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邪神降誕 5


「貴様は、オウルウと敵対しているのか?」

「ある意味ではそうです」

「なぜだ?」

「オウルウが人間を絶滅させようとしているからです」

「話が見えんな」

「カナン、あなたはオウルウが勇者と取引をして世界が二分されたあと、魔族の側になにが起こったのかご存知ですか」

「いや、知らん」

 初代賢者が生まれたのは、三代勇者の頃だ。カナンの中には、それ以前に起こったことであるオウルウの治世についての記憶はない。そもそも賢者達の記憶は代を遡るごとに曖昧になっていく。

 ヴィストは忌々しげに目を細め「内乱です」と言った。

「我らは魔族同士で殺しあったのですよ。血みどろの戦争が長らく続きました。勇者との戦いで傷ついたオウルウはそれを納めるすべを持たなかった。多くの魔族が台頭し、勢力を争い、死んでいきました。結局のところ、我々は敵を無くしては生きて行けないのです。私は呆れました。魔族同士で争いとなるのならば、まだ人間を敵としていたほうがいい。人間は絶滅させるのではなく、管理するべきです。オウルウにはそれがわからない」

 吐き捨てるような口調だった。

 余談だがヴィストはオウルウがカ・ミルアによる呪詛に侵食されていたことを知らない。なので彼は「オウルウは内乱を収める力を持っていたのにそれに干渉しなかった」と思っている節がある。

「内乱を憂うか、レンクウの陣地を砲撃した貴様の言とは思えん言葉だな」

「おや? ご存知でしたか」

 砲撃の跡について『万魔殿』が調査を行っていた。スーライルの部屋に調査結果の書類が放り出されていた。詳細をまとめていたのはクロノだ。魔王級を上回る量の同一規格の魔法力による損壊、かつ魔法力に乱れがないので何かの機構によって打ち出されたものだと結論付けられていた。端書に「神造礼装?」とあった。つくづく勘の鋭い娘だ。

「あんなものは大事の前の小事ですよ」

 ヴィストがさらりと言う。カナンがため息を吐く。

「金の代わりだ。貴様に一つだけ救いをくれてやろう」

「はい?」

「オウルウと勇者が世界を二分したとき、人もまた内乱の時代に陥ったのだよ」

「……」

「魔族のそれとは程度こそ違うだろうがな。歴史学者によると無数の国が擁立され、マ・ルミア――現在光の街がある場所で魔物が容易には近づけぬ“ルミアの足跡”――と資源を求めて血で血を洗う争いを繰り広げた。大陸中央部の国々と光の国はそのときの勝者となった国々だ。そして辺境部、現在魔族の脅威に晒されている各国が、当時の敗者達の国々だ」

「そう、ですか」

「我々は、ともすれば皮一枚しか違わぬのかもしれんな」

 カナンは席を立った。ヴィストは長い指で顎のあたりに触れて思考に沈み込んでいる。

 売り場に戻ったカナンはヨヨを見つけて薄く安堵の息を漏らした。

「なにやってたんですか?」

「値引き交渉だ。品は手に入った。帰ろう」

 額を揉み解しながらカナンが言う。

「はぁ」

 ヨヨが気のない返事をして、二人はエルピスト商会の店を出た。



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