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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅱ Episode 1
101/151

Feather 1 ଓ 遭逢 〜coming upon〜


    ଓ


 ――そして。

 ミリアと共に、エリンシェは学舎(まなびや)として使われている旧魔法王国の城へと向かった。

 その途中、待ち合わせしていた二人と合流した。


 ――二人とも、エリンシェの大切な存在(ひと)達だった。

 そのうちの一人はカルド。ミリアの恋人でもあり、エリンシェを影ながら支えてきた存在である。

 そして、もう一人はジェイト。――カルドと親友同士である〝彼〟は、エリンシェと恋人同士でもあり、将来を誓い合った仲だった。

 ジェイトがいなければ、エリンシェは〝守護者〟となることもなかっただろう。〝彼〟の存在があるからこそ、エリンシェはテレスファイラ(このせかい)をまもりたいとそう思えるようになったのだ。〝力〟と生きていこうと考え、強くなれたのも〝彼〟がいたからこそだった。


 エリンシェ・ジェイト・ミリア・カルドの四人は合流すると、上級過程を学ぶ生徒が暮らすことになる寮がある塔へと向かった。

 その入口では寮室を決める場が設けられていた。表を覗き込むと空室が多くあり、自由に部屋を決められそうだった。

 個室が多い中、四人はお互いに目配せをして、とある部屋を選び、同時に指差して『ここで』と口にした。

「えっ……いいの? あんまり人気ない部屋だから、助かるけど……」

 受付の生徒が意外そうな声を上げたが、四人は微笑んで(わらって)うなずいてみせた。

 真っ先に四人が選んだのは相部屋。――壁一枚で隔たってはいるが扉で行き来できる部屋だ。上級過程に入る前の三年間でも、四人で全く同じような部屋で過ごして来たのだ。

 以前(まえ)までは「残り物」で偶然そうなってしまっただけだったが、今や色々と(・・・)相部屋の方が都合が良かったのだ。

 ただ今回、違っていたのは程近くに「お隣さん」がいるという点だった。――なぜか一部屋だけ、ぽつんと個室が相部屋のすぐ側に位置していたのだ。しかも、その「お隣さん」に……。

 ――「先客」がいる。……メレナ・スヴェイン。女生徒だろうか。エリンシェは票の名前に目をやりながら、「何か」引っかかるものを感じていた。

「さて、寮室(部屋)に行こうか。 『お隣さん』に挨拶もしないといけないしね?」

 そうこうしているうちに、ミリアがカルドと手続きを済ませていた。彼女に声を掛けられ、エリンシェは我に返り、うなずいてみせるのだった。



 心臓の鼓動が早くなっている。

 ……なぜだろう。彼女(メレナ)の名前を目にしてから、なぜだか落ち着かない。エリンシェは小さく深呼吸をしながら、独り考え込んでいた。……だけど、なんだろう。この感じ……何時(いつ)だったかと同じ(・・)ような気がする。

 ひとまず、エリンシェ・ジェイト・ミリア・カルドは荷物を寮室へ置くと、近くの「お隣さん」を訪問することにした。その間もエリンシェの心臓の高鳴りはおさまりそうもなかった。

 ――そして、いよいよ、その扉を叩いた。

 出てきたのは黒髪を三つ編みに結わえ、眼鏡を掛けた物静かそうな女生徒だった。

 エリンシェはその姿を見た瞬間、はっとする。……あの娘(・・・)だ。

「あ、どうも、はじめまして。 私達、これから三年間『お隣』同士で暮らすことになるので、挨拶に来ました。 あたし、ミリア・フェンドル」

 エリンシェが驚いていることなど知る(よし)もなく、ミリアがいつもの調子で明るく挨拶をする。

「俺、カルド・ソルディス」「僕はジェイト・ユーティス」

 その後に、カルドとジェイトが続く。

 エリンシェは黙ったまま、彼女をじっと見つめていた。


 ……卒行のあの日、彼女の「奥底」に感じた「気」はまだ其処に在る。しかも、その「気」は少しばかり強くなっているように思える。おまけに、何か……計り知れないモノをその「気」から感じた。

 だが、その「気」を抑え込むかのような……そんな強い「意志」も感じ取ることができた。――おそらく、目の前の彼女がその「気」と人知れず戦っている(・・・・・)のだ。

 ……まだ、事情は分からない。けれど、なぜだろう。目の前の彼女を見ていると、ある一つの「思い」が浮かんで来る。

(――救いたい)

 どうしようもなく、そう思ってしまうのだ。

 ならば――。

 ……きっと、長い「戦い」になるだろう。目の前の【モノ(・・)】がどれほど強大かもまだ分からないが。

 それでも――。


 「決心」がつき、エリンシェは微笑を浮かべた。

 ふと、心配そうな表情を浮かべているジェイトと目が合う。〝彼〟にも微笑んでみせながら小さくうなずいた後、エリンシェはようやく名乗りを上げた。

「私、エリンシェ・ルイング! ね、良かったら、せっかくの『隣』同士だし仲良くしない?」

 【気】を抑え込んでいたとしても、彼女は普通の「女性ひと」だった。おどおどしていたが、エリンシェの笑顔を見ると、嬉しそうな表情(かお)を浮かべて、うなずいてみせた。

「うんっ、よろしくね! 私、メレナ・スヴェイン」

 そう言って、メレナがエリンシェに向かって、手を差し出す。

 エリンシェは迷わなかった。すぐに、その手を握り返した。

(……ッ!?)

 その瞬間、少なからず「衝撃」を受けた。――彼女(メレナ)の中の【モノ】が、極上の「獲物(エモノ)」を見つけた時のように(よろこ)び、此方(エリンシェ)とらえている(・・・・・・)理解できた(わかった)のだ。

 瞬間(すぐに)、エリンシェは目の前の【()】が強大だと悟った。おまけに、かつての【敵】ゼルグとは違った特殊な【存在・・】だろう。

 けれど、エリンシェは決して動じなかった。――それでも、「決心」が揺らがなかったからだ。

「よろしくね!」

 エリンシェは何事もなかったかのように、彼女の手を力強く取り、握手を交わすのだった。

 

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