動体視力と三半規管
「シュート、ダンスで動体視力と三半規管を鍛えましょう」
リサ師匠がそう言った。
上下左右を自由自在に動く、ちょっとハードなダンスだった。
初めのうちはついていけなかったけれど、諦めなかったらちょっとずつできるようになった。
「そろそろシューティングゲームをやって成果を確かめたら?」
封印していたゲームセンターに足を運んだ。
「あっ!」
敵の小型機が僕の背後に回り込むのを見逃さなかった。
周囲を囲まれたなら、逃げるのは上か下!
上だ!
途端に平衡感覚が試された。以前なら目を回していただろうが、今の僕はついていけていた。
「二次元から三次元へ」とリサ師匠が言っていた。なにしろ宇宙が舞台というゲームで、上下左右はぐりんぐりん入れ替わる。実際には僕はブースの中で椅子に固定されているのだから、脳の情報処理能力にかかっていた。
ほどなくして、ゲームオーバー。
だけど、スコアは格段に伸びた。
「よっしゃ!」
左手を握りしめ、肘をわきにぐいっと寄せる。
「やりましたぜ、師匠〜」
「師匠はやめんかい!」
リサ師匠が苦笑している。
「君、ずいぶん上達したなあ」
いつか、お金の無駄遣いだと言った切長の瞳の少年が居合わせて言った。
「まだまだ!」
本心からその言葉が出た。
「負けないからな」
少年は笑ってブースに入って行った。
結構やるじゃん。悔しいな。努力する前に天性の感覚でできるやつもいるんだから。
「リサ師匠〜、もっと訓練して!」
「お、やる気出た」
「どこまでもついていきますぜー」
「はいはい」
僕たちは兄貴のいるビルへ戻った。




