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エピローグのプロローグ

 ここから主人公が交代します。

 控えめにいって世界は闇に包まれました。

 魔王の復活により魔物たちが活性化、幾つかの国が陥落し黒の大地へと変貌、人間は防衛ラインを下げて強国の連合の元にそれに対抗しましたが、じわじわと押し込まれているのが現状です。

 どうしてそんな状況になったのか? というと二年前の「勇者のパーティ」の失踪を引き合いに出す人間が多いです。が、実際は彼らに頼りきりだった国々が先手をとって動けなかったことのほうが大きいでしょう。

 それほどに我々は彼らを信頼し、またその信頼の元に堕落しきっていたのでした。

 まったく耳の痛い話でした。

「なにか言い残すことは?」

 口を開きかけた足元の魔族を、途中で聞くのが面倒になった私は強く踏みつけました。プレートブーツが頭蓋骨に陥没して、人型の魔族が絶命します。これで私が倒した六十二体目の魔族でした。ええ、大絶賛取り囲まれています。私の住むお城に魔物が攻めてきたのです。

 私の名前はヨヨといい、拳の国の第二王女でした。ジョブは武闘家。父と母と弟は私の目の前で魔物に食べられました。したくもない会食によってよく肥えた父と母を食卓に並べて、魔物たちは実に美味しそうに食べていました。私が溺愛していたそれはもう愛らしい弟、ロバートは肉が硬かったらしくて適当なところで放り出されていました。無残でした。私は半狂乱になりながら飛び出して城下町に入り、襲われている街の人々を目にして我に返りました。そして自分がそこそこ程度の戦う力を持っていることを思い出して、このざまです。

 控えめにいって私はここで死ぬでしょう。魔物の数は千をゆうに超えています。そして魔法力と体力は底を尽きかけています。すーはー、と大きく呼吸をします。一丁前に怖気づいたらしく、魔物たちは私を遠巻きにしてなかなか近づいてきません。

 呼吸が整ったのでとりあえず間合いを詰めて骸骨の剣士の肩に正拳を見舞いました。ぱらぱらと崩れ、手にしていた錆びた剣が地面に落ちます。蛇人がまとわりついてきたのでその胴体を両手で掴みました。「んぎぎぎぎぎっ」渾身の力をこめて両側に引っ張ると、ぶちんと音がして蛇人の体が引きちぎれました。鳥の魔物が空中から嘴を突き立てようと襲ってきたのを裏拳で迎撃。首がおかしな方向にねじれて地面の上でのたうちます。

 不意に大きななにかが日の光を遮りました。影の中で私はそれを見上げます。全長3メルトルはある、二足歩行の巨大なトカゲでした。否、トカゲではありません。それはドラゴンと呼ばれる種類の魔物です。太陽の色の鱗を持つそれは、グレートドラゴンなどと呼ばれていたはずです。

 死出の旅を行くには丁度いい。と私は思いました。ドラゴンの肺が大きく膨らみます。彼らの最大の武器、ファイアブレスを放とうとしているのです。ファイアブレスはおおよそ3000℃を超えるといわれる地上最強の攻撃です。浴びてしまえば骨も残りません。

 無論、死ぬ運命にあったとしてもみすみすそれを受けてやるほど私はお人よしではありませんでした。旋風呪文を使い、圧縮空気を溜め込んで噴射。ブレスが放たれる瞬間に、超跳躍して空中へと回避。ドラゴンさんはジェット噴射によって高速で動いた私を見失いました。運の悪い魔物が何匹かブレスに巻き込まれて燃えています。空中から落下と同時に踵落としを繰り出しました。プレートブーツの一閃がドラゴンの鱗を叩き割って青い血が流れたものの、それだけ。強靭の首の筋肉と骨が頭蓋骨を支えていて、脳震盪さえ起こしていない模様。はじめて知りました。ドラゴンって硬いんですね。怒り狂ったドラゴンが尾を振り回して、私は左に跳んで民家の壁に着地。と、同時に泥に足を取られました。「む?」潜んでいたマッドマンが壁をぬかるませたようです。ドラゴンが腕を振ります。あ、やばい死んだなぁと思いました。爪が私の腕に食い込みました。いたい、よりも、あつい、と思いました。掛け値なく吹き飛んで地面の上を転がります。肉が捲れていたし、骨も折れていました。それでもまだ起き上がろうとした私を犬人が振り回した棍棒が頭を打ちました。再び倒れた私に魔鳥が、骸骨が、虫魔物が殺到します。普段だったらなんてことのない弱い魔物の群れが私の肉を蹂躙します。腕と足の肉がみるみるうちになくなっていきます。食べられたのです。私の肉が魔物の胃袋に入っていきます。私は丸まってお腹を庇いますが、無駄な努力でしょう。そのうち死にます。

 もっと殺せたかなぁ。悔しいなぁ。と思いながら死んでいると、不意に蹂躙が止みました。私の上に力なく倒れた魔物たちは焼けて、死んでいました。閃熱呪文によるものでした。火炎呪文でなかったのは組み敷かれた私を巻き込まないためでしょう。「きみ、生きているかね」胡乱な目で私は彼を見ました。水晶のような髪の色をした、胡散臭い顔つきの男がいました。魔法使いがよく纏う白い外套で体を覆っていて体格はわかりません。男はドラゴンを見上げて、「ふむ、あれはちょっときつい」呟き、ファイアブレスが来る前に「瞬間移動呪文」と唱えました。私を連れて、どこかの国へと逃げ出しました。



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