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せかいのおわり 2


 さてさて、勢いで飛び出してきてしまいましたがどうしましょう。他の国の王様方にも敗戦しましたごめんなさいーって挨拶して回ろうかと思っていたのですが、あの鏡を使った通信呪文はきっと他の国々にも同じメッセージを届けているでしょう。どこに行っても同じような反応なんじゃないでしょうか。

 あ、泣きそう。ちょっと泣いていいですかね。泣きますね。しばらくお待ちください。

 ……。

 はい、泣き止みました。この間十二時間ほどかかったことはお知らせしておきます。なんと、前回の四分の一の時間です! 褒めてください。ダメですか。

 とりあえず、そうですね。鉄の国に行きましょう。鉄の国は魔王に対して最も強く反発していた国ですので、きっと魔王の要求なんて跳ね除けて私を匿ってくれるはずです。はずなんです。フラグではありません。きっと匿ってくれます。

 私は瞬間移動呪文を唱えました。

 

 鉄の国に瞬間移動したのは夜になってからでした。ええ、十二時間も泣いていたせいです。衛兵さんは「今夜は遅いので明日に出なおして、おや? ヒフミ殿ですか?」といいました。はい、そうですと私が答えると、兵士さんは直ぐに王様に取り次ぐといってくれました。王様は暖かい笑みで私を迎えてくれました。湖の国の王様のように殺意や迷いはありません。純粋な好意と心配です。私はすっかり安心しきってまた泣きそうになってしまいました。王様は「お疲れでしょう。今夜はわが国でおやすみなさい。詳しい話は明日にしましょう」と言ってくださいました。

 私はふと王様の魂が欠けていることに気づきました。何かあったのでしょうか? しかしそんなことよりも私は暖かい寝床にありつけたことのほうが嬉しくて深くは考えませんでした。

 私は王様の用意してくださった城の一室で、部屋の灯りを消し、目を閉じました。

 眠れなかったけれどずーっと目を閉じていました。何も見たくなかったのです。


 朝になって目を開けてぞっとしました。悲鳴を挙げました。半狂乱になってしばらく泣き喚きました。私が眠っていたのはぼろぼろのベッドでした。周りは廃墟でした。私、ほとんど瓦礫の中に埋まって眠っていました。周りには骨がたくさんあります。人骨です。なぜこんなにきれいに人骨になっているかというと、魔物が綺麗にお肉を食べて骨から筋を剥がしたからです。食べられたあとなのです。昨夜のきれいなお城はどこにもありませんでした。

 ええ、この城、滅んでいました。夜のなんでもないような様子、あれは呪いなのです。肉体が滅んでも魂は残ります。残るんです。それを魔物が齧るんです。昼間に。

 夜になって自分がまだ生きていると思い込んでいるあの城の人たちは、齧られた魂をどうにかこうにか修復しようとするんです。で、治ったところを昼間にまた魔物が齧るんです。

 つまりここは人間の養殖場なんです。呪われてるんです。そんなところで普通に寝てたんです、私。

 ぞっとしました。

 とりあえずいま周囲に魔物はいません。どうやらここに魂を食べに来るのは、数日に一回のようです。魂がほどよく修復されてからということでしょう。「もしもし」私は人骨に訊ねました。「このまま夜になって呪いのままに生活することはできるでしょう。あなたはそれを望みますか?」答えは即座に帰ってきました。「嫌だ。魔物に齧られるのは嫌だ。あれはとても痛いんだ。それに恐いんだ。とても恐ろしいんだ」私は頷いて昇天呪文を唱えました。呪われた魂は空に還っていきました。

 私は人骨一つ一つに問いかけ、一つ一つに昇天呪文を唱えていきました。

「あんたいい人だな。お礼にとっておきの宝物をやるよ。牢に書かれた壁の文字の下を掘ってみてくれ。魔物達に盗まれてなけりゃ、いいものがあるはずだ」

 そう言ったあと空に還った魂があったので、私は牢屋に書かれた壁の文字の下を掘ってみました。だけど何も出てきませんでした。きっと魔物に盗まれたのでしょう。

 壁にはkill meと書かれていました。

 殺して欲しかったのでしょう。夜になってきっと何も覚えていない彼の魂は、自分で書いた文字に首を傾げていたでしょう。この養殖場は悲しすぎました。

 やがて魔物がたくさんやってきました。魔物はおやつの魂が全て消え去ってることに驚き、怒りました。でもね、魔物さん、私、もっと怒ってるんですよ?


 ……。


 ところで、ちょっとやりすぎました。

 瓦礫が吹っ飛んで亡くなった人たちの骨まで粉みじんです。

 お墓も作ってあげられません。

でもまあ彼らの魂はもうお空の上なので、許してもらえますよね。……よね?




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