Feather 1 ଓ 遭逢 〜coming upon〜
ଓ
――そして。
ミリアと共に、エリンシェは学舎として使われている旧魔法王国の城へと向かった。
その途中、待ち合わせしていた二人と合流した。
――二人とも、エリンシェの大切な存在達だった。
そのうちの一人はカルド。ミリアの恋人でもあり、エリンシェを影ながら支えてきた存在である。
そして、もう一人はジェイト。――カルドと親友同士である〝彼〟は、エリンシェと恋人同士でもあり、将来を誓い合った仲だった。
ジェイトがいなければ、エリンシェは〝守護者〟となることもなかっただろう。〝彼〟の存在があるからこそ、エリンシェはテレスファイラをまもりたいとそう思えるようになったのだ。〝力〟と生きていこうと考え、強くなれたのも〝彼〟がいたからこそだった。
エリンシェ・ジェイト・ミリア・カルドの四人は合流すると、上級過程を学ぶ生徒が暮らすことになる寮がある塔へと向かった。
その入口では寮室を決める場が設けられていた。表を覗き込むと空室が多くあり、自由に部屋を決められそうだった。
個室が多い中、四人はお互いに目配せをして、とある部屋を選び、同時に指差して『ここで』と口にした。
「えっ……いいの? あんまり人気ない部屋だから、助かるけど……」
受付の生徒が意外そうな声を上げたが、四人は微笑んでうなずいてみせた。
真っ先に四人が選んだのは相部屋。――壁一枚で隔たってはいるが扉で行き来できる部屋だ。上級過程に入る前の三年間でも、四人で全く同じような部屋で過ごして来たのだ。
以前までは「残り物」で偶然そうなってしまっただけだったが、今や色々と相部屋の方が都合が良かったのだ。
ただ今回、違っていたのは程近くに「お隣さん」がいるという点だった。――なぜか一部屋だけ、ぽつんと個室が相部屋のすぐ側に位置していたのだ。しかも、その「お隣さん」に……。
――「先客」がいる。……メレナ・スヴェイン。女生徒だろうか。エリンシェは票の名前に目をやりながら、「何か」引っかかるものを感じていた。
「さて、寮室に行こうか。 『お隣さん』に挨拶もしないといけないしね?」
そうこうしているうちに、ミリアがカルドと手続きを済ませていた。彼女に声を掛けられ、エリンシェは我に返り、うなずいてみせるのだった。
心臓の鼓動が早くなっている。
……なぜだろう。彼女の名前を目にしてから、なぜだか落ち着かない。エリンシェは小さく深呼吸をしながら、独り考え込んでいた。……だけど、なんだろう。この感じ……何時だったかと同じような気がする。
ひとまず、エリンシェ・ジェイト・ミリア・カルドは荷物を寮室へ置くと、近くの「お隣さん」を訪問することにした。その間もエリンシェの心臓の高鳴りはおさまりそうもなかった。
――そして、いよいよ、その扉を叩いた。
出てきたのは黒髪を三つ編みに結わえ、眼鏡を掛けた物静かそうな女生徒だった。
エリンシェはその姿を見た瞬間、はっとする。……あの娘だ。
「あ、どうも、はじめまして。 私達、これから三年間『お隣』同士で暮らすことになるので、挨拶に来ました。 あたし、ミリア・フェンドル」
エリンシェが驚いていることなど知る由もなく、ミリアがいつもの調子で明るく挨拶をする。
「俺、カルド・ソルディス」「僕はジェイト・ユーティス」
その後に、カルドとジェイトが続く。
エリンシェは黙ったまま、彼女をじっと見つめていた。
……卒行のあの日、彼女の「奥底」に感じた「気」はまだ其処に在る。しかも、その「気」は少しばかり強くなっているように思える。おまけに、何か……計り知れないモノをその「気」から感じた。
だが、その「気」を抑え込むかのような……そんな強い「意志」も感じ取ることができた。――おそらく、目の前の彼女がその「気」と人知れず戦っているのだ。
……まだ、事情は分からない。けれど、なぜだろう。目の前の彼女を見ていると、ある一つの「思い」が浮かんで来る。
(――救いたい)
どうしようもなく、そう思ってしまうのだ。
ならば――。
……きっと、長い「戦い」になるだろう。目の前の【モノ】がどれほど強大かもまだ分からないが。
それでも――。
「決心」がつき、エリンシェは微笑を浮かべた。
ふと、心配そうな表情を浮かべているジェイトと目が合う。〝彼〟にも微笑んでみせながら小さくうなずいた後、エリンシェはようやく名乗りを上げた。
「私、エリンシェ・ルイング! ね、良かったら、せっかくの『隣』同士だし仲良くしない?」
【気】を抑え込んでいたとしても、彼女は普通の「女性」だった。おどおどしていたが、エリンシェの笑顔を見ると、嬉しそうな表情を浮かべて、うなずいてみせた。
「うんっ、よろしくね! 私、メレナ・スヴェイン」
そう言って、メレナがエリンシェに向かって、手を差し出す。
エリンシェは迷わなかった。すぐに、その手を握り返した。
(……ッ!?)
その瞬間、少なからず「衝撃」を受けた。――彼女の中の【モノ】が、極上の「獲物」を見つけた時のように悦び、此方をとらえているが理解できたのだ。
瞬間、エリンシェは目の前の【敵】が強大だと悟った。おまけに、かつての【敵】ゼルグとは違った特殊な【存在】だろう。
けれど、エリンシェは決して動じなかった。――それでも、「決心」が揺らがなかったからだ。
「よろしくね!」
エリンシェは何事もなかったかのように、彼女の手を力強く取り、握手を交わすのだった。




