タイムトリップしたサーファーの女の子
私はとあるサーフィンが盛んな町に生まれ、1年前からサーフィンを始めた女子高生の藤崎夏海。
今日は、幼馴染の斉藤朋代とサーフィンをする約束だったけど、家の用事で1時間遅れるらしい。
時間が空いたので1人でサーフィンをしていると、今日は調子が悪くて何度も波をかぶってしまいました。
浜に上がって、ボードを立てて休んでいると、急に睡魔が襲ってきました。
気が付くとそこは泥の中で、横幅が3m位の水路にいました。
慌てて前に進もうとしたら、底なし沼のようにズブズブと沈んでいくのです。
岸まであと少しと思って手を伸ばすも、更に沈んでいきました。
とうとう顎まで泥に浸かったので、一か八か右足を真横に動かすと、運良く丸太に乗り上げてそれを足掛かりに前に進むと胸の位置迄出られました。
慎重に進んで行くと、泥の表面から、
「ポコポコポコ」
と、泡が出てきたのです。
何かと思ってその辺りを両手で掬うと、丸々太ったドジョウがいました。
泥の水路を何とか抜けると、大きな池に繋がっていまいた。
陸に上がれそうな場所を見付けると、そこで釣りをしていたおじさんが私を見て驚きました。
「そんな所で何してんの?」
「えーと、ドジョウを捕りにきたの」
「どうやって捕るの?」
「じゃあ、バケツを持ってこっちに来て」
おじさんには水路の脇を歩いてもらい、私が泥の中を歩きました。
泥の表面に出て来た泡を両手で掬うと、面白いようにドジョウが捕れました。
それを、バケツの近くにドンドン投げると、おじさんは大急ぎで拾っていました。
途中、おじさんが姿を消しましたが、構わず捕まえては投げました。
こんなにもドジョウがいるという事は、誰も入っていないからでしょう。
その後、おじさんが手招きしながら、
「ちょっとこっちに来て」
と言うので近寄ると、ウエットスーツの首の所に何かを入れてきました。
「えっ、何?」
と思ったところで、数秒後に足を滑らせ、
「ドップン」
と泥の中に沈んでしまいました。
ハッと我に返ると、向こうからボードを持った朋ちょが近付いて来ました。
「ねえ、夏っち~首の所に何か入ってるよ」
ウエットスーツを少し下げると、折畳まれた千円札が1枚入っていました。
それを、ゆっくりと広げると透かしの所に赤鉛筆で、
“ドジョウとり名人”
と、書かれていました。
「何これ~、マジ受けるんですけど~」
暫く2人で爆笑しました。
今までの事が嘘の様でしたが、私はその千円札を大切に持ち帰りました。




