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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅱ Episode 2
117/151

Feather 6 ଓ 【起因 Ⅰ】 〜【causing Ⅰ】〜


    ଓ


「――それで、何が聞きたい?」

 目が覚めた先程の部屋に戻るなり、レスカがそう尋ねる。

 譲らなかったものの、具体的に何が聞きたかったのかと改めて聞かれるとすぐには思い付かない。少しの間、エリンシェは悩んだ。

 知りたい(・・・・)と思うからには、【カノジョ】が【聖力狩り】であることもよく理解しないといけないだろう。

(アナタが……誕生して(うまれて)からこれまでのこと――全部)

 そうして行き着いたエリンシェの答えに、レスカが意外そうな顔を見せる。けれど、拒否することもなく、またため息混じりに口を開いた。

「……いいだろう」

 

 ――そして、レスカは己の過去を語り出したのだった。


    █


 地中の奥深く――ずっと奥深く。

 其処(ソコ)に【邪神】の棲む【世界】があると言われていた。

 けれど、実際のところ、何処(ドコ)にあるのか、誰も――【邪神】達さえも知らない。なぜならば、物心がつくと【邪神】は【野望】を(いだ)き、その【世界】から離れていくモノが多くいるからだ。――【邪神】達は、己の【野望】以外のコトには何の関心を持たないのだ。

 互いに関わらない――そんな【邪神】達にも、唯一例外があった。

 それは【邪神】というモノを絶やさないために、「(ツガイ)」を持ち(・・)、新たな【邪神】を誕生させることだった。

 「(ツガイ)」となったモノ達は新たな【邪神】を誕生させた(のち)、【野望】を持つまでは共にその()を育て上げるよう、定められていた。そして、その「役目」を終えたモノ達はまた、己の【野望】のために存在し(いき)始めるのだ。

 そんな誕生する【邪神】の中でも、【聖力狩り】と呼ばれる【存在】は極めて異質なモノだった。

 「(ツガイ)」の「血」でもなく、何時(いつ)何処(どこ)で誕生するのか分からない【聖力狩り】という【存在】はその異質さから、同胞であるはずの【邪神】達からも忌み嫌われて、やがて排除(・・)される対象となり、その数を減らすこととなった。

 ――その結果、【聖力狩り】という【存在】は一時絶滅していた期間があった。

 そんな中、誕生したのが現在、唯一の【聖力狩り】として生き残っているレスカだった。


    █


【……嘘】

 レスカを産んだ母親にあたる(オンナ)の【邪神】は、己の()の左手を見るなりそうつぶやいた。

 やがて畏怖の浮かべた(オンナ)を振り返り、父親にあたる(オトコ)もまた、その視線の先――己の()を見て、息を呑んだ。

【まさか……】


 ――二人の()には左手には小さな【(アザ)】があった。

 

 すぐに、(オトコ)()の【力】の有無を確かめる。


 ――その()には【力】が無かった(・・・・)


【嘘でしょ! 私達の()が「聖力狩り」として生まれるなんて! 確か(ウワサ)では――――とかいう名前の「邪神」で絶滅してたって言うじゃない!】

 そう喚きながら、(オンナ)が頭を抱える。(オトコ)の方もふらついて、物に寄りかかりながら、(オンナ)に何も返すことができずに黙り込む。

 二人は、もちろん己の()(おそ)れてもいたが、【聖力狩り】を誕生させてしまった「(モノ)」達がどういった末路を辿(たど)るのか、知られていないからでもあった。

【……隠……そう】

 ふと、(オトコ)が何かをつぶやいた。それを聞いて、混乱していた(オンナ)が弾かれたように顔を上げ、(オトコ)を振り返る。

【何ですって……!?】

【――隠し通そう。 物心つくまでにいくらか(・・・・)〝力〟を与えれば(・・・・)、「力」がないことに気付かれないはずだ】

 今度ははっきりと、(オトコ)(オンナ)に言い放った。

 そんな(オトコ)に、とんでもないモノを見るような視線を投げ掛けながら、(オンナ)は首を横に振った。

【何言ってるの? 本気!?】

【あぁ、本気だ。 正直にこの()の正体を申し出れば、間違いなく「聖力狩り」として迫害されてしまう。 だってそうだろう? ――現に私達だってこの()を畏れているんだから。 忌み嫌われ迫害され、この()が「邪神」全てを恨み、存在そのものを滅ぼそうとしたらどうする? 少なくとも、隠し通すことができれば、そんな危険からは(のが)れられるはずだ】

 もっともらしく言ってのける(オトコ)の話に、(オンナ)はつい納得し掛けてしまう。けれど、やはり、(オトコ)が正気の沙汰ではないと考え直し、また(かぶり)を振りながら反論する。

【そんなの……正気じゃないわ! 何を根拠にそんなバカなことを言うの!?】

【根拠なんてない。 ただ……この()からはナニカ……「恐ろしいモノ」を感じるんだ。 無茶なのは分かってる。 だけど、少なくとも、この()の「(たぎ)り」を私達「邪神」から他に背けることはできる】

 ただのカン(・・・・・)ではあるが、己の()から並々ならぬモノを感じ取ったらしい(オトコ)と、(くだん)()を見比べ、(オンナ)は思案する。


 確かに、二人の()――レスカは(オトコ)の言う通り、誕生し(うまれ)ながらにして禍々(マガマガ)しい「気」を持っていた。


【……分かった】

 長考の末ようやくうなずいた(オンナ)に、(オトコ)はほっとした表情を見せた。

【この()が〝力〟を求めだしたら、私達で何人か調達(・・)してこよう。 物心がついたらすぐ、適当な処にこの()を逃がそう。 最後までは無理でも、少なくともこの()の「獲物(エモノ)」を見つけられるまではできるだけ隠し通そう】

 ――こうして、二人は己の仔(レスカ)を【聖力狩り】としてではなく、ただの【邪神】として物心つくまで育て上げることを誓い合ったのだった。


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