表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/116

089 会議①

城へ戻った俺達はルーア、ラリーと別れた。


リアーサに連れられ、執務室へと案内されると中には既にラリーが待ち構えていた。


「やぁ、ヒロ君さっき振りだね。

 僕はここで本を呼んでいるから、詳しい事はリアーサと決めてくれたまえ。」


部屋の隅にある本棚の前で座布団を敷き、横になっていたのには流石に呆れても良いだろう?


「あー・・・はい。」


ラリーが軽くウインクすると、さっそくお茶を片手にごろごろし始めた。


何所までが本気で、何所までが演技なんだか・・・

多分、ラリーの事だ、全部本気で全部演技なんだろうが。


「外は楽しかったか?

 我も着いて行きたかったが、このナリではな・・・

 あぁ、気にする必要は無い。

 このナリもかなり快適だからの。」


「ヒロ様、ごきげんよう。

 私も話を伺うよう案内されたのですが、良かったのでしょうか?」


ソファにはアーチャとアリシアが座っていた・・・が


「アリシア・・・彼女は誰かな?

 アーチャはもっと違う反応をよこすと思うんだが・・・」


「う~、酷いですヒロ様。

 淑女たらんとするために、置いていった事を責めないよう気を使っただけですのに~。」


「悪い悪い、あまりにも変わっていたんで、驚いてしまって。」


「ヒロ、あまりからかうでない。

 アーチャもヒロに釣り合うよう、頑張って勉強したのじゃからな。」


「アリシア様っ、それは内緒の話です~。」


勉強を頑張っていたのか、それをからかったのは申し訳なかったな。


「ほら、これはお土産のワッフルだ。

 美味しいって評判で、リアーサも太鼓判を押していたからな。

 帰ったら食べると良いよ。」


この時用に買っておいたお菓子を持たせてあげると、素直に喜んでくれた。


「わっ、ありがとうございますっ。

 嬉しいです♪」


「ヒロ、我には無いのか?」


「ごめん、アリシアが喜びそうで渡せるものは無かった・・・」


「むぅ・・・残念だ・・・」


普段強気な彼女だが、こういう時はしおらしく感じてしまう・・・

今度、何か喜びそうな事があったらアリシアにしてあげようと心に誓った。


「ヒロ様、そろそろよろしいでしょうか?」


若干いらだった風のリアーサから声をかけられる。

しまった、無視した形になっていたな・・・


「ごめん、つい話し込んでしまって・・・」


「いえ、聞いていただければいいのです。

 では、アーチャ様の隣におかけください。


 ヒロ様との話し合いですが、アーチャ様とアリシア様も同席が必要だろうと思い、ご案内させていただきました。

 ご一緒に聞いていただいてよろしいでしょうか?」


「いえ、こちらこそ呼んできていただいて申し訳ないです。

 もちろん2人にも関係が有るから聞いてもらいたいと思ってました。」


「ありがとうございます。

 では、私も失礼しますね。」


リアーサは礼をすると奥の席に腰掛ける。


「前置きは嫌いでしょうが、結論に深く関ってきます。

 ご面倒ですが、お付き合いいただけますか?

 もちろん、駆け引きは行わないのでご安心ください。」


さっきの一件を意識して最後の1文だろうか?

まぁ、単刀直入の方が確かに好きだが。


「お願いします。」


「では、シン国をとりまく情勢から説明しましょう。

 現在、我がシン国は3つに割れております。

 1つがラース公を中心とした派閥、こちらはラース公、グリトニー公、エンヴィー公となっております。

 次にプライド公を中心とした派閥、こちらはプライド公、グリード公の2公です。

 最後に中立派、こちらは我がスロウス公とラスト公が中立を保っております。」


「えっ!?」


思わず声が出る。

グリトニー公はアーチャの話から予想していた。

だが、エンヴィー公は予想外だ・・・アクスさんの交渉は失敗に終わったのだろうか?

それとも、すでにラース公の手の者が動いていたのか・・・

エンヴィー公・・・確かアクアさんの妹が実権を取っていたはず・・・


「と言っても3つの勢力は対立している訳でもなく、内政をラース公派、外政をプライド公派、その取り纏めを我らが行っているという程度です。

 どの領も手を取り合って国を守っています。

 何か気になる所でもありましたか?」


「いえ、何でもありません。」


「そうですか。続けますね。

 我らスロウス領は先ほども見ていただいたように、戦えるべき者はほとんど居ない状況です。

 さらに、3つの派閥はお互い差さえあってもおります。

 ・・・どこか1カ所を攻めると言うのは均衡を崩します。

 なので、我らは中立の立場を貫こうと思っております。」


「え?」


先ほどと話が違う・・・

が、ラリーはなんと言っていた?

おそらく、このやり取りも表向きということなのだろうか。

合わせるべきか・・・


「それがスロウス領の答え。と受け取ってよろしいのだな。」


後ろから声が掛かる。

振り向くと、筋肉質でずんぐりむっくりした体型のひげもじゃな人物が見える。

顔には大きな傷がついており、左目から頬にかけて痛々しい痕になっている。


「おや、グラトニー公、随分とお早い時間で。

 お約束にはまだ時間が有ると思いましたが?」


リアーサが俺にウインクしながら、後ろの男に声を掛ける。

この男がグラトニー公・・・おっちゃんの弟にして、アーチャの叔父。

グラトニー領を奪った人物か・・・


「ひっ・・・」


アーチャがその顔を見ると、短い悲鳴を上げて俺にしがみ付く。

安心させる為に軽く手を撫でてやると、さらにしがみ付いてくる・・・逆効果だったか。


「我が姪とネズミが居ると聞き及びましてな、急いできたのですよ。」


ひげをしごきながら得意げに言う。

その目はいやらしく、嗜虐趣味を持つ者に見られる残忍な目だ。


しかもその目でアーチャを嘗め回すように見るから、更に気色悪い・・・


「ふんっ、我が姪ともあろう者がそんなネズミにしがみ付いて・・・

 所詮は阿呆か。」


「実の姪・・・しかも前領主の娘になんと言う事を・・・

 グラトニー公、さすがに言葉が過ぎるかと思われますが。」


リアーサがアーチャを庇ってくれるが、グラトニー公は更にひどいことを言ってくる。


「判らないかもしれませんが、その娘は『鳥頭』という特殊なスキルを持っておるのです。

 何を言ってもすぐに忘れる阿呆には、阿呆としか言いようがありませんな。」


怯えていたはずのアーチャだが、その言葉に怒りがわいたのか、俺の手を握り締めてくる。

・・・『怪力』によって強化された力で・・・

・・・痛ててててて、このままじゃ骨が・・・


「アーチャ、落ち着いて。

 俺は違うって知ってるから、ほら、落ち着けって。」


なるべく顔に出ないように気をつけつつ、アーチャをなだめる。


「グラトニー公・・・それでもです。」


「ふん、小娘風情がワシに意見を申すでないわ。」


リアーサを近くまで行って見下ろした後、


「挨拶がまだだったな。

 ワシが前グリトニー公の弟にして、新しくグリトニー公を拝命する事となった元騎士団長、ロックだ。

 大公に大きな口を利く貴様は何者だ?」


権力を振りかざせば大人しくなると思っていたのだろう。


「そうでしたか。

 貴方がシン国に名声高いロック将軍ですか、これは大変失礼いたしました。

 ご存知かと思いますが、私がスロウス公筆頭補佐官の黒姫と申します。」


「ほう・・・」


ロックは感嘆の言葉を漏らすと、リアーサの側を離れる。


「アンタが黒姫だったのか、スロウス公といい、黒姫と言い、予想とは大きく違うな。」


ピクリ・・・とリアーサの片眉が跳ね上がる。


「噂と現実は違う物です。

 勝手なイメージを植えつけないでいただきたい。」


「ふんっ・・・ワシもすでに将軍ではない、公爵だ。間違えないようにな。

 それでスロウス公、答えはいかに?」


「あぁ、うん、そう言う事だから、詳しい話は黒姫様にお願いするよ。」


「くぁはははははは、部下に様付けとはな。

 ・・・ふん、相変わらずの駄目領主がっ・・・」

  

グリトニー公・・・公と呼ぶような男じゃない、ロックはスロウス公を蔑んだ目で見ると、リアーサへと視線を戻す。


「そういう訳だ。我が姪とネズミは貰っていくが良いな?」


勝ち誇った顔で、アーチャの腕を掴もうと手を伸ばす。


ぱしっ


その手はリアーサの投げた書類で叩き落とされる。


「それはムリです。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ