ただのDT、初陣に出る!
DT、それは童貞。
DT、それは魔法使い。
DT、それは賢者。
ネット用語『DT』
その言葉が、別世界では
世界の命運をかけるほどの者だと
我々はまだ知らない。
神童渡よ、今こそ覚醒のとき!!!
DTとは。
ネット用語であり、童貞の略語。性的関係を今まで一度も持ったことのない人の総称。30歳を過ぎると賢者とよばれる。(ニコニコ百貨辞典より)
俺は言葉が出なかった。ジャンヌ、と名乗った聖女が、まさか『DT』と言う単語を使うだなんて....。てか、普通言う!?言わないよな!?
「え、ええと?今なんて??」
「貴方はDTなのですか?」
聞き間違いであって欲しかった....
どうやら俺も覚悟を決めないといけないようだ。
「はい、確かに俺はDTで間違いない、です....。」
そう答えた。この時はまだ知らなかったんだ。
《DT》という言葉がこの世界では違う意味なのだと。
突如、ジャンヌは後方に下がる。一瞬のことだった。え?困惑。俺を見る目が鋭いものに変わる。
否、見ていたのは俺ではなかった。
鏡に映った俺の背後に、全身装甲の騎士が刀を降り下ろそうとしている!
「うわぁぁぁ?はぁぁぁ!!???」
絶叫した。俺になんの恨みがある??
たった今黒歴史晒しただけだよね?
てか、今転移したばっかだよ俺!?
慌てて右に避ける。刹那、轟音と共に床が砕けた。
さっきまで俺が立っていた場所にクレーターができていた。......こいつ、マジだ!!
騎士はこちらに向き直った。
そして再び刀を降り上げる。
慌てて避けようと後ろに下がる。俺は一応昔剣道をやっていたことがある。そのときの経験がこんなところで生きるなんて....!
騎士が刀を降り下ろす。....よし!この間合いなら当たらない!!いくらリーチが長かろうが後ろに下がれば当たらない。安堵仕掛けていると..
「シンドウ!!横に避けて!!!」
「え?」
ジャンヌが叫ぶ。その言葉に反射的に従う。
しかし、一瞬だけ遅かった。
刀は俺の胸から腹を切りつけていた。
「か、ハァァッ....!!」
内臓こそ届いていないもの、鮮血が飛び散る。
激痛が走る。
「大丈夫ですか!?シンドウさん!
....貴方、魔王軍のDTですね?」
俺と鎧の騎士の間にジャンヌが割り込む。
「いかにも!!我は《接近》の能力をもつDTだ!!!異世界からの転移反応を嗅ぎ付けてきたがまさかこんなにも弱いとはな!!」
騎士が罵る。....待て?今DTって言った??
血濡れの体を起こす。
と同時にジャンヌと騎士は打ち合う。
剣戟が響く。お互いに一瞬も引かない激しい攻防!
騎士が振りかぶる。ジャンヌは右に避け、回避した。直後、後ろの壁が破壊された。....5メートルも離れた壁が。
ジャンヌが吹き飛んだ。....え?
剣を避けたのを見ていた。だが。
だが、彼女は後ろに吹き飛んだ。
修道服が破け、白い柔肌に血が流れる。
たわわな胸が見えそうなほどに修道服は
切り裂かれていた。....なぜ?
「ジャンヌぅぅ!!」慌てて駆け寄る。
「ハァ、ハァ、ハァ」
苦痛を叫ぶ彼女。心臓が高鳴る。
彼女を起こそうとする。が、どうやらもう手遅れ
らしい。刃が、切り傷が心臓まで、達していた。
「おい!しっかりしろ!!ジャンヌぅ!!!」
俺は叫ぶ。しかし、彼女は返事をしない。
騎士はそのまま彼女へと歩む。どうやら
彼女に止めをさそうとしているらしい。
やめろよ....?ヒロインが一話で死ぬなよ?
騎士は剣を振りかぶる。ジャンヌはこのままだと
死ぬのだろうか??立ち向かおうとするも、勝てる要素がない。くそ、俺はなにもできないのか?
....あのときみたいに!!
「終わりだぁ!ジャンヌぅぅぅぅ!!!」
騎士は叫ぶ。俺は無意識に彼女を庇う。
俺には剣もなく。力もなく。勇敢でもない。
だが、やるしかない。やってやるよ!
モテモテになるためだったら!!
ヒロインを守るためならばこの命!
捨てたって惜しくはない!!!!
俺は!!美少女のためなら死ねる!!!
騎士は迷いなく刀を降り下ろす。
瞬間、鎧が、騎士の鎧が真っ二つに割れた。
鎧のしたから、やや痩せぎみの男が現れた。
「は、はぁ??」
騎士は困惑する。それもそうだろう。
彼はおそらく、振りかぶれば距離に関係なく
刀で切りつけるという能力なのだろう。
後ろに下がっても切られたとき、ジャンヌが吹き飛ばされた時に確信した。
だから。だから、彼の能力を。
《接近》を奪った。
「そんな??能力を?『運命』を奪った??
あり得ん!!あり得ない!!!」
「はぁぁぁ!!!!」
手刀をつき出す。すると、騎士は吹き飛んだ。
やはりそうか。距離に関係なく。
彼は攻撃できたのだ。
俺は攻撃される瞬間にジャンヌからある言葉を
言われた。小さい声だったが、なんとか聞き取った。
「貴方なら....シンドウさんなら....!
シンドウさん!....彼の....あいつの能力をイメージして!!!」
そして彼の能力をイメージし、刀を避けて、
手を振り下ろしたというわけだ。
「そんな、この俺が!!お前ごときにぃ!!」
落ちていた剣を拾う。ジャンヌの剣だ。
重くて頑丈そうなそれを、俺は男に向かって
振りかぶる。....終わりだ!襲撃者ぁ!!!
「もう結構です!シンドウさん!!
ジルももう止めなさい!!!」
ジャンヌは立ち上がる。
服こそ破けて胸が見え隠れしているが。
完全に無傷だった。
「合格です!!シンドウさんとなら、『魔王』を倒せます!!ようこそ!『聖霊騎士団』へ!!!」
は??え???
「騙してすいません。そちらは私の仲間の
ジル....ジル ド レェくんです!!貴方が
本当に『DT』かどうかを試したかったのです!」
あ?ぁぁぁ?
当然だが、俺は混乱していた。
ジャンヌが俺の傷に触れる。
すると、一瞬でジルにつけられた傷が治った。
「....つまり俺は力を試されていたのか?」
「......すいません。やはり許してくれませんよね」
「一つだけ質問してもいいか?」
はい?とジャンヌは首を傾ける。
「『DT』って....なに?」
ジャンヌはキョトンとした顔で俺を見つめた。
「?『DT』は貴方もさっき使ったではありませんか??ジルの能力を、《接近》を支配してましたよね?」
俺は気づく。この世界での《DT》は、童貞って意味じゃないらしい。異能力者のことを指すらしい。
そんなことよりと、ジャンヌ。
「やっぱり怒ってますよね?」
怒っていないと言えば嘘になる。
「まぁ、もうしなければ良いから。そんなに
謝らなくてもいいよ?もう傷も治ったしな。」
俺は微笑んだ。すると、ジャンヌは頬を赤くして、
いきなり俺を抱きしめた。え?
「えっと、こんな体ですいませんが....
これで許してもらえませんか?」
なんでこうなった!!?
互いの胸が触れあう。柔らかくて暖かい。
今まで一度も味わったことのない感触だ!
駄目だ、気持ちいい。この胸は人を駄目にする。
童貞にいきなりこれはきつい!!
これ以上は俺の理性が押さえられない!!
「うん、許す!!許すから!!」モミッ
うん?突き放す勢いで手が柔らかいものに当たる。
「ひぁぁぁぁぁ!!!」
教会に再び悲鳴が上がった。
初めてのバトル編!!いかがでしたでしょうか?
見よう見まねで書いたので読みづらかったかもしれません。
さて、神童の能力とは?聖霊騎士団とは?そして、この世界とは?
次回、「神童、仲間と共に旅に出る。」
お楽しみに!!