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最後の戦い 6


 なんてことはありません。オウルウがいかに神話の時代の力を持っていようと、それはたった一人のちっぽけな力。人間がすべての力を結集したその総和には届かないのです。かつてはアトーさんを追い詰めてしまった人間の集団と結束の力は、正しく運用すれば覇竜すら打ち破る光になるのです。

「なんだと……?」

 先ほどまでは我々と愕然としていましたが、今度呆然と立ち尽くしているのはオウルウの方でした。私は圧縮空気の噴射で接近。『正拳突揆』を放ちます。オウルウは腕を部分竜化してそれを受けました。硬質な音と同時に鱗が砕け、オウルウの腕がおかしな方向に捻じ曲がりました。陽を掴む指先が私の拳の強度を高めていました。レンクウとの戦いの際にこれがあれば、私の両腕は砕けずに済んだのでしょうね。

「オウルウ、貴様には一度訊いてみたいことがあったのだが」

 カナンの手から、嵐のように無数の爆裂呪文が放たれます。

 後退しつつ竜翼を展開し、身を守ろうとします。ですがその竜翼はところどころ鱗が剥げ落ちていて、砕けていて、爆裂呪文を受けて出血して、破れていきます。

「人と魔族で世界を二分するという取引をした賢君であったあなたが、なぜ、いつ人間を絶滅させる方針へと切り替えたのだ?」

 竜脚による前蹴りが繰り出され、私は圧縮空気の噴射で横転して回避。ついでに風圧で地面を砕き、土を巻き上げて蹴りと風の威力に乗せて打ち出す『煙砂』を使います。高速で飛来する砂が皮膚を食い破って、鱗に穴を穿ちます。流星呪文を放ったオウルウにはほとんど魔法力が残っていないようです。

 このまま畳み掛ける……!

「例え我々を絶滅させても魔族の心は内乱に向かうのではないか? あなたはそれを望むのか」

「このまま……、このまま人と魔族が永遠に殺しあうよりはよい」

 オウルウは竜化した足を大きく振って、カナンを狙います。

「極大軟化呪文」

 カナンが第三の目を開き、逆巻き蛇の杖を振り上げました。

オウルウの竜脚が、カナンの杖による一撃を受けて粉々に砕け散ります。

「どうやらこの杖には、降魔の杖に似た性質があるらしいな。使い手の魔法力を物理的な破壊力に変えることができる。そして」

 杖をオウルウに向けました。

「火竜の加護により、火炎呪文の威力をおおよそ三割ほど引き上げる」

 極大火炎呪文が放たれます。

 オウルウの全身を鬼火のような青い炎が包みました。全身が焼け焦げながらオウルウが火炎から脱出。極大旋風呪文を唱えた私が接近。カナンが同じ呪文を唱え、「怒濤野羊」左振り打ちでの正拳突揆がオウルウの顔を捉えました。首が捻じ曲がりかけて、なんとか踏みとどまりますが、右鉤突きでの正拳突揆が胸を叩きます。続けて左揚げ打ちでの正拳突揆が右わき腹を抉ります。右振り下ろしでの正拳突揆をオウルウが両腕を掲げて受けました。

 そして、その両腕がビシビシと嫌な音を立てました。オウルウの全身の皮膚が罅割れていきます。赤い血が皮膚の至るところから零れ落ちます。500年だか1000年だか知りませんが、酷使し続けた肉体が限界を迎えているのです。

「風鳴流・奥義、星天十字」

 超圧縮した風圧の剣が私の爪先から伸びてオウルウの体に縦一文字に切り裂きました。続けて大きく体を振って、飛び後ろ回し蹴りを放ちます。風圧の剣が蹴りに追随し、横一文字の斬撃。十字の傷に込められた風圧がその交点で爆発し、切り裂かれたオウルウの体が四つに分かれて地面に落ちました。

「呆気、なかったですね」

 いいえ、それはきっと結果論に過ぎないのでしょう。

 ルーちゃんがオウルウの肉体を削ってくれなかったら(またこれは私が知る由もないことでしたが次元呪文の内部の魔法力を掻き集めた勇者との激闘がなければ)、そして流星呪文のために魔法力の大半を費やしていなければ、瞬殺されていたのは私たちのほうだったはずです。

「……そうだな」

 カナンが目を閉じて、額に手をやりました。第三の目を閉じようとしていました。

 ふと私は悪寒を感じました。

 それは具体的な何かではなく、いうならば動物的な勘に過ぎませんでした。

 私はカナンを突き飛ばしました。自身もその場から逃れるように左足で地面を蹴りました。が私の足は緩慢にしか動きませんでした。戦闘中に痛みを感じることのほとんどなくなる私は、自分の足の腱がサビロによって断たれていたことを忘れていたのです。あまりに咄嗟のことだったので、圧縮空気の噴射による補助もできませんでした。

 そして、剣による一閃が私の上半身を切り落としました。

 左腕から入った刃が肋骨、肺、心臓、右腕と両断していき、滑り落ちた私の体はべちゃりと地面に落ちました。

 なにも考えるいとまもなく、私は死にました。




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