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090 会議② グリトニー公 ロック

リアーサの返答にロックの眉が跳ね上がる。


「ムリとは・・・どう言う事かな?」


あ~あ、完全に怒ってる。

自分の思い通りにならないとすまない性格なんだろうな・・・


下の者が何を反論するんだ・・・と。


「このお方はお尋ね者などではございません。

 それに、私の夫となる方を無下に扱わないでいただきたい。」


「・・・・・・は?」


「そうそう、うちのルーアの婚約者でもあるよ。」


・・・その話を引っ張り出すのか・・・てっきり流れたと思っていたのに・・・


「・・・・・・」


ロックの視線が変態を見るソレになってるんですけど・・・

自分だってアーチャを手篭めにしようとしてたくせに。


「わっ・・・私だってヒロ様のお手つきなんですよっ!!」


アーチャ、お前もかっ!!

しかも手つきって・・・、絶対意味判って言ってないだろ。


「きっ・・・貴様っ!!なんと言う事を!!

 生娘でなければ利用価値は無いと言うのに・・・

 こんな変態のせいで・・・」


ほら、勘違いされてる・・・

というか利用価値?

手篭めにしようとしたんじゃないのか?


相当堪えてはいそうだが、俺も堪える・・・

変態に変態って言われた・・・ぐふっ・・・


「ですが・・・

 何故この2人がここに居ると知っているのですか?

 2人とも先日来たばかりのはずですが。」


リアーサがここぞとばかりに鋭い質問をする。


「それは挨拶の下見を兼ねていた際、この城へ来るのを見かけてな。」


「あぁ、アーチャ様の馬車を見かけたのですか?」


「そうだ。

 門兵の検査を受けている所を見てな。」


「父上が御者をしていたので、顔パスで入れたと思いましたが。」


「ぐっ・・・

 横窓から顔が見えたのだ。」


ロックが冷や汗をかきながら答える。

これは俺から追い討ちを掛けられるな。


「カーテンを閉めていたが・・・見えたのか?」


「ぐぅ・・・

 そうだ、城と言っても、この街に入るという意味で言ったのだ。」


「街に入る前にも検査など受けなかったが?」


「うっ・・・ぐっ・・・」


ちょっと楽しい、口を開けばどんどん泥沼になってるって判って言ってるのかな?

見てみると、リアーサも楽しそうに笑っている。


これは形勢逆転だな。


「ええい!!2人が居るという情報があったので、確認に来たら本当に居た。

 なので慌てて飛び込んだだけだ!!」


「なら最初からそうおっしゃれば良いのではございませんか?

 それと、どなたから聞いた情報ですか?」


「ふん、ドワーフ族の娘が手配書の男に連れられて城へ入ったという連絡だ。

 俺はドワーフ族の長。気になった一般人が善意で知らせてくれたんだよ。」


この理由は使えると思ったのだろう。

ロックの顔は余裕に戻ってきた。


「ソレはおかしいなぁ~。」


ラリーが口を挟んでくる。


「ヒロ君の手配書なんて見たことあるかい?黒姫様。」


「いいえ、少なくともこの国では見た事はございません。」


「だよねぇ?

 それなのに、ヒロ君がお尋ね者って・・・間違ってるんじゃない?

 それはこの国の誰にでもいえることだと思うがねぇ?」


余裕の顔が崩れ、怒りの形相へと変わってくる。


「なっ・・・ラース公様からの書状に目を通しておらぬのかっ!!」


わざとらしくラリーとリアーサは芝居を続ける。


「ん~、黒姫様見た?」


「いいえ、私にも届いてはおりません。

 そもそも、この領は許可のある方法以外で送られた物は、永遠にたどり着けない結界は張っておりますので・・・」


「あぁ、そういやそうだったねぇ。

 伝書鳩君には悪い事をしたねぇ・・・

 まぁ、仕方ないか。」


「そうですね。」


「あはははは」と2人は顔を見合わせると笑いあった。


「くぬぬぬぬっ・・・ぐぅぅぅぅっ・・・

 もう良い!!お前達来い!!」


顔まで真っ赤になったロックは、大きな声で言うと窓や扉から武装したドワーフやエルフが入ってくる。

その中には、屋敷で働いていた使用人の姿も見える。


「ふぅ、何でこういった人種は耐える事を知らないんだろう?

 見た所、買収・引き抜きは美味いみたいだが・・・

 なんでこうも詰めが甘いかな?」


「仕方ないですよ、その程度までしか読むことが出来ないんですから。」


こんな状況でも2人はまったく変わらない。

だからこそ安心できる。"先の先まで読んでいる"と。


「増長させても良い事なぞありませんから、さっさと終わらせますか。」


「ふはははははっ、命が惜しくば、我がグリトニー領へ下るが良いわっ!!」


「では・・・『おいでませ』」


リアーサが手を合わせると足元が光り、魔方陣が浮かび上がってくる。


「なっ!?」


勝ち誇ったように笑っていたロックもいきなり浮かび上がった魔方陣に驚く。

その間にも、武装した兵士の上に剣や槍、斧などの武器が実体化する。


「ふっ・・・ふせろぉぉぉ」


その痕は言わずもがなだ・・・


「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」」」


降ってくる剣や槍に貫かれた面々がうめき声を上げ、床に転がる。


「残念ですが、敵対する者へ慈悲を向けるなんてしませんので。」


リアーサがもう一度手を合わせ、お辞儀をする。

兵士達の上では、2回目の武器召喚が始まる。


『おいでませ。』


全てが終わった後、立っていたのは俺達とロックのみ。

いや、俺達は座ったままだけど。


「貴様っ!!何をしたのか判っているのか?

 中には同胞も混じっておるのだぞ!!」


ロックはあまりにもの手際の良さと容赦のなさに、引きつった顔で訳の判らない事を口走る。


「簡単に裏切る者は同胞と呼べませんから。」


実にあっさりと笑顔で答える。


これが初対面で真っ赤になったり、キョドッていた子なのか・・・?

リアーサ、恐ろしい子・・・


「くそっ、こうなったら貴様だけでも殺してくれるわっ。

 黒姫覚悟っ!!」


剣を片手にリアーサに向かおうとするが、直ぐに転んでしまう。


「なっ・・・何をした!?」


「きちんと様付けをしないといけないなぁ。

 ちなみにそれは影縫いの短剣。

 もしかして、投げたのすら気付いていなかった?」


・・・何時の間に・・・


「クソッ、何をするか!!

 ワシをグリトニー領、領主グリトニー公と知っての行動かっ!!」


「うん、そうだよ。

 だって、僕はスロウス公だからね♪」


権力をかさに着ようとしても、ラリーが許さない。


「くっ・・・しっ・・・仕方ない。

 降伏しよう、捕虜になってもよい。

 全て話すっ。だから命はっ・・・命だけは助けてくれっ!!


なんて小物なんだ・・・

アーチャの意見を聞いてみると、


「ええ、叔父はあの性格もあり、父は信頼できないといっていたのですが・・・」


あきれ返って話してくれた。


とりあえず・・・縛り上げておくか。




「さて、これはどうしようか・・・」


ラリーはアーチャへと問いかける。


「少々お話をさせていただいてよろしいですか?」


「ああ、構わないよ。」


ラリーは快諾すると、アーチャの隣へロックをつれて移動する。


「ありがとうございます。」


アーチャは1度目をつぶり深呼吸をすると、しっかりとした目でロックを見据える。


「叔父上、お父様の事、本当にご存じないのですか?」


「ふん、知らぬな。」


あからさまに嘘と判る態度だ。


「ルールがあるとは言え、何故あそこまで簡単に領主の座へ就けたのですか?

 何人かの貴族は反対すると思っておりましたが・・・」


「ワシの人徳だ。」


「では、何故彼等の行方が知れないのですか?」


「旅行にでも行ったんじゃないのか?」


駄目だ・・・まともに答える気が全く無い。


「お母様はどうされたのですか!!」


そろそろ限界かな?

あのアーチャが怒気を放っている。


「今頃くたばってるんじゃないか?

 旦那は失踪し、娘は逃げ出した。

 そんなんじゃ、領に居られないだろうからな。」


「貴方はっ!!」


激昂したアーチャとロックの間に割って入るが、ラリーの行動の方が早かった。


ボグッ


「ゲフッ」


「グリトニー公、貴方は今の状況を判っているのですよね?

 ・・・全ての真相は判っています。


 貴方が自分からアーチャへ話すのであれば・・・多少は甘くようと思っていたのですが・・・


 慈悲を与える必要すらなさそうですね。」


ラリーの目は冷たい。

ロックの腹を蹴り飛ばし、壁際まで吹き飛ばすと、本性?を表して語りかける。


「ひっ・・・ひぃぃ・・・」


「アーチャ、全てはこの後でお話しましょう。

 僕から話すことではないと・・・思っていたのですが・・・


 この状況ですら、この態度とは・・・本当のことを話すとは思えない。


 こいつは・・・ここで始末する。」


「ひっ・・・・嫌だ・・・死ぬのは嫌だっ・・・




 くそっ・・・力だ・・・・

 

 力だっ・・・力をよこせ!!

 代償などいくらでも払ってやる!!

 この場を皆殺しにする力を!!」


ロックが叫ぶと、その体は変異していく。


浅黒い肌は真っ赤に。


短めの身長は見上げるほど高く。


口からは牙が生え、額から角が・・・


「ぐるぅぁぁぁぁぁああああああああ」


その口からは恐ろしいほどの咆哮が・・・


その姿はまさしく鬼・・・


この世界では存在しないと言われるソレが、目の前に居た。

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