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青年期1 -ランプレヒトとの出会いを回想する-

 七色に歪んだ空に太陽が浮かんでいる。あの環境制御装置が生み出す力場が熱を閉じ込めることで、<ヌクオロ>生物群系(バイオーム)は成立している。

 ナルは久しぶりに海沿いの岩場を歩いてみることにした。メルト目当ての観光客に観光省公認の売人を紹介した帰りだ。もちろん仲介料は観光客と売人の両者から貰っている。

 岩場を歩くとおかしな違和感があった。何かが違う? しばらく歩いていてそれは自分がサンダルを履いているからだと気付いた。

 ナルが<ホワイト・クラブ>を求めて毎日のように岩場に来ていた幼少期、あの頃はいつも裸足だった。

 あの時とは何もかも違う。もう、海に飛び込むようなことはなくなったし、身体も大きくなった。あの時の私の手首には自分でつけた醜い傷跡はなかった。

 岩場を歩いていると彼――ランプレヒトとの出会いを思い出す。彼と出会ったのもこんな太陽が照りつける岩場だった。

 そのとき、ナルの頭の中を甘い香りが通り過ぎた。

 太陽とトウモロコシ畑の香りだ。

 そのどちらの匂いもナルは嗅いだことがなかったが、ランプレヒトはコロンの香りをそう説明した。初めて会ったときのことだ。

 ランプレヒトとの出会いを思い出したことをきっかけにそれに連なる出来事がナルの頭の中でフラッシュバックした。

 ランプレヒトと一緒に泳いだこと。姿が大きく変わった彼との二回目の出会い。色々なことを話した。ビルの屋上に経っている彼。飛び降りる。腹部を突き破る銅像の頭。彼のお付きの医者は残念そうに頭を振る。残念ですが――彼を助けることはできない。

 ナルは自分の呼吸が荒くなっていることに気付いた。大丈夫。全ては過ぎ去ったことだ。

 意識してゆっくり大きく息を吸い込んで、それを同じくらいの時間をかけて吐き出す

 ランプレヒトのことを思い出すと胸が温かくなる。おそらく――あの出会いは初恋だった。

 ナルは今度は一連の出来事を、順番にゆっくりを思い出すことにした。おそらくそれが自分に必要なことだと感じていた。

 最初の出会いは、<ホワイト・クラブ>を取ろうと海に来ていたときのことだった。


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