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Angelic Storia  作者: 紡生 奏音
Wing Ⅱ Episode 1
100/151

Episode 1 Prologue ଓ 幕開 〜beginning〜


    ଓ


 ――静かな森に【咆哮(・・)】が響き渡る。

 木々のざわめきに、とある【邪神】を見張るために自ら封印の身となっていたとある〝神〟は覚醒した。けれど、すぐに出ることはしなかった。息を潜めて様子を(うかが)い、相手の出方を待った。

 一歩、また一歩と、相手が近付いて来るのが理解できる(わかる)。目当ては恐らく、彼女と【邪神】の眠る石碑。問題はどちらが目的か、だ。

 やがて、【咆哮(・・)】の主が石碑の前にやってきた。乱れた長い黒髪の【オンナ】が【短刀】を手にして、石碑の前へと立つ。顔は髪で覆われているせいでよく見えなかった。

 ――【邪神】だ。だが、ただの(・・・)【邪神】にしては森がざわつき過ぎている。(いぶか)しんでいると、ふと、【オンナ】の左手にある【】が彼女の目に留まった。

 ――【漆黒の片翼】を背景に、燃え盛る紫の炎。何か……どこかで見掛けたような気がしたが、どうしても彼女は思い出せないでいた。

「……【解邪(アンタイ)】」

 【オンナ】がそうつぶやくと、【】が妖しい光を放つ。

 その瞬間、彼女は「あること」に気が付く。……そうだ、一度耳にしたことがある。――【オンナ】はただものではない、特殊(・・)な【邪神】なのだ。

 不意に、【オンナ】が石碑を振り向く。瞳は見えていないはずなのに、その目がきっちりと(・・・・・)此方(彼女)を捉えた気がした。

「……見ているな?」

 気のせいではなかった。【オンナ】がはっきりそう口にするのを聞いて、彼女は血の気が引いた。……出るか? とっさにそんな考えが浮かんだが、思い直して続けて様子を窺うことにした。――残念ながら、今の彼女に勝てる見込みはなかった。

 彼女が動かないで見て取ると、【オンナ】は鼻を鳴らした。

「まぁいい。 いずれ〝彼女〟とは対峙することになるだろうからな。 ――私の存在(こと)をすぐに知らせるがいい。 だが、今は一つでも多く『()』が欲しいのでね。 【カレ】をいただいていく」

 そう話すと、【オンナ】は勢いよく、とある【邪神】が封印されている珠を手にした。

 もちろん、彼女には止める余地はなかった。

 珠は粉々に砕け散ったが、【カレ】が消されたわけではなさそうだった。むしろ解き放たれ、何処かへ送られた(・・・・)ようだった。

 周辺に欠片が散らばるのも意に介せず、【オンナ】は(きびす)を返すと、すぐさま姿を消した。

 しばらく経ってからようやく、彼女は姿をあらわした。

〝……まずい〟

 つぶやき、彼女は少し物思いに耽る。

 ……まさか、あの(・・)【邪神】が新たな【敵】になるとは。急いであの娘(・・・)に知らせなければ。

 【オンナ】の言う通りにするのは少し(しゃく)に障るが。彼女はすぐにとある人物のところへ向かおうとしたが、ふと思い立った。……いや、一度情報を集めた方が良いかもしれない。

 一人うなずいて、彼女は空を見上げる。そして、そのすぐ後、どこかへと姿を消したのだった。


    ଓ


――あなた(・・・)わたしたち(・・・・・)の〝想い〟をかなえてくれる?


 また、そんな言葉がきこえた気がした。

 ――それは、いつか見た「夢」の最後であらわれた女性の言葉。そのあまりに強い〝想い〟に、その答えを返すことができないまま、終わってしまった「夢」。

 同じ夢ではあるが、今回の夢は以前に見ていたものとは違っているようだった。その言葉も実際に女性から投げ掛けられた、というわけではなさそうだ。

 此の夢は……何かの前触れのように思えた。――これから起きていく「何か(・・)」の。その「何か」がどのような事柄(こと)でも〝彼女〟にはとある「覚悟(・・)」があった。

 また〝想い〟には応えることができなかったが……。いつか必ず、その答えを返してみせる。


 ――そんな決心をして、〝彼女〟は「覚醒」した。



 そして、〝彼女〟は目を開ける。

 まだまどろみの中にいて、何度も瞬きをしていると、見知った顔が〝彼女〟の視界に映った。

「エリン、珍しいね、寝坊? もしかして、緊張とかしちゃった? だけど、もう支度しないと遅れるよ」

「ありがとう、ミリア」

 身を起こしながら、「エリン」と呼ばれた〝彼女〟は見知った顔――親友である彼女に呼び掛ける。

 彼女――ミリアは話しながら、〝彼女〟の荷物をまとめていたが、一度だけ振り返ると笑ってみせるとすぐにそのまま支度を続けた。

 起き上がった〝彼女〟も身支度を整え始めるのだった。


    ଓ


 ――〝彼女〟の名前はエリンシェ。周りからは「エリン」と呼ばれ、親しまれていた。

 その日は出発の日。――三年間の上級過程を修めるため、魔法を学ぶ場である学舎(まなびや)へ赴く日だった。

 薄黄の髪を肩まで伸ばし、澄み切った水色の瞳を持つエリンシェの姿はとても美しく、まるで地上に舞い降りた天使のようだった。そんな〝彼女〟はおまけに聖なる気をまとっていた。

 けれど、それもあながち間違いでもなかった。――実は、エリンシェには不思議な〝力〟が有ったのだ。

 なぜ〝彼女〟にはそんな〝力〟があるのか。その答えは未だ見つかっていなかったが、エリンシェはその〝力〟と共に生きていくことを、とある「覚悟」をした上で固く誓っていたのである。

 だが、〝力〟があることにより、困難もあった。――学舎で過ごした四年間の間、魔法の〝彼女〟自身と世界(テレスファイラ)を支配しようとする【邪神】――【敵】との戦いがあったのだ。

 長い戦いの末、エリンシェはとある「覚悟」――〝力〟を、大切なひと達とせかい(テレスファイラ)のために使い、守護して(まもり)抜く「覚悟」を決めたのだ。

 やがて無事に【敵】を倒し、封印した〝彼女〟は〝神格化〟と呼ばれる術により、人間(ひと)の身でありながら、半永久の生命を持つ、聖なる〝神〟に近い存在に至った。――そして、世界(テレスファイラ)守護する(まもる)〝守護者〟となったのだった。


    ଓ


 しばらく平穏な日々が続いていたが、先ほどの夢のことを思うと、そう上手くいかないようだった。

 けれど、目覚める前に誓ったように、何があろうと必ず、テレスファイラ(このせかい)をまもり抜いてみせる。

 ――そんな「覚悟」を固め、エリンシェはミリアと共に、学舎へと向かうのだった。

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