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歴史短編小説群

比良の蛇替え

作者: 塔野武衛



 未だ寒さが色濃く残る一月の中旬。雨の降る黄昏時を、一人の男が慌てた様子で身震いしながら駆けている。雨を避ける道具を持参していなかったらしく、急いで目的地に辿り着く事以外頭にないように見えた。

 この辺りは清洲城より五十里ほど東の比良城主佐々家が治める土地であるが、南北を貫く堤の東側には広大な芦原が広がっている。そして西側には『あまが池』と呼ばれる池がある。ちょうど男はその辺りに差し掛かった所だ。

 不意に男の足が止まる。男の視線はある一点に注がれていた。既に暗くてよく見えないが、一際大きい黒いなにかがそこには居た。胴体らしき部位は堤の上にあり、首らしきものは堤から伸びて今少しで池に入らんとするかのように見えた。

 そしてそれは、おもむろに首を上げる。まるで鹿のような奇怪な顔だ。その目は星のように輝き、開かれた真っ赤な舌は人間の掌のようだった。

「ひ……」

 男は後ずさりしながら一つの伝説めいた噂を思い出していた。この『あまが池』には、主とも言うべき恐ろしい大蛇が住んでいるという噂を。そんなものは所詮は古めかしい言い伝えに過ぎないと男は思っていた。だが今自分が見たそれは、言い伝えの化け物そのものにしか思えない。暗がりゆえにはっきりとは姿形が見えないのが、この際幸いだった。男は脱兎の如く元来た道を走り去っていった。




「……比良の辺りに大蛇が現れた、だと?」

 青年の怪訝そうな問いに、報告した男は気圧されたようになる。二十二、三歳と思しきその青年は美しいながらも癇の強そうな顔立ちで、眉間には皺を寄せている。

「は、ははっ。比良周辺の村々はその大蛇に恐れをなし、村人達の往来はぱたりと途絶えているとの事です」

 その言葉に、清洲城主織田信長の眉間の皺は一層険しさを増した。

 例の男は命からがら大野木に逃れ、人々に大蛇の話を伝えた。それは忽ち尾ひれを伴って尾張中に広まっていった。何しろその化け物が現れたのは堤の上を走る街道の只中であり、嫌でも人々はそれを意識せざるを得なかったからだ。『あまが池』周辺の村々は恐怖し、大蛇が出るかも知れぬ街道には誰も寄り付かなくなってしまった。

そして遂には、清洲城下にまでこの話が達した。一月も下旬に達する頃の事だった。

「この一件について、内蔵助から何事か報告は来ておらぬか」

「いえ、一向に……数日前に病で臥せっているとの報告が来て以来、なしのつぶてでございます」

 内蔵助とは佐々成政の事だ。彼は佐々家の末弟であるが、信長が特にその才覚を評価している男である。だが家臣の返事を聞いた信長の表情は、更に険しいものになった。

「その大蛇を目撃したと申す者は誰だ」

「聞く所によれば、安食村福徳郷に住む又左衛門なる者だそうです」

「その者を我が前に召し出せ。わし自らが話を聞く」

 家臣は驚いたように目を瞬いたが、信長の鋭い眼光には抗する術もない。後日、又左衛門は信長に呼び出され、極度の緊張に晒されながらも自分の見たままの話を聞かせた。話を聞き終えた信長は腕組みをしながら暫く考え込み、又左衛門を始めとする居並ぶ面々は固唾を飲んで信長の言葉を待つ。

「触れを出せい!」

 いきなり発せられた甲高い大音声に、皆がぎょっとして信長を見る。

「明日、わし自ら『あまが池』の蛇替えを行う! 比良郷、大野木村、高田五郷、安食村、味鏡村の百姓どもに水替え釣瓶、鋤、鍬を持ち寄って参集せよと布告するのだ!」

 信長の大声を聞き及んだ家臣の何人かが大慌てで動き出す様を、又左衛門は呆然と眺める事しか出来なかった。




 翌日、比良『あまが池』には異様とも言える光景が広がっていた。周りは集められた農民達と数百を数える釣瓶で埋め尽くされている。農民達の顔は困惑と不安に彩られ、何とも言えぬ重苦しい雰囲気を醸し出していた。

「よう参った、皆の者。既に承知していようが、近頃この池に奇怪なる大蛇が棲んでいるとの風聞が絶えぬ! そこで此度は皆の力を借りて池の水を汲み出し、大蛇が居るか否か白黒をつけようと思っておる。大儀ではあろうが、皆力を合わせて事を為すのだ!」

 信長が全員に聴こえるように、大声で叫ぶ。こういう時、彼の女のように甲高い声は大いに役立つ。誰もがこの声を聴き、雑談がぴたりと止んだ。彼の声が余すところまで響き渡った証拠である。

「内蔵助はどうした」

 それを見計らうように信長が小声で従者に尋ねる。

「……未だ病が癒えぬ故、立ち合う事は出来かねると返事がございました」

 その答えに、信長の眉間が一瞬険しくなる。何も悪い事をしていない筈の従者をして、一瞬魂が凍るような思いがした。

「たわけが」

 舌打ちと共に、ぽつりと呟くような声が漏れる。だが次の瞬間には、腹の底からの大声が池の周りを包み込んでいた。

「では早速、池の水を汲み出すぞ! 俺も加わる故に、皆、気張って働けい!」




「……殿御自ら蛇替えを行うと? それは確かなのか、太郎左衛門」

 比良城の一室。布団の上に座す若者と年かさの男が額を突き合わせるように話をしている。

「左様。既に比良周辺の村々に動員が掛けられ、我ら佐々党にもお手伝いの人員を出すようにと命令が出ております」

 佐々党の家老格たる井口太郎左衛門の返答に、佐々成政は複雑な表情で黙り込む。だが顔色そのものは必ずしも悪くはなく、病人のそれには見えない。

「……わしにも立ち会うようにと命令が出ていたのではないのか」

「御意。されど今までと同じく病を理由に出頭は拒み申した。お手伝いの命令については承知致しましたが……それで宜しゅうございますか」

 太郎左衛門の問いに、成政は無言で頷く。

「それにしても面妖な事をなさるものです。やはり我らの逆心を疑っているのではありますまいか。勘十郎信勝様に寝返ると」

「太郎左衛門」

 滅多な事を言うな、とばかりに成政が強い口調で咎める。だが太郎左衛門はそれに構わず、まくし立てるように続けた。

「そもそもたかが大蛇の噂如きで何故清洲の大殿自らが、比良周辺の人々を動員して蛇替えなどを行う必要がありましょうや。確かに奇特な振る舞いの多い御仁とは聞いておりますが……やはり殿に、詰め腹を切らせるおつもりなのでは」

 太郎左衛門の言葉を、成政は渋面を浮かべながら聞いた。だが強く否定する様子もない。彼自身、その疑いを抱かずにいられぬ心境だったからだ。この時期、信長とその実弟勘十郎信勝との関係はのっぴきならないものになっていた。巷ではいつ信勝が叛旗を翻すかの噂が流れているほどだ。そして世間にはもう一つの噂が流れていた。佐々党が信長を見限り、信勝の側につこうとしているという噂だ。

 成政ら佐々党の主立った人々はそれを肯定も否定もしていない。あえて噂を黙殺しているのは、彼らが去就を迷っているからだった。というのも信長の同盟者である斎藤道三は既に押込隠居によって国内での影響力を失っており、その子義龍が美濃の実権を完全に掌握し、信長と手切れに及ぶのは時間の問題と目されていた。つまり信長はもうすぐ孤立無援になろうとしているのだ。それで果たして信長はその身代を保てるか。そして彼に従う事に未来はあるか。小なりとはいえ領地持ちの武将にとっては、思案投げ首にならざるを得ない。成政が病と称して城から動かないのも同じ理由からだった。

「……場合によっては、こちらも対応策というものを考えねばなりませんぞ」

 対応策という言葉に、成政が眉をひそめる。

「殿を仕物に掛けようと申すのか、そなた」

「やらねば佐々の家が潰れるというのなら、やるしかござらぬ」

 太郎左衛門の顔つきは真剣そのものだ。自分の考えを言わねば気が済まぬのだろう。成政は大きく溜息をついた。

「……存念を申してみよ」

「清州の大殿はかねてよりこの比良城を小さいながらもよき城と言っておいででした。恐らく蛇替えが終わった後、様子を見るのも兼ねて城に訪れる事でございましょう。その時はそれがしが殿の代理として案内役を務め、まずは小舟を用いて城のかけりをご覧候えと申し上げます。大殿としてもどうせ見るなら隅々までと考えるでしょうから断りはしますまい。その際それがしは衣服を腰高にはしょり、脇差を小者に渡して舟を漕ぎます。清洲の大殿がどれだけの供をお連れになるかはわかりませんが、まず僅かな小姓のみでしょう。万一歴戦の武者が幾人か居たとしても、隙を見て懐中の短刀にて大殿を刺し殺し、そのまま水中に潜って仕物を確実なものと致します。その後は速やかに勘十郎信勝様と連絡を取り、これに服するが最上の策かと」

 太郎左衛門の話を聞き終え、成政は複雑な面持ちで考えを巡らす。無論こんな事態にならないのが一番に越した事はない。彼自身、信長に対する忠誠心がなくなった訳ではないのだ。だが万一太郎左衛門の懸念が現実なら、座して滅びを待つ訳にもゆかなかった。家の存続は主家への忠誠に遥かに勝るのだ。

「……蛇替えの手伝いに派遣する者に、それとなく殿の様子を探らせよ。そなたの策を用いるのはその報告を待ってからでも遅くはない」

 成政の言葉に、太郎左衛門は黙って頷いた。




 作業が開始されてから二刻が経過していた。日は高く上がり、作業に従事する者達は滂沱の如き大汗をかいている。未だ冬の残滓が残る季節であっても、二刻も力仕事をしていれば汗はかくし、疲労も大きくなる。

 池は思いの他大きい上に深く、大人数で時間を掛けて作業しているのにも関わらず、未だ七割方の水が残っている。農民達の疲労の色も濃く、作業効率は目に見えて下がる一方だった。

「……埒が明かぬ」

 信長が苛立たしげに漏らした。彼も率先して作業に従事していたので大汗をかき、冬だというのに既に上半身を剥き出しにしている。その体からは蒸気すら吹き出していた。

「皆、作業の手を止めよ!」

 いきなり発せられた大声に、農民達はのろのろと作業を止めて信長を見る。遠くまで響く信長の大声は、いきなり発せられると誰もが驚くものだが、それすらない所に彼らの疲労の大きさが窺えた。

「皆、今までの作業大儀であった。皆のお陰で少なからず水を掻き出す事は出来たが、これ以上水かさが減る事は恐らくあるまい。そこでこの俺自らが池に潜り、大蛇の有無を確かめようと思う!」

 最後に発せられた言葉に、俄かにどよめきが起こった。家臣達の顔も蒼ざめている。

「お、お待ち下さい! もし本当に化け物のような大蛇が居たなら、殿の御身が……」

 信長を制止しようとした家臣の言葉は、最後まで紡がれる事はなかった。信長の鬼のような視線が自分に注ぎ込まれたからだ。

 皆が呆然とする中、信長は褌を除く全ての着衣を脱ぎ捨て、脇差を口にくわえるや否や、何の躊躇いもなく池に飛び込んでしまった。信長が水練の達人である事は有名だが、それにしても奇怪な化け物に遭遇すればただで済むとは思えない。

 信長の潜水は三度に渡って長く続けられた。その度に皆は息が止まりそうな思いに晒される。まるで自分達が池に潜っているような錯覚すら覚えた。

「鵜左衛門!」

 三度目の潜水を終えるや否や、信長は荒い大声で家臣の名を呼んだ。

「俺一人では探し切れぬ。お主も水練の達者なのだから、俺と共に池に潜れ!」

 鵜左衛門は一瞬躊躇ったが、慌てて着衣を脱ぎ出す。主君が率先して身を危険に晒しているのに、部下がそれを避ける事など出来る訳がない。再び水に潜った信長に続く形で、鵜左衛門も水に潜った。再び二度、三度と繰り返し池をくまなく探し回る。今や誰もが固唾を飲んでその顛末を見届けようと食い入るように見つめていた。

 幾度目かの潜水から戻った信長と鵜左衛門が、再び潜る事はなかった。彼らは小声で確認するように二、三言葉を交わした後、小さく頷いて共に池から上がった。

「大蛇など、何処にもおらぬ」

 皆の視線が二人に集まる中、信長は再び大音声を上げた。

「俺とこれなる鵜左衛門の二人、隅々まで探す為に幾度も池に潜った。それは皆もしかと見届けた事だろう。だが池の中には蛇の影も見当たらなかった。異形の化け物などおらんのだ。いつぞやの黄昏時に何某が見かけたそれは、単なる見間違いに過ぎぬ。皆が心配に思う事は何もありはしないのだ!」

 信長の安全宣言にも似た言葉に、反対の意を示す者は居なかった。ここまで入念に、しかも君主自ら身を危険に晒して調査する様を皆が目撃した以上、異論の差し挟まれる余地もない事だったのだ。

「それでも、或いはまたぞろこのような騒ぎが起こらぬとも限らぬ。その時はまず比良城の佐々内蔵助成政に届けを出し、奴が何もせねば清洲に訴えを出せ。さすれば再びそなた達の力になろう。くれぐれも心を乱し、あらぬ振る舞いを為すでないぞ!」

 再び、信長は辺りを見回す。心なしか皆の顔が晴れやかになったように見える。今まで決して見る事の出来なかった顔だった。それを見た信長は、厳粛にすら思える厳しい表情を緩めて、満足気に笑みを浮かべた。

 その後粛々と用意された道具の後片付けが行われ、皆は口々に信長に感謝の言葉を述べて各々の帰途へとついた。そこに不平や不満の類は一切感じられなかった。安堵の気持ちだけがあった。それは彼らの大蛇に対する恐怖の深さと今回の蛇替えで得られた安心を象徴するような光景と言えた。

「用は済んだ。我らも清洲に戻るぞ」

 それを見届けた信長が常の表情に戻って言い捨てるのを、佐々党より派遣された手伝い人は困惑と共に聞いた。その視線に気付き、信長が手伝い人に正対する。

「お主は佐々の人間だったな。何事かわしに用事でもあるか」

「は、ははっ。実の所我らはてっきり、この蛇替えが終わった後に比良の城にお越しになられるものと思い、大殿をおもてなしすべく準備をさせて頂いたのですが……」

 動転のあまり、ひどく直接的な言い方になってしまったのに気付いて手伝い人は後悔の念に駆られた。余計な事を言ってしまったと。

 だが当の信長は、小さく首を傾げるだけだった。

「何故わしがわざわざ比良の城まで出向く必要がある? わしはあくまで蛇替えに来たのであって、比良の城を見に来たのではないぞ」

 不思議そうな口調で発せられた言葉だ。そんな事は今まで考えもしなかったと言わんばかりである。手伝い人は呆然とした面持ちで立ち尽くす。それを見た信長は一瞬鋭く目を光らせた後、大きく息を吐いた。

「……内蔵助に伝えよ。くだらぬ事に心を砕いている暇があったら領内の事にもっと気を配れとな。その為にもさっさと病を治せとも伝えておけ」

 そう言うなりひらりと馬に跨るや、信長は供を引き連れて本当にその場から駆け去ってしまった。その後ろ姿を、手伝い人達は呆然と見送るしかなかった。




 手伝い人から『蛇替え』の一部始終を聞き終えた成政と太郎左衛門は、互いに渋面を突き合せて暫し黙りこくった。

「……そなたの思う通りには、ならなんだな」

 成政が絞り出すように声を発したのは、実に四半刻も後の事だった。太郎左衛門は答えない。答えられなかったのだ。成政自身、やっとの思いで言葉を絞り出したようなものである。それだけ、二人が受けた衝撃は大きかった。

 信長が蛇替えなどという大袈裟にも思える事業を起こしたのは、成政に詰め腹を切らせる為の口実でもなければ、まして大蛇への好奇心などではなかった。比良周辺の民衆を鎮撫する為にこそあった。

「くだらぬ事に心を砕いている暇があったら領内の事にもっと気を配れ」

 信長のこの言葉は、成政の心に重く深く響いた。信長はこう言っているのだ。比良での問題は佐々が解決すべき問題の筈だ、と。実際その通りだった。本来だったら清洲にまで噂が届く前に、佐々家で処理すべき問題だったのだ。それを佐々家の存廃に思いを巡らすあまり、一週間以上にも渡って病を理由に放置し続けた。その犠牲になったのが民衆達だった。言うなれば大局の観察に忙殺されるあまり足元を見損なっていたのだ。

(やはり、あの御仁は只者ではない)

 信長は成政より遥かに大局に目を配らねばならぬ身である。美濃における不穏な情勢、弟信勝とその与党の不穏な動き、更には今川や敵対する織田の同族達の動向。それら全てを、神経質に注視している筈だった。それでも彼は、民衆を鎮撫するという領主の役目を疎かにする事はなかった。それは信長という男の懐の深さと確かな見識を示すものと言えた。

(もしもの時は、我らの身の振りをしかと決めておくべきだろうな)

 近い将来起こるだろう内訌を思い描きながら、成政は天井を睨むように見上げていた。




 その後『あまが池』での大蛇騒動は二度と起こる事はなく、比良周辺の農民達が恐怖に悩まされる事はなくなった。信長が打った手は、確かに比良の人々を救ったのだ。

 そして弘治二年八月。叛旗を翻した勘十郎信勝討伐の兵を起こした信長の軍勢の中には、佐々党の姿もあった。彼らは成政の実兄孫介が討死を遂げるほどの奮戦によって信長の勝利に貢献し、後の桶狭間合戦でも信長を裏切る事なく今川との戦いに身を投じた。『もしもの時』に及んで、佐々家は信長に従う事を選んだのだ。

 後世、太田牛一が遺した『信長公記』首巻に、この『蛇替え』の話が残されている。それは信長の破天荒な一面を示すものとして扱われる事が多い。だがその裏には統治者としての信長の顔が見え隠れしている。佐々成政は越中時代においては優れた民政家として名を残しているが、或いはこの事件における信長の対応に触発された部分もあったのかも知れない。




 太田牛一の遺した『信長公記』首巻における信長の二つの『奇談』の一つに、この蛇替えの話があります。文中でも述べた通り、この話は信長の破天荒とも言える行動が語られる事が多いです。また、信長の行動に対する佐々成政らの陰謀についても語られる事は少なくありません。

 しかしながら実際の所、この話は領主としての支配下の民衆に対する安全保障の一環だったのではないかというのが私の考えです。現代でも、何かしらの事件が起こり、風評被害に晒された農作物を大臣が食べて安全性をアピールする事がありますが、これも似たようなものだったのではないでしょうか。しかもこの場合は自分の身をより危険に晒し、入念に調査している事から大臣の食事アピールの類よりも遥かに効果的だった筈です。

 今日に至るまで苛烈なイメージの強い信長ですが、その事績や幾つかのエピソードからは、民衆の生活に対する強い関心が窺えます。この話も、そうした挿話の一つだと考える方が適切ではなかろうか。その解釈の下に、今回の話を書かせて頂いた次第です。

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