表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/116

086 お出かけ④ 再会

「ふぅ・・・僕とした事が限界を見誤ってしまうとは・・・皆済まないね。」


ラリーは目を覚まし、上半身を起こすと直ぐに謝った。


「ラリー、大丈夫ですか?」


「スロウス公様、大丈夫でしょうか。」


「お父さん、大丈夫?」


「あぁ・・・見苦しい所を見せてしまったね。

 まさかあれを完食するとは思っていなかったので、ついムキになってしまってしまった。」


ラリーはほがらかに笑うが、人事じゃない。

場合によっては、俺が倒れていたかもしれないんだから・・・


「と言うか、そんな危険な食べ物で勝負を仕掛けないでください・・・」


「あっはっは、悪かったね。

 ちょっとした最後の確認って所だったんだ。」


ラリーは既にいつもの元気で笑い続けている。

隣ではルーアもリアーサも呆れた目でラリーを見ているから問題は無いだろう。


「大丈夫そうだし、そろそろ戻りますか?」


ラリーに手を貸して立たせながら、この後の予定について確認する。


「もう一ヶ所行きたいところがあるんだが、いいかな?」


ラリーがリアーサとルーアに目配せすると、2人は頷く。

特に予定があるわけでもないし、俺も問題はない。


「いいですよ、行きましょうか。」


「それは良かった。

 是非とも、ヒロ君に見てもらいたいものだったのだよ。」


そう言うと、そのまま俺の手を握り先頭に立って歩き出した。


「ラリー、流石に手を繋いだままは!!」


「いいからいいから、ほら、いくよ~。」


妙なハイテンションだ・・・

まさか、出掛けに言っていた幼女を見に行く訳じゃないだろうな・・・


「はぁ・・・変な所だったらその足で直ぐに帰りますよ?」


「も・・・もちろん大丈夫さっ、あはははははははは」


顔を逸らし、声が震えているが・・・本当に大丈夫か?





「ヒロ君、こっちだ。」


結局、手を離してもらうことはなかった。

さすがに手を繋いだまま、繁華街や公園を横切るのは恥ずかしかった・・・


途中で買い物をするエルフの女性を見ることができたが、俺たちを見るとなにやらこそこそ話をしていた。

変な話じゃないといいんだが・・・・ロリ疑惑があるのに、ホモ疑惑とか付けられたくないぞ?


そうして連れてこられたのは、郊外にある大きな門のある敷地だった。

広大な敷地で、何かの苗木?を一面に植えられた場所だ。


「ここは?」


隣を歩いているリアーサとルーアはしんみりとした空気を纏っている。


「アリシア様から聞いているかな?

 ヒロ君がこの世界に来る少し前、人族と魔族で大規模な戦争が起こった事を。」


大きな戦争があったことは聞いている。

その戦争を止める為の和平の席でアリシアが暗殺された事も・・・


「この苗木はその時、無くなった者達の墓標なんだ。」


!?

この全てが墓標・・・

一体どれだけの数なんだ・・・


「全部で1863本、これでも少ない方なんだがね・・・」


ラリーはいつものへらへらした笑いの中に、若干寂しそうな笑みが混じっている。


「続きは中で手を合わせながら話さないかい?」


「そうです・・・ね。」


入り口の門を通り、中へ入ると空気が変わった気がした。

墓場独特に空気というモノだろうか?


静かで何かに押しつぶされそうな空気・・・

元の世界で感じた事はないが、遥か広大な敷地にこれだけの数の墓標だ。

何かしら感じてもおかしくは無いだろう。


「僕達エルフというのはね、不老長寿の個体で子供が出来にくい。

 なので、種族自体の規模がかなり小さくなっている。

 その中でも男性の出生率が低くてね、兵士のなり手はほとんど居ないんだ。


 たとえば、異種族と結ばれても、生まれてくる子は相手の種族かハーフエルフ。

 純粋なエルフとして産まれるのは、万に一つぐらいの確立さ。」


どうやら、全てがハーフエルフになるわけじゃなく、純粋なエルフ、ハーフエルフ、相手の種族の3種類になるらしい。


「そして、前回の戦争でただでさえ少ない男性エルフの成体は更に数を減らした。

 残っているのは、男性千弱、女性5千弱と戦争に狩り出された為に、男性が女性の1/5以下になった。」


通りで見かけるのは女性ばかりだったのか・・・

男性も居るのだろうが、若者から年配まで合わせても千人弱・・・、街中で見かけることは難しいんだろう。


「まず、誤解の無いように先に言っておこう。

 僕は君が好きだ・・・

 手を貸しても良い位にね。」


ラリーの目は真剣だ。

いつものへらへらした表情ではなく、真摯な顔で、目で見つめてくる。


「だが、戦争で殺しあった多くの魔族はそうでないかもしれない。

 ・・・君は魔王を受け継ぐものであると同時に・・・人族なんだ。」


ゴクッ・・・


喉が鳴る。

そう・・・俺は魔王の力を受け継いだ・・・ただの人間なんだ。


「・・・この戦争によって、魔族と人族、お互いが血を流し、お互いを憎しみあっているだろう。

 エルフ族にとってもそうだ。

 

 君を初めとした人族も、もちろんシン国には多数存在する。

 そしてシン国で暮らす人族は、我々を同胞として扱う。


 それを知っていても・・・戦争が小休止に入り、魔王アリシア様が亡くなってからシン国に住む多くの人族は外に出なくなった。

 自分と同じ種族が我らと敵対している。

 その想いに押しつぶされそうになっていると聞いている。」


ラリーは静かに目を閉じる。

リアーサ、ルーアはずっと黙ったまま、隣に立っている。


「ヒロ君・・・君も同じではないのかい?」


ビクッ


図星・・・だった。

魔王として召喚されていながら、俺は敵対する人族と同じ人種・・・

なのに・・・何故、この国のトップに立たなければならないんだ?


何故、ラース公は敵対する人間を魔王として召喚したんだ?


そして・・・ミモザ村の襲撃、エルの洗脳・・・ドラゴさん、アクアさんの暗殺・・・




そんな暗い想いが心の中に渦巻く・・・


「魔王を継がないと言い回っているのは・・・

 それが原因なんじゃないかと、僕は思っている。」


言葉が詰まる・・・


喉が渇く・・・


目が回る・・・


ズサッ


立っていられなくなり、片膝をついてしまう。


「ヒロ様っ!!」


咄嗟に誰かが俺を支える。

隣を見てみると、ルーアとリアーサが両側から支えてくれている。


「2人とも・・・」


2人の顔を見ると、にっこりと笑ってくれる。

気を使ってくれてるんだろうな。

いけないな、こんな小さな子に支えられていては・・・


「その顔を見ると・・・どうやらそうだったみたいだね。」


ラリーの顔は悲痛だ・・・


「だが、そんな君だからこそ僕は気に入ったんだ。」


俺と顔を合わせると、ラリーもにっこりと笑う。


「もちろん魔王として立つ時、どうしても嫌なら『吸血鬼化』で不死族を偽るのもありだよ?

 あ、でも『竜化』や『人魚化』はお勧めしないよ?

 言わずもがなだけど、『獣化』もね。


 『狂化』と『硬化』は制御できるだろうけど、概観は変わらないからねぇ。

 それじゃ意味が無い。


 ちなみに僕の『精霊化』も同じことが言えるから、『吸血鬼化』がお勧めかな。」


「なっ!?」


何を・・・言っているんだ?

俺はラリーの前でこの手のスキルは使っていない・・・

もちろん、教えても居ないはずだ・・・


なのに・・・なのに何故知っている!?


先ほどまでとはまったく別の恐怖に身を包まれる。

先ほどまでの恐怖は、押しつぶされる恐怖・・・

だが、今のは冷たい手で背筋を撫でられる恐怖だ・・・


先ほどまでの押しつぶす恐怖は吹き飛んだが・・・


はっ・・・まさか?


「念のために言っておくが、アリシア様が言った訳じゃないから、彼女を疑ったりはしないでくれたまえ。」


ことごとく考えが読まれる。


「考えは読んでいない。

 先の先を読んでいるだけさ。」


にこっと笑うラリー。


「でも、びっくりしたお陰でプレッシャーは吹き飛んだんじゃないかな?」


・・・・・・・・・・・


ふぅ・・・・


どうやら彼に対する考えを改めないといけないようだ。


確かに、驚きの連続で暗い迷路に入り込んだ思考は吹き飛んだ。

だが、別の意味で混乱している気がするが・・・


改めて、目の前の男性を警戒すべき人として視線を戻す。


「やだなぁ、警戒なんてしないでくれたまえ。

 今まで言った言葉全てが嘘じゃない。

 

 だから最初に言ったじゃないか。


 僕は君の事を好きだって。」


確かに言われた・・・確かに言われたんだが・・・う~ん・・・


「そうだねぇ、やはり君達に待機していてもらって、良かったかもしれない。


 ・・・君達、結界は強化してある。安心して出てきたまえ。」



ザッ・・・・・ザザッ・・・


霧が晴れたように、目の前に人影が急に現れる。

その3つの人影には覚えがある・・・


ほんの少しだけ一緒に旅をした仲間・・・ラース・・・エーラ・・・ボロ・・・


「お久しぶりです・・・随分とお心を痛めたのではないでしょうか。

 本当に申し訳ございませんでした。

 

 また・・・姉の所為で色々とあったと思います。

 本当に・・・本当に・・・申し訳ございません。」


「ヒロ様、心配かけてごめんなさい。

 でも、また魔宝石の魅力についてお話できますよ。」


「随分・・・たくましくなられました。

 我らもヒロ様のお力になるべく、隠れ里で訓練を行っていましたが・・・我らでは到底かなわなそうですな。」


ミモザ村で暗殺されたはず・・・

何故・・・ここに?


「えっ・・・何!?・・・何で!?」


彼等は俺に罪をかぶせる為、操られたエルに暗殺されたはず・・・


3人の姿に驚き・・・そして安堵した。


俺のせいで失われた命・・・それが3人とは言え、助かっていたからだ。


「良かった・・・生きて・・・いたんだ・・・

 ラース、エーラ、ボロ・・・良かった。

 君達だけでも・・・生きていてくれてよかった。」


一番手前に居たラースに抱きつく。

・・・が、ラースはそっと身体を外すと


「その・・・ですね。

 大変言いにくいことなのですが・・・」


「うん?」


「実はミモザ村の皆も助かってるんだよ。

 良かったね、ヒロ様。」


言い難そうにしていたラースではなく、その隣でエーラが爆弾を投下した。


「え・・・・」


その爆弾は、簡単に爆発した。

そして、涙をこらえる為のダムを決壊させた。


「良かった!!

 良かったよ・・・皆生きてたんだっ!!

 うっ・・・うっ・・・・うっ・・・・」


年甲斐も無く、その場で号泣すると、改めて目の前に居た人物に抱擁した。


「えっ・・・・あれっ?・・・えっと・・・・あぅぅ・・・」


「エーラ、お前の所為だ。

 きちんと慰めてやれよ。」


「そうですよ、ボロの言う通りです。

 私もどう言うべきか悩んだんですから・・・

 それをあんなあっさりと言ってしまって・・・」


「ううん、ヒロ君、何故僕に抱きついてくれないかなぁ・・・

 僕が皆を助けたのに・・・」


「はいはい、お父さん拗ねないの。

 でもいいなぁ・・・私もヒロ様の前にいたら抱きしめて貰えたのかな。」


「ルーア・・・

 多分、身長と胸が足りないと思いますよ。

 ・・・・・・・明日からいっぱい牛乳を飲まないと・・・」

お読み頂きありがとうございます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ