088 お出かけ⑥ 結論
「とりあえず、聞いて良いかな?」
「うん、なんだい?」
疑問に思っていた事を口にする。
「何所まで知っているかな?
それによって話せる内容が変わるんだけど。」
「おおっと、すまない。
カードを全て明かしたと言いつつ、まだ言い忘れていた事があったね。」
その目は謝っていると言うより、よく見破りましたの文字が浮かんでいる。
「ラリー、君の誠意に応じるつもりはある。
だけど、あまり試しすぎないで欲しいかな。
流石にこれ以上は信じられなくなる。」
「ふふ、さすがはヒロ君だ。
ここで調子に乗り、カードをめくるようなら・・・とも思ったんだけどね。
うん、もう少しだけ隠していた事がある。
でも、話せるのは何所まで知っているかと、何故知っているか。
それで良いかな?」
俺の目を見て言ってくる。
流石にここまで言って騙してくるような人ではない気がする・・・
「話せるの"は"か。
ならいいよ。
ラリーがそう判断した上で、あえて言わない方がよいと踏んだのなら信じよう。」
「ありがとう。
先ほど話したエルフ族のみに伝わるスキルで、『幻惑魔法』は教えたけど、『精霊化』については言ってなかったね。」
「ああ。」
「『精霊化』は、自身の精神体を抜き取り、精霊とするスキルだ。
精霊となった精神体は、世界にいる多種多様な精霊とコンタクトを行う事ができる。
そこで精霊達に色々と質問するのさ。
僕達の主な情報源であり、絶大な情報でもある。
その中で僕が得たヒロ君の情報は、現在所持している各種スキルと、仲間達の動向。
そして、現在までの旅の動向ぐらいかな?」
力が抜ける・・・
どこまで俺の個人情報は駄々盛れなんだろうか・・・
「それってこの世界に来てからの全てを知っているってことじゃないですか?」
「うん、そうとも言うね。」
「その上で、俺から何を聞こうと?」
「簡単な事だよ。
君が何を想って行動し、これから何を目指しているか・・・だよ。」
なるほど、行動は把握できても、その意味までは判らない。
だから、その意味を見極めたいって言う所・・・かな?
まったく、何所まで知りたいのやら・・・
「そうですね。なら、俺の切るカード・・・というか、考えを伝えれば良い。
と言う事ですね?」
「そうだね。
そうとってもらって良いかな。」
「ふぅ・・・
ならぶっちゃけて言います。
俺は元の世界では、ごく一般的な家に生まれ、少々イレギュラーはありましたが、ごく一般的に生きる人間です。
そんな俺がいきなり魔王とか言われて"判りました"。と言える訳無いじゃないですか。
旅の中で戦争の爪あとも見てきました。
そんな色々と思うところがあるのに、魔王と名乗れるか?と言われると答えはNOです。
それに、それ以前の問題も有ります。
そもそも、俺に魔王が勤まるとは思っていません。
それでも俺に期待してくれている人が居る。と言うのは判っています。
だから、一先ず魔王とかそういうのはどこかに投げてみようと思っています。」
その言葉には、その場にいた全員が驚きを表す。
ラリーは顔では笑っているが、目が真剣だ。
本気で全てを調べようとしているんだろう。
「俺は今まで出会ってきた人たち・・・旅してきた町がとても好きです。
だから、この国を良くする手伝いが出来るのならそれをしたい。
魔王でなくても、この国を愛する1人の人間として・・・
もちろん途中で立ち寄った「ライブラ」の町も好きですし、そこで出会った人たちも居ます。
ラース公の行おうとしていることが、その人たちの幸せを壊すものなら全力で阻止しますし、企みを潰したい。
その辺は、俺なんかよりラリーの方が詳しく知っているんじゃないですか?
俺1人で出来る事などタカが知れています。
なので、ここに居る皆にもその手伝いを頼みたいと思っても居ます。
俺に出来る事ならどんな事だってするつもりです。
だから・・・力を貸してください!!」
俺はいままでの旅の中で得た物を思い返しながら、心のままに言葉に出す。
そして改めて、仲間達の大切さ。
出合った人たちのことを思い返すと、守りたいという気持ちで一杯になった。
「ぷっ・・・あはっ・・・・あははははははは」
頭を下げて助力を請うと、ラリーがいきなり笑い始めた。
何か変な事を言ってしまったかと、記憶をたどろうとすると、ラリーが言葉を続ける。
「うん、ヒロ君、君はやはり面白い。
ここは『俺が魔王になる。ついて来てくれ。』って感じを予想していたんだが・・・
まさか魔王を投げ出すとはね。
その上で1個人として頼んでくる始末。
うん、久々に面白い事を聞かせてもらった。
他の大公が気に入ったのも分かる気がするよ。
なんでこうも『あれは嫌だ、これも嫌だ、でも譲らない。』って人間が指示されているか判らなかったが・・・
うん、本人に会わないと判らないものってあるものだね。
確かに君なら何かを変えてくれそうだ。
・・・うん、いいさ、僕も君の力になろう。
ヒロ君、ちょっと良いかな?」
話を区切ると、ラリーは俺の耳元で囁くように、
「スラリー・コンチェルト・スロウス。
それが僕の名だ、君に預けるよ。」
と言って離れた。
「でもさ、何でもするって言うけど・・・じゃ、魔王になってと言われたらどうするんだい?」
今度は意地悪な目で見てくる。
試してるな・・・
「もちろん、保留して貰います。」
なら、敢えて本心をぶつけてやる。
「あっはっは・・・ほんと、君ってはブレないねぇ。」
「頑固なものですから。」
すでにラリーの目は笑っている。
俺がどんな人間で、どういう答えを出すか判ったんだろう。
互いに目が合うと、笑いがこみ上げてくる。
「ぷっ・・・・あはは・・・あはははは」
笑いは伝染するものだ。
次第に、その場にいた全員が笑いの渦へと入っていった。
そしていつしか、全員が笑いを止めると、ラリーが少しだけ真剣な顔に戻った後、
「さぁ行こうか。
この結界を抜けると、またラース公の監視魔法が届くようになる。
いつもの僕に戻るから、リアーサ、ルーア。フォローをよろしくね。」
後半はおどけるように言うと、リアーサとルーアに声をかける。
「お任せください。」
「まったく、お父さんはしょうがないなぁ。」
重い会話中、ずっと硬い表情をしていた2人だが、笑顔で答える。
「ケイン、時が来たら力を貸してもらう。
その時まで申し訳ないが、ここで待っててもらうよ。」
「スロウス公、いつでもおっしゃってください。
この命のご恩、かならず返しますので。」
「ははっ、そんなかたっ苦しく考えなくて良いさ。
それに、お姉さんの解放は君の悲願でもあるだろう?」
「・・・ええ、そうですね。
必ず、姉さんの目を覚まさせて見せます。
・・・・・・・そう、例え命を奪う結果になっても。」
「ああ。」
ケインはラリーとの会話を終えると、俺に一礼し、
「ヒロ様、必ず駆けつけます。
それまで御武運を・・・」
「ありがとう。
皆も頑張って。」
「「「はっ!!」」」
3人は敬礼すると、現れたときと同じように姿を消していく。
「さぁ、愛する我が家へ戻ろうか。」




