天空城を巡る冒険 1
――ヨヨとカナンが麻の村に赴く数日前のことだった。
闘の国に向けて魔物の群れが進軍していた。魔王下七武衆レンクゥを首魁とする、ウォーパンサーや獣人、犀魔物や魔鳥、魔蟲などといった者共で構成された屈強な獣の兵団だった。
「レンクゥ様、人間の国は目前にございます。いかがなさいますか」
「宣戦布告を行う。少し待て」
レンクゥは犀魔物に引かせていた木組みの戦車から立ち上がった。立ち上がっただけでその体重に戦車が大きく揺れる。その真の姿は屈強な兵団を指揮するにふさわしい百獣の王たる黄金の獅子。いまは魔法力の消耗を避けるために人型の形態をとっているが、それですらはち切れんばかりの筋肉に満ち溢れた200センチを超える巨体であった。
レンクゥは二、三歩前へと歩み出る。不意に上空に異常な魔法力を感じて、レンクゥは空を見た。
「なんだあれは」
雲があった。それがほどけて、大きな石の塊が現われていく。いや、石ではない。最初に見えたのは真下に向けられた砲身だった。「総員、散れ」咄嗟にも関わらず群れの長の号令に獣の兵団は応えた。雲が払われて顕現したのは、空に浮かぶ巨大な城。
その砲身に集中した莫大な魔法力が解き放たれ、稲妻が落ちた。魔物の群れは粉々に粉砕され、焼き払われた。クレーターのような巨大な焼け跡だけがその場に残った。努力虚しくその場から半径数キロメルトルにいた魔物達は全滅していた。
レンクゥ当人とて無事かはわからない。
「ふむ、試運転にしてはいい調子ですねえ」
城から稲妻を落とした張本人、同じく魔王下七武衆のヴィストという魔族が笑みを浮かべて城の内部から眼下の様子を見下ろす。
素晴らしい威力だった。ヴィストは次代の魔王の座を狙っている。その上で次々と戦果をあげて名を轟かせている目障りなレンクゥを、彼の手の届かない上空から、一方的に、圧倒的な攻撃を仕掛けることができた。こいつはなんて素敵な玩具なのだろう。こいつを自分に遺した精霊共のなんて間抜けなことだろう。ヴィストは長い指でクリスタルの壁を愛おしく撫でた。
「いいですよ、幻惑呪文再展開。雲を装いなさい。レンクゥの足止めは充分です。闘の国は放置で構いません。もう少しレンクゥの視線を闘の国に集中させておきましょう。次の標的は易の国。ゆっくりで構いません。たどり着いたところでどうせ魔法力の充填の必要があります」
城は再び幻惑呪文によって生み出された雲に隠される。
風によって自然に流れていくような微速で動き出す。




