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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅱ Episode 2
115/151

Feather 4 ଓ 【侵蝕】 〜【shadow】〜


    ଓ


 ――「何か」が……ピシッと音を立てたような気がした。

 それにいち早く気が付いたエリンシェはふと、顔を上げた。意識を集中させ、「何」が起きたのかを突き止めようとする。

 ……心なしか、「空気」が張り詰めたように思える。「何か(・・)」が入り込んだのかもしれない。

(――アリィ)〝どうしたの、エリン〟

 エリンシェは、姿を消し、側に控えているアリィーシュに心の中で呼び掛ける。すると、彼女がすぐさま反応する。

(……嫌な予感がする。 全く動きが掴めないんだけど、「何か」が入り込んで来たと思う。 もしも……私が【敵】につかまってしまったら、ジェイトをお願い)

〝どうしたの? 珍しく弱気じゃない〟

 エリンシェが予防線を張ると、アリィーシュがそう指摘する。いつもなら……何とか突破口を切り拓くのだが、今回ばかりはそれも難しそうな気がした。未だ意識を集中させ、【敵】の「気配」を感じ取ろうとしたが、その動きが掴めそうになかったのだ。

(「向こう」が執念深いくらい本気なの。 「気配」を掴もうとしても、そうさせまいと動いているような……そんな感じ。 まるで()を捕まえようとしてるみたい)

 途方に暮れて、エリンシェは肩をすくめながら、アリィーシュにそう返す。今のところ、「向こう」もこちらの動向を見ているようだ。そうしているうちは手を出して来ないだろう。

 とはいえ、独りの時間を増やし、隙を与えてもいけない。エリンシェは早足でその場を後にするのだった。


    ଓ


 その後、しばらく落ち着かない日々が続いた。

 一瞬でも気を抜けば「向こう」が動き出しそうに思えて、日に日に疲労が募るばかりだった。もちろん、エリンシェの側にはアリィーシュも控えていたし、ジェイトが中心になって〝彼女〟から離れまいと行動してもいた。

 ふと、エリンシェはレスカが口にしていた「人間(ヒト)というものは決して、生まれ持つ運命に抗えない」という言葉を思い返していた。

 ……そんなことはない。あの日返したように、人はどんな運命だろうと立ち向かっていけるはずだ。なぜ、今更そんなことを思い出すのだろう。


 ――そう思った時にはすでに手遅れだった。


 視界がぐらりと揺れ、キィンという音が反響する。

 側にはジェイトやみんながいて、アリィーシュがいたはずなのに、誰もいない。独り、何処か分からない空間に囚われている。

 ……まずい。エリンシェはすぐに出口を探そうとするが、背後に「気配」を感じ、思わず動きを止めてしまう。

「――そう、あなたは『運命』というものに嫌悪を(いだ)いている」

 (オトコ)……――いや、【邪神】だ。そうだと理解できる(わかる)のに、エリンシェはなぜか(・・・)振り向けずに――(のが)れられずにいた。

【――本当はただ幸せに暮らしていたいだけなのに。 どうして自分には〝力〟があって、この世界(テレスファイラ)守護し(まもら)なければならないのか――どうして自分だけがこんな「運命」を背負わなければならないかとそう思っている。 ……違いますか?】

 ……違う。――違う!! エリンシェが必死に抵抗するも、背後の【(オトコ)】はそれまでに感じていた通り執念深く(・・・・)、エリンシェを追い詰めようとしていた。

 隙を突かれないよう、抵抗を続けながらも、エリンシェは【(オトコ)】に既視感を覚えていた。確か……あの日見た旧魔法王国の夢の中に、この【(オトコ)】がいたはずだ。姫に【(かげ)り】を植え付け(・・・・)、教会へと(いざな)った【(オトコ)】――その【(オトコ)】と背後の【(オトコ)】が似ているのだ。

 一瞬でも気を抜けば、姫の二の舞いに――【聖力狩り】であるレスカの元へ拉致され、〝力〟を奪われてしまう!

「私……私は、自分でこの〝力〟と向き合っていくと――大切なひとたちの暮らすテレスファイラ(このせかい)守護して(まもって)いこうと決めたの。 だから……私が背負っているこの『運命』もちゃんと受けいれる。 ――自分自身でこの『運命』を切り拓いていく!」

 エリンシェは強い意志でそう言い返すと、背後の【(オトコ)】から離れようとした。

 ……が、【(オトコ)】は決してそれを許そうとしなかった。

【さすが人間(ニンゲン)でありながら、〝守護者〟をつとめるだけのことはある。 なかなか堕ちてはくれないようだ。 ……けれど、此方(コチラ)にも「矜持(・・)」というモノがある】

 そう言うと、【(オトコ)】は背後から姿を消した。

 思わず振り返り、エリンシェはすぐに【(オトコ)】を探す。けれど、どこにも見つからない。まるで……「影」の中にでも隠れたかのようだ。

 視線を戻し、前を向くと、そこには【(オトコ)】が本当に「影」のように揺らめく姿で、そこに佇んでいた。

 すぐ眼前に迫る【(オトコ)】の狙いに気付き、エリンシェは後ずさりしようとする。


 ――が、それよりも早く、【(オトコ)】が【()】のような手でエリンシェを貫いていた。

 

 だめだ、逃げられない……!! そうだと理解する(わかる)と、エリンシェはすぐさま「()」を守った。

 一瞬でも遅れていたら、それこそ手遅れだっただろう。最後まで【(オトコ)】に入り込める隙を与えなかった代償(かわり)に、エリンシェは「自由」を奪われてしまった。

 意識が……遠のいていく。身体が……動かせ……ない。エリンシェはそのまま、地面へと倒れ込んで行く。

 その身体を、【(オトコ)】が受け止め、軽々と抱き上げた。そして、そのまま口元を歪めると、エリンシェを連れたまま、姿を消したのだった。

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