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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅰ Episode 2 翼――それは〝おもい〟を知る〝もの〟
34/151

Feather 9 ଓ 【薬】 〜【drug】〜


    ଓ


 ――夢を、見た。

 〝彼〟がすぐ側にいるのに、すごく遠くに感じる夢だ。

 手を伸ばしても、〝彼〟がどんどん離れていってしまう。

 声も届かない。いくら叫んでも、〝彼〟には一切聞こえていない。

 もがいているうちに、どんどん〝彼〟が離れていく。

 待って、行かないで! まだ、全部、伝えられてないのに!

 必死に追いかけるが、〝彼〟には届かない。

 そうしているうちに、〝彼〟の姿が【闇】の中へ消えていった――。


    ଓ


 はっとして、エリンシェは目を覚ました。まだ【力】に当てられてしまっているのだろうか、身体が動かない。

 どうやら、知らない場所に連れて来られたようだ。エリンシェは視線だけを動かして辺りを見回すが、暗闇が広がっていて、何も見えない。

(……そうだ、ジェイトは!?)

 エリンシェは意識を失う前のことを思い出し、ジェイトを探す。……もしかしたら、彼も一緒に連れて来られたかもしれない。目を凝らし、辺りをもう一度見回すと、少し離れたところに、彼が意識を失ったまま、倒れているのを見つけた。

 ほっとしたのもつかの間、エリンシェはすぐに、ジェイトを逃さなければと思い直す。首元を確認して、ペンダントがそこにあるのを確かめる。……けれど、未だに身体は動きそうにない。

 アリィーシュも側にいない。あの時、一緒に吹き飛ばされた後、彼女は一体どうなってしまったのだろうか。そんなことを考えていると、足音か聞こえて来た。エリンシェは思わず、息を凝らす。

 暗闇の中に姿を現したのはヴィルドだった。その側には、ゼルグの【気配】も感じる。彼の手には小さなビンが二つ握られていた。

 虚ろな表情で、ヴィルドがジェイトの近くに立った。……何をする気だろう。エリンシェが不安に思っていると、ヴィルドはジェイトの髪を乱暴に引っ張り、頭を無理やり起こした。その痛みに、ジェイトが無意識のまま、唸り声を上げている。……まさか。

(だめ!! ジェイトに何もしないで!!)

 そんな思いも虚しく、やはりエリンシェの身体は動かず、す術もなかった。唸り声で小さく開いた口を、ヴィルドは乱暴にこじ開けると、ビンの一つ――白く濁った【液体・・】を、一滴残らずジェイトに飲ませる。

「ぐ……っ!!」

 吐き出すこともできず、不本意ながら【ソレ(・・)】を飲み込んでしまったジェイトは苦しそうに声を上げると、そのままぐったりしてしまった。そんな彼の髪を用済みだと言わんばかりに、ヴィルドが乱暴に放した。更に頭も打ってしまったジェイトは、ぴくりとも動かなくなった。

 ……どうして。――どうして、無関係な〝彼〟を巻き込むだろう。一体、〝彼〟が何をしたというのだろう。エリンシェはそう思うと同時に、ジェイトを守れなかった自分を責める。

 ――と、ヴィルドが今度はエリンシェの方へ向き合った。エリンシェは息を呑んだ。……次は自分の番なのだ。

【やあ、起きてたんだね。 抵抗しようとしても無駄だよ、しばらくは動けないようにしてあるからね】

 ヴィルドと共に近付いて来たゼルグが、エリンシェが意識を取り戻していたことに気付き、呑気な声でそう告げる。

 血の気が引いて、エリンシェはそれでもなお、抵抗しようとするが、ゼルグの言う通り、身体は全く動かなかった。

 そうこうしているうちに、ヴィルドがエリンシェの近くに立った。……嫌だ。エリンシェは身震いする。

【眠っていた方がずっとだったのにねぇ……。 ――さあ、ヴィルド、彼女に「薬」を飲ませるんだ】

 愉快そうに笑い声を上げるゼルグにうなずいてみせると、ヴィルドはしゃがみこんだ。そして、そっとエリンシェの頭を持ち上げると、無抵抗のままの彼女の口をこじ開けた。

 ……嫌だ、イヤだ!! 得体の知れないその液体――【薬】を拒絶しようとしても、エリンシェは何もできないままだった。あまりの恐怖に、涙が一筋流れる。

 そんなエリンシェの様子を意にも介せず、ヴィルドはもう一つのビンに入っていた透明な【薬】を彼女の口に流し込んだ。

 吐き出そうとしたエリンシェだったが、それもかなわず、そのまま【薬】を飲み込んでしまう。不思議なことに、その【薬】は何の味もせず、まるでただの水かと錯覚するほどだった。かえって、それがエリンシェの恐怖を更に誘った。

 エリンシェが【薬】を飲み終えたのを確認すると、ヴィルドは彼女の頭をそっと下ろした。その脇では、ゼルグがまだ愉快そうに笑っていた。

【これでよし、と。 それじゃあ、またね(・・・)

 ゼルグのその言葉を合図に、エリンシェは意識がだんだん遠のいていくのを感じた。未だ何も抗えず、涙を流したまま、そのまま気を失ったのだった。

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