表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/72

最後の戦い 2


 門を開けると、そこは大広間になっていました。部屋全体に強い魔法力が満ちているのを感じます。

 中央に、黒い装備に身を包んだ銀髪の魔族が立っていました。私たちを認めて、腰の剣に手をかけます。「“死を呼ぶ呪文”サビロ……!?」カナンが驚愕して呟いたのと、抜刀がほぼ同時。私は左足の腱のあたりに熱を感じました。「っ!?」血しぶき。なにが起こったのかわかりませんでした。脹脛の下方が真っ二つに切断されています。「ヨヨ」回復呪文を唱えようと手を伸ばしたカナンの左手のあたりに光点が浮かびます。カナンは咄嗟に手を引きました。一瞬遅れて銀色の閃光が走ります。閃光が掠めたカナンの上腕から血が飛びます。が、私よりは軽傷でした。

 次に戦士フリューの首元に光点。

「あぶな――」

 警告は間に合いませんでした。フリューの首が吹っ飛び――ませんでした。がきん、と硬質な音がしました。首元に施された硬化呪文が、銀の閃光を防いでいます。「ああ、“死を呼ぶ呪文”ってのはそういうあれか」どうでもよさそうにフリューが呟きました。床を蹴って間合いを詰めます。剣の一撃をサビロが自分の剣を掲げて受けます。鍔迫り合い。

カナンが手を伸ばし私の足に回復呪文をかけました。動きづらいながらも風の助けを借りればなんとか動ける程度にはなります。

 正体不明の技を使う相手には、速攻で決めるべき。圧縮空気の噴射で特攻をかけようとした私を「動くな」フリューが鋭い声で制しました。私は無理矢理に空気の噴射を止めました。カナンも隣で呪文を唱えかけた手を止めています。銀の閃光が私の眼前に浮かんで、消えました。もう少し進んでいれば私は一刀両断にされていたでしょう。

「ゆっくり歩いて先に行け。こいつは俺がやる」

「……三人でやったほうが確実ではないかね?」

 カナンが自分の考えを疑うように、おそるおそる尋ねました。カナンの中の理性は三人で戦うほうが正しいといっています。私もそう思います。ですが理屈ではなく、私たちはフリューの判断のほうが優越することが直感で理解できていました。わけのわからない感覚でした。それはきっと経験値の差に端を発するものです。

ですからカナンの質問は直感を理性にすり合わせて納得するための作業でしかありませんでした。

「足手纏いだ。お前ら、どっちも“次元斬”に対抗できないだろ」

「サビロが何をしたのか、わかっているのですか」

「はぁ? 見りゃわかるだろ。『斬撃の瞬間移動』だよ」

 さらりと言われましたが、わかりませんよ……

 斬撃の瞬間移動。

おそらくは剣を振る軌道に瞬間移動呪文を発生させることで、斬撃を別の空間に飛ばしている、ということなのでしょうが。

「こいつ、初太刀でヨヨのこと殺せたぜ。なぜしなかったんだと思う?」

「足止めか」

「ああ。手負いにしておいて、残りが庇うように動く展開が一番の狙い目だったんだろうよ。いま三人ともここに残ってるのはあっちの思うつぼってわけだ。わかったらさっさといけ」

「逃げても範囲のうちでは」

「一から十まで説明しないとわかんないのかてめーらは。こいつは領域型の魔族だ。部屋の中に魔法陣を張って、その中でだけ絶対的な力を行使できるヒキコモリ野朗。理屈としては“魔法陣内のすべての位置情報を把握できるから次元演算を省略できる”ってところだろうよ。この部屋から脱出さえしてしまえばこいつの影響力は決して高くない」

 ……ほとんど初見の魔族の能力をここまで的確に見抜けるものなのですか。

そしてフリューの言うとおり、私とカナンはフリューほどの防御力を持っておらず、「次元斬」とやらに対して成す術がありませんでした。特に高機動を武器にする私は移動ルートに斬撃を“置かれる”だけであっさり詰んでしまいます。カナンにしても呪文の発生よりも次元斬のほうが速いため、その気になればさっくり首を切り落とされているでしょう。“死を呼ぶ呪文”サビロは対人戦闘において恐るべき戦力を発揮する魔族でした。

「行こう」

 カナンが言い、私は頷きます。

「念のために聞いておくが背中から切られはしないのかね」

「歩いてる分には問題ない。まともに振らせねーから」

 さらりとフリューが言います。逆に走っていれば、さっきのように自分から刃に突っ込む可能性があって安全ではない、ということらしいです。

 私とカナンは、“死を呼ぶ呪文”サビロを無視し、ゆっくりと歩いて奥へと向かいました。サビロとフリューは鍔迫り合いの姿勢から動きません。「動けない」のではなく「動かない」だけに見えました。どうやら私たちが消えるのを待っている模様。

 サビロはどうやら私たちの足止めを諦め、フリューとの決闘のほうに楽しみを見いだしたようです。

フリュー=アルドリアンは人間で最強の戦士です。レンクウに匹敵する戦力だと思います。ですが、相手は魔王級の魔族たる“死を呼ぶ呪文”サビロ。私はかつて私たちとアトーさんを逃がすためにオウルウの足止めに残ったルイ=ライズを思い出します。

 そもそも我々は戦士フリューなしで我々はオウルウに勝てるのでしょうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ