Epilogue ଓ 前へ 〜next 〝step〟~
それから、しばらく経って。
エリンシェとジェイトは手を繋いで、帰路に着いた。その間、成り行きで、顔なじみの人々にお互いのおもいが通じたことを報告することになった。
まず最初に、報告することになったのはアリィーシュだった。彼女はその日も万が一の時のために、少し離れたところで見張っていた。そして、ふたりが帰る頃になると、エリンシェの元へすぐ戻って来たが、その様子を見ると、アリィーシュは優しく微笑みを浮かべ、ふたりを見つめた。
「アリィ」
エリンシェがそう呼び掛けると、アリィーシュは分かっているというように、微笑んだままうなずいてみせたのだった。
次に、ふたりが偶然出会ったのはガイセルだった。――たまたま通りがかった彼とすれ違ったのである。
「ガ……せんせい! 私、ちゃんと伝えられたよ!」
ふたりの様子を見て目を丸くしているガイセルに、エリンシェはそれだけ言った。
彼も満足そうな笑みを浮かべて、うなずいてみせると黙ったまま、その場を立ち去った。
そのすぐ後、辺りを駆け回っているレイティルに遭遇した。
「ふ~ん、やっとかぁ」
ふたりの様子を見てニヤニヤと笑いながら、レイティルはそれだけ言い残すと、足早にどこかへ行ってしまった。
エリンシェとジェイトは彼女の言葉に、思わず顔を見合わせるのだった。
最後に、報告することになったのはミリアとカルドだった。
「ずいぶん長かったね」「ずいぶん長かったな」
手を繋ぐエリンシェとジェイトの様子を見るなり、ミリアとカルドのふたりはほとんど同時にそう言った。
それを聞いて、エリンシェとジェイトはまた顔を見合わせ、そして笑いをこぼした。
ふたりに釣られるようにして、ミリアとカルドも顔を合わせると、ほっとしたような表情で同じく笑いをこぼすのだった。
ଓ
それからというものの、しばらくは平和な日々が続いた。
――けれど、エリンシェはいつまでもその余韻に浸っていなかった。……まだまだ「課題」は残っているのだ。
「アリィ、私ね、〝聖杖〟との絆を深めたいの。 『そこ』に糸口があるような気がしてて……。 だから、何か良い方法がない?」
まもなく二年目も終盤に入り、休暇が近付いていたある日、エリンシェは姿をあらわしていたアリィーシュにそう尋ねた。
それに対し、アリィーシュは少し考える素振りを見せた後、ふと思い付いたかのように〝そうだ!〟と手を叩いた。
〝あのね、守護神には「神殿」が与えられていてね、そこにはとても清らかな「気」があふれているの。 もしかすると、「神殿」に行けば、何か得るものがあるかもしれないわ〟
「アリィにも〝神殿〟があるの?」
〝えぇ。 ……とはいっても、実際にはテレスの守護神の「神殿」だし、封印されて以来しばらく訪ねていないけどね。 だけど、〈ベル〉と「対話」する時にはあそこが一番だから……。 エリンも行ってみると良いかもしれないわね〟
アリィーシュが口にした〝対話〟という言葉に、エリンシェは思わず顔を上げた。……やはり、ゼルグにさらわれたあの時、【闇】で出逢った〈彼女〉は……――。
「アリィ、私もその〝神殿〟に行ってみたい。 ――ちょっと確かめたいことがあるの」
〝分かったわ、じゃあ一度休暇中に訪ねてみましょう〟
すぐに二つ返事をしたアリィーシュに、エリンシェは「ありがとう」と返しながら、少し物思いにふけった。
……もっと、強くならなければならない。あれほど訓練していても、ゼルグには歯が立たなかった。それどころか、不甲斐ないことにジェイトをも巻き込んで、おまけにさらわれてしまった。――実力の差をはっきりと見せられてしまった。けれど、【敵】が息を潜めている間に、なるべくできることはしなければならない。――この平和で幸福な日々を守るためにも、強くならなければならない。……いや、必ず強くなってみせる。
エリンシェは最後に、そんな思いを胸に「前」へ進むことを決心したのだった。
――そうして、エリンシェの学舎生活ニ年目は終わりを告げ、まもなく三年目へと向かっていくのだった。




