天空城を巡る冒険 7
――はぁ……
カナンは溜め息をついた。目の前の光景が信じられなかった。
カナンはヨヨの格闘の技量をある程度信用している。上級魔族と対等以上に渡り合ってみせた彼女の近接戦闘能力は、人間の中では指折りのものだろう。
だがあのルイとかいう小僧は、どうだ。極大旋風呪文という切り札まで出したヨヨをまるで手玉に取っている。相性上の問題だというのならばまだわかるが、そうではない。現にカナンも圧倒されている。勇者のパーティとはあんなやつばかりなのだろうか。
(しかしあいつはどうやってわたしの呪文隠蔽を見抜いたのだ?)
カナンが先程放った氷刃呪文は魔法力の予備動作を読み取れなかったはずだった。上級魔族たる偽サビロに読ませずに火炎呪文を当てることができたのだから人間に読まれる道理はないだろう。この手の呪文の周辺技術において賢者たるカナンを上回るものは存在しない。少なくともあのルイが看破するのは呪文の技術以外の部分に頼ったはずだ。
(スーライルならば、魔法力に“触れる”ことのできるあいつならば近づけば気づけたかもしれない。だが直前までルイが魔法力に触れる機会はなかった。からこれは除外。
では魔法力を“嗅げる”わたしならば? いや、隠蔽している魔法力をわざわざ拡散させるような真似はしていない。わずかでも魔法力が飛散していなければわたしとて匂いに気づけない。
ならば……聴覚か? やつは魔法陣の制作、ないし設置音を聞いたのか? ならば――)
カナンは瞬間移動呪文を唱えた。ルイから死角、自分の背中側にその魔法陣を設置して手を突っ込む。
当然ルイはそのことに気づいている。が、何も起こっていないことを確認してヨヨの相手に戻る。暴風の塊と化したヨヨの相手は片手間では行えない、のだと信じたいがルイはヨヨに対して既に二、三発いい打撃を入れている。そして暴風で動きづらそうにしているわりには、一向にヨヨの打撃はルイに触れることができない。
あれで少年だというのだから末恐ろしい。
肉体の全盛期を迎えたころにあの少年はどれほどの力を手に入れているのだろう? 勇者さえ超えているのではないか? あるいは、魔王すらも。
こん。
と、ルイ=ライズの頭の上に小石ほどの大きさの氷刃呪文が落ちた。
「……え?」
ヨヨが手を止めてカナンを見る。
「たしか一撃入れれば君は我々に協力するのだったな?」
「……なにをした?」
「いやぁ、まさか名誉ある勇者のパーティの一員ともあろうきみが、約束を翻すなんてことはありはしないね?」
詭弁のような手段でしか一撃を入れることができなかった自分を自嘲して、カナンは笑みを浮かべた。
例えばいまの一撃がルイにダメージを与えることのできる規模ならば、彼はそれを“聞いて”反応することができた。小石ほどの大きさの氷粒だからこそ、ヨヨの暴風に掻き消されて彼はそれを聞き逃した。
もっとも彼の笑みは他のものから見れば勝ち誇ったような嫌な笑みにしか見えなかったのだけれど。




