ただのDT、聖夜の奇跡?
彼はDTであってもただの童貞ではない。
モテモテになりたい。
サンタクロースはそれを叶える。
大きな試練を代償に。
今日はクリスマスだ。街はライトアップされ、豪華な料理が食卓にならび、サンタがプレゼントをもって子どもを訪れるという幸せな日なのだが....
「『クリスマス?俺彼女居るし。』だの『え?お前大学生にもなって彼女いないの!?だっさw』だの馬鹿にしやがって!!恋愛経験?ある分けねぇだろそんなの!!彼女?プレゼント貰ったらすぐ態度変わるだろうが!夢見んなけしからん!!....あーあ、俺も彼女欲しい。」
ぶつぶつと独り言をぼやきながらイルミネーションツリーのベンチに座っていた。ツリー周辺にはリア充が蔓延っていたが俺がにらめつけるとそそくさと何処かに行ってしまった。いい気味だ。そう思うと同時に悲しみが胸から込み上げてくる。
俺、神童 渡は生粋の童貞だ。幼少より女子とは距離をおかれている。理由は不明だが女子に話しかけても二つ返事で流されるし話に交ざろうとするも、俺が話に入ると即座に解散となるという具合だ。だから高校のとき、『貞男』という不名誉なあだ名を頂いた。これにより俺のフルネームは神童貞男と呼ばれることに。これが広まり、隣になった女子が悲鳴を上げるレベルにまで落ち着いた。だがまぁ、彼女ぐらい、大学生になればできると思っていた。
しかし、現に一人、イルミネーションツリーの下で彼女持ち(リア充)をただ罵っていた。いつの間にか周囲には誰もいなくなっていた。どうやら俺の魂の叫び(独り言)が効いたらしい。ざまぁw......だがいくらなんでも一人は寂しいぞ?某国民的野球アニメの主人公だって泣くレベルだぞ?
「おいサンタ、本当に入るなら俺の願いを叶えろ!俺をモテモテにしろぉ!!!」
酒の勢いもあってか、生まれて初めてサンタクロースとやらに願った(叫んだ)。あれは5歳の頃だった。父親が
「プレゼント買うのめんどくさいからこれで好きにしなさい。」
とポケットから財布を出して5000円くれた。そのときにこの世には秒速2000kmで世界中の子どもたちに一晩でプレゼントを配る老人が居ないことを悟ってしまった。つまりこの叫びはただやけになってしまっただけだったのだ。本当に叶ってしまうなんて思ってもなかった。
「よろしい!ならばその願い聞き入れよう!!」
目の前に真っ赤なローブを来た人間が立っていた。顔は見えないな。
「その願い、確かに叶えよう。ただひとつ、条件があるがな。」そいつは続けた。
「え?条件......?てかあんた誰だ?」俺は聞き返す。
「そうだ!お前にはこことは違う世界にいってそこで魔王を倒せ!さすれば汝の願いを必ず叶えよう。」
....なんだ?このRPGみたいなシチュエーションは。コスプレなのか?こいつ、キャラ移入しすぎだろ!!
「ああもうモテるならなんでもしてやんよ!!!」
怒鳴りかえした。するとそいつは手を俺の頭にかざした。
「よし、じゃあ決まりだ。」
突如、世界は暗転した。
......
目を覚ませばそこは、教会の様なところにいた。目の前には鏡がある。茶髪に長身、やや痩せぎみで見るもの全てが恐れるであろうつり目。うん、俺だな。つり目、これがモテない原因のひとつだろう。最近、通りすがりにハンカチを落とした女性がいた。それを俺が拾って渡す。女性はお礼を言おうと振り返る。するとそこにはにらめつけている長身の青年が。女性は逃げ出してしまった。それを見送って、自分の目付きの悪さに気がついて、ため息をついたのはいい思い出だ。
......こういうのを異世界転移っていうのだとクラスメイトの小田倉から聞かされたことがある。ある日突然違う世界に飛ばされる、ラノベ?の王道だと小太りの腹をつきだして誇らしげに語っていた。ちなみにそいつにも彼女がいた。......チッ。
「貴方が法王様がおっしゃった勇者ですか??ようこそおいでくださいました。」
後ろから声がする。凛々しくも美しい声だ。
振り返ると案の定、そこには美しい聖女がいた。ブロンドの髪、陶器のように白い肌、瑠璃色の瞳、そしてよくくびれた体をもったいわゆる『清純派金髪美少女』と言うやつだろう。小田倉よ、お前の知識がこんなことで役に立つとは......。
「はぁ、俺は....」
「何も言わなくても全てわかっています。貴方は法王様が選ばれた異世界の勇者なのですね?赤いローブを着ている人に会いませんでしたか?」
「あ、ああ。あいつのことか?ただのパーリーコスプレイヤーじゃないのか?」
「ぱ、ぱーり?え、ええっと、法王様は私たち聖堂教会の神父の長です。一番偉くて、名をニコラと言います。」
「に、ニコラ!!?」
「え、ええ。この世界は貴方の住んでいた世界とは違う世界なのだと思います。貴方の世界での言葉とこちらの言葉は少しばかり意味が違うのでは?ニコラというのはこちらの世界ではただの人名でしかないのです。あ、申し遅れましたね。私の名前はジャンヌ・ダルク。ジャンヌと及び下さい!」
凛々しい表情から可愛らしい表情へと変わる。ジャンヌ ダルク。現実では田舎の農民の娘だったが神の啓示を受けて旗を取り、100年戦争を終わらせた救国の英雄だ。なるほど、聖女にぴったりな名前だ。
こんなことを考えていると彼女はそうだと何かを思い出したように再び口を開いた。その一言は聖女の口から出るとは夢にも思わなかった。だが、このひとことが全ての始まりだったのだ。
「改めて問います。貴方は勇者となるDTですよね!?」
「でぃ、DT!!???」教会に悲鳴が上がった。
今回はここまで!
童貞代表として僕は童貞が異能力を使って世界を救うみたいなのを書きたいなぁっておもってました!!ですので、これからもお付き合い下さい!!
次回、遂に異能力バトル!!?
「ただのDT、初陣に出る!」をお楽しみに!