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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅱ Episode 2
119/151

Ep2-Feather 8 ଓ 【起因 Ⅲ】 〜【causing Ⅲ】〜


    █


 まず、レスカが学んだのは世界の「渡り方」だった。試行錯誤を重ね、転移の仕方を身につけていった。

 最初のうちは少し離れたところにしか移動できなかったが、【解邪(アンタイ)】で【力】を使いながら、転移することで()を掴み、そして、そうしているうちに左手の【(アザ)】に触れるだけで転移ができるようになった。

 そして、その道すがら、〝力〟の強い「存在」を探しながら、転移した世界にいた神達の〝力〟を奪っていった。

 【解邪(アンタイ)】してしまえば、【狩り】は行えるのだが、まだ慣れないうちはケモノのように〝力〟を(むさぼ)ることしかできなかった。

 けれど、少しずつ、いかにして、確実に神から〝力〟を奪い、自分の【(モノ)】にしていくかを覚えていった。そして、ついに、余韻さえ愉しめるほど、レスカは【狩り】の腕前を上達させていった。

 ……しかし、どれだけ【狩り】をして【力】を手にしても、レスカの心は満たされることはなかった。

 そして、長らくの間、レスカは転移を繰り返し、【力】を追い求めながら、存在し(いき)続けていたのだった。



 それから、しばらく経った頃のこと。

 いつものように世界を転移し(渡り)、【狩り】していると、ふと、その時レスカが降り立った世界のほど近くに、強い〝力〟を感じた。

 コレだ(・・・)。ずっと探し求めていたのはこの〝力〟だ。その瞬間、レスカはすぐにそう直感した。

 すぐにレスカはその〝力〟に向かって転移をした。


 ――その時、たどり着いた先が旧・魔法王国だった。


 転移すると、レスカは〝力〟の主を探した。

 けれど、何故かは分からないが、その主を見つけることができずにいた。

 どうしたものか。レスカがそう悩んでいた時のことだった。


 ――ココにいる。オマエが【狩り】をすべき「存在(もの)」が。


 どこからともかく、そんな【コエ】がきこえてきたのである。

 レスカはとっさに後ろを振り返るがナニ(・・)もいない。

 不気味に思っていると、再び【コエ】が語り掛けてきた。


 ――その「存在(もの)」は極上の馳走(エモノ)。一度喰らえば忘れられぬ「代物(シロモノ)」だ。


 その言葉に、思わずレスカは生唾を飲み込む。

 けれど、相手は得体のしれない【コエ】だ。本当のことを話しているかは定かではない。


 ――騙されたと思って探してみろ。【狩り】をすれば、すぐに理解できる(わかる)


 それだけ語り掛けると、【コエ】は気配(・・)を消してしまった。

 突拍子もない(ハナシ)だが、試してみる価値はある。レスカはそう考えて、魔法王国の中を探してみることにしたのだった。


 ――そして、レスカかまず最初に見つけ出したのが、真夜中の教会で祈りを捧げていた魔法王国の守護神だった。

 ……だが、「アタリ(・・・)」ではなかった。守護神の〝力〟は今まで【狩り】をして来た中でも特に微々たるものだと言っても過言ではなかった。

 満たされず、怒りすらこみ上げ、レスカはその神を「つまらない」と切り捨てた。けれど、【カノジョ】は理解してもいた。――守護神という存在()は自分が守護する世界とそこに生きる人間(ヒト)というものをこよなく愛している。【コエ】が語った通り、本当に強い〝力〟をもつ「存在」がいるのなら、守護神がその「存在(もの)」を知らないはずがなかった。

 いやむしろ、特別に愛し、守っていることさえ、あり得るかもしれない。レスカはそう考え、守護神を【狩る】前に、その「存在」の在処を吐かせた。

 すると、守護神はあっさりと、王国の姫が人間(ヒト)の身でありながら、〝力〟を持っていることを明かしたのだ。

 ずっと探し求めていた「存在」がただの人間(ニンゲン)であることを知り、レスカは驚愕する。今までは神ばかりで、人間(ニンゲン)を【狩る】ことなど考えたこともなかった。

 けれど、今から喰らう「守護神」という肩書きがひょっとすると使えるかもしれない。あまり気は進まなかったが、レスカはそう考え、守護神の〝力〟を喰らった。


 ――その時だった。


 【狩り】場であった教会の扉が開かれ、レスカは「運命」の【邂逅】を果たしたのだ。

 そこにいたのは二人の「オトコ(・・・)」――そのうちの一人は人間(ニンゲン)、そして、もう一人は【邪神】の(オトコ)だった。

 ふと、レスカはそのうちの人間(ニンゲン)(オトコ)と目が合う。

 今まで人間(ニンゲン)という存在(もの)には興味を(いだ)いたことすらなかったレスカだったが、(カレ)だけは違っていた。

「……女神(メガミ)さまだ……」

 そんなつぶやきを漏らす(カレ)から目を離さないまま、ふと、レスカはあることに気付く。

 理由は不明だが、(カレ)人間(ニンゲン)でありながら、【邪神】のことが認識できて(みえて)いる。普通の人間(ニンゲン)は【邪神】どころか、神の存在すら認識する(みる)ことはかなわないというのに。

「なぁ、あんた……『何者(ナニモノ)』なんだ……? 人間(ヒト)じゃないんだろう?」

 ……おかしなことを聞く。(そこ)にも同じ【邪神】がいるというのに。けれど、そう尋ねる(カレ)の目はとても生き生きとしている。――何か……「特別」なものを見出(みいだ)したかのように。

【私は「邪神」レスカだ。 この国には私が求める「存在(もの)」が居るようなので、やって来た】

 気が付くと、レスカはそんな(カレ)に応えていた。……人間(ニンゲン)など、取るに足らない存在だというのに。

「なぁ、あんた……レスカ、だったか? あんたにも色々あると思うが、一つ、頼まれてほしい。 オレの名はヴェスター。 この国を支配するために【黒きモノ達】という【組織】を束ねている。 オレはずっと、【邪神(あんた)】のような【存在】が出現する(あらわれる)のを待ってたんだ。 ……無茶言ってるのは分かってる。 だが、オレはあんたに頼みたい。 ――レスカ、【黒きモノ達(オレ達)】の【女神(・・)】様になってほしい」

 ……聞いてもないのに、よく喚く(しゃべる)。不快感すら覚えたが、レスカはなぜだか、(カレ)――ヴェスターのことを拒絶しようとは思わなかった。むしろ、人間(ニンゲン)でありながら、強い「野望(・・)」を(いだ)いている(カレ)に、興味が湧いてすらいる。

【……ふん。 おまえ達の「女神(・・)」様とやらになって、私に何の利点がある? それに、おまえは気付いていないようだが、(そこ)にいる(オトコ)も同じ「邪神」だぞ。 私でなくとも、そいつで良いではないか】

 ――というのに、レスカは裏腹にそんなことを口にしていた。

 その言葉を聞いたヴェスターが驚いたように、(オトコ)の方を振り返り、「……デュロウ、そうなのか?」と尋ねている。すぐさま、(オトコ)――デュロウが涼しげな表情(カオ)を浮かべて【えぇ】とうなずいている。

【けれど、同じ(・・)ではありませんよ。 ――「カノジョ」は「特別(・・)」な「邪神」ですから】

 続けてそう進言するデュロウに、レスカは思わず視線を投げ掛けた。……目が合う。いつかの若い男【邪神】や周りの【邪神】達のように、【聖力狩り】であるレスカのことを(ないがし)ろにするのだろうか。そう考えて、レスカは少しデュロウのことを警戒する。

 けれど、デュロウにそんなつもりは毛頭なさそうだった。むしろ、レスカがそれまでに向けられたことのない「感情(・・)」で、「カノジョ」のことを見つめ返していた。

【……お聞き下さい。 あなたの探し求める「存在(もの)」とこちらの方の標的は偶然にも一致しているのです。 これから、建国祭に乗じて、(カレ)はこの国の王を落とします。 そして、唯一の生き残りとなった姫を(めと)り、新たな王になるのです。 ――つまり、(カレ)と手を組み、後ろ盾になれば、あなたは求めて来た「存在(もの)」に邂逅する(であう)ことができる】

 ヴェスターの代わりに、デュロウがそう話して「取引」を持ち掛ける。……悪くはない話だが、手放しで乗るような提案でもない。それに、人間(ニンゲン)なんて存在(モノ)にそもそも興味がないのに、これから先ずっと縛られるなんてまっぴらごめんだ。

「なぁ、頼むよ。 ずっとが無理なら、今回だけ協力してくれるのでもいい。 ほんの少しでも、オレ……の【女神(・・)】様になってくれるなら本望だ。 あんたを初めて見た時、オレはずっとあんたのような「存在」を待っていたんだってそう思ったんだ」

【もし協力して下さるのなら、このデュロウをお使い下さい。 あなた様のお役に立てるなら、なんだってします】

 二人の「オトコ」に懇願され、レスカは思わず戸惑う。「いつも」なら、こんな頼み(こと)相手にせず、とっくの昔に一蹴していたはずだ。……なのに、なぜだろう。断りきれない自分がいることに、レスカは戸惑いを隠せなかった。

 ……それになんだ、「これ(・・)」は? このふたりには――特に、ヴェスターに強く、今まで認識したことがない「感情」を(いだ)いてしまっている。――そのせいで、このふたりの懇願を断れば、この先ずっと後悔することになるという予感を覚えてしまっている。

【……わかった】

 悩みに悩んだ結果、レスカはふたりの懇願を受け入れることにした。

【けれど、ひとまず今回()協力するだけだ。 もし(しょう)に合わないと思えばすぐにこの話から降りさせてもらう】

 そんなことを口にしながら、レスカは胸の中の「つかえ(・・・)」がなくなっていくのを感じていた。

 ……いや、元々悪い取引(はなし)でもないのだ。この「感情」を覚えなくなったら、ふたりに言ったように、すぐに離れれば良い。

 そんなことを考え、ふたりのことを軽んじていたレスカだったが、後にこの邂逅(であい)が「運命」を――旧魔法王国を破滅に導き、レスカ自身をも変えることになるのであった。

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