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盗賊 ルイ=ライズ 2


 魔王撃破のために立てていた計画のかくかくしかじかを話しました。

神妙な顔つきで聞いていたルーくんが「結界を剥がしてからのことは?」と訊きました。

「それは、えっと、流れと勢いで」

「はぁ」

 ため息をつかれてしまいました。

「ラ・ルミアとやらの魔法式を起爆させるまでの防御はどうするつもりだったんだ」

「えっと、がんばる」

「起爆に失敗した場合のリカバリは?もしも魔法力の爆発で結界が解けなかった時の離脱手段とか考えてたのか」

「なんとかなるかなと」

「はぁ」

 ルーくんは呆れかえっています。

「わかった。そのへんはまあ僕がなんとかするよ。ていうか姉ちゃん、実は僕のことあてにしてたんじゃない?」

「微妙に否定できないかもしれないこともあるのかもしれません」

「はぁ」

 三度目のため息をつかれてしまいました。

「まあ結界を解く手段を見つけただけでも大したもんか」

“ぼくは結局見つけられなかったしな”。

 ルーくんが超小声で言いました。聞こえなかった振りをしてあげましょう。……きっと自分で闇刻結界を使えるようになったのは結界を解く手段を探している際の副産物だったんですね。

「ていうか使い手として意見を伺いたいんですが、この手段で解けそうですか」

「うん。解けるよ」

至極あっさりと肯定が返ってきます。

「決行は?」

「十日後くらいですかね。実はちょっと手傷を負いまして」

「傷? 誰にやられたの?」

「七武衆の、オウルウという方です。黒の大地で」

 というかそのときのことは盗聴していなかったのですね。察するに呑んだくれて眠っていたのでしょうか。

 ルーくんが音もなくスッと立ち上がりました。

「ちょっとそいつぶち殺してくるよ。待ってて」

「わ、和解して協力していただいたので大丈夫ですよ?!」

「駄目だよ。だって姉ちゃんを傷物にしたんだよ。そいつの命でも釣り合いが取れないくらいだ」

「あ、あの、えっと、決戦前に力を使うのはまずいです」

「そうだけど」

「大丈夫ですから。落ち着いて」

「落ち着いて、って変な姉ちゃんだな。僕は落ち着いてるし、冷静だよ?」

 全然落ち着いてないです。目が据わってます。魂の色も真っ赤です。激おこしてます。

「めっ」

「……子供扱いするなよ」

「めっ」

「ちっ」

 舌打ちしながらもルーくんは腰を降ろしました。

 なんだかんだで扱いやすくてかわいい子だなぁと私は思いました。

「ところで姉ちゃん。顔色悪いけどちゃんと寝てるのか」

「え、寝てますよ」

 前に寝たのは、えっと、いつでしたっけ。

「じゃあ食べてる?」

「た、食べてますよ」

 最後に食べたのは、勇者さんと一緒に魔王に挑むちょっと前でしょうか。

 ルーくんがじーっと私を見つめます。

「倒れるよ?」

「う」

 嘘発見器ですかこの子は。心音とか諸々で見破れるみたいですが。

 ルーくんは不意に私に人差し指を向けました。

「睡眠呪文」

「……き、効きませんね」

 私の超人的な対魔法力が呪文を弾いて――

「ダメか。精神的なものが原因なんだろうな」

 ええ、見栄をはりました。別に対魔法力とか持ってないです。

「食欲ない?」

「はい」

「眠れない?」

「はい」

「十日持つかな」

「だ、大丈夫ですよきっと」

「相手は魔王だから万全を期して挑むべきだと思うよ」

「うう……」

「僕、ちょっとルミアのところに行ってくるよ」

「はい……、え?」

 いまさらっとすごいこと言いませんでした?!

 ルーくんは空中に魔法式を展開しました。次元演算を行って魔法力を錬って、それから。

「瞬間移動呪文」

 ルーくんはその場から消えました。

「あの子、瞬間移動呪文できたんですか」

 私のアイデンティティ……。



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