へと発展した。
ミリアはエリンシェの考えていることなら、何でも手に取るようにわかった。〝彼女〟の方もミリアのことなら大体のことはお見通しのようだった。――二人はお互いに心通わすようになっていた。
当然、ミリアはずっとエリンシェの隣にいるのだと思い込んでいた。なのに……。
――やがて、〝彼女〟に「特別で大切な存在」ができたのである。
その存在に一目会った時、ミリアは到底〝彼〟には適いそうもないと――〝彼女〟のそばにいて守り抜くのは自分ではなく、〝彼〟なのだと思い知らされた気がした。
けれど、〝彼〟もまた、見ていると背中を押したくなるような――そんな不思議な存在だった。それに、〝彼〟のそばにいる〝彼女〟はどこかいつもと違ってみえて、とても幸せそうで……。ふたりの並んだ姿を見て、ミリアはすぐに、ふたりには強い縁があるのだと直感した。
もちろん、〝彼女〟が幸福ならそれで良かった。なのに……。なぜだろう、〝彼女〟が自分から離れていくと思うと、どうしようもないさみしさがミリアを襲った。
――そんな時、ミリアが出逢ったのが、カルドだった。彼もまた、彼女と同じように「さみしさ」を抱えていて……。
――これは、そんな同じ「境遇」を持つ、ミリアとカルドのふたりが、手とてをとりあい、強い絆を持つようになるまでの物語。




