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085 お出かけ③ バビロニアのボロロン風味

カランコロンッ


「いらっしゃいませ~。

 4名様ですね?こちらへどうぞ~。」


中に入って直ぐ、ウェイトレスさんに席を薦められた。

店内は洋食屋という雰囲気で、通されたのは端にある、ちょっと目立たないテーブルだ。

偶然とはいえ、あまり目立つ訳に行かない一行なのでこの配慮は助かった。


「こちらメニューになります。

 決まりましたら声をかけてくださいね♪」


それだけ言うと、メニューを置いていった。

写真が載っているわけもなく、文字が読めない俺には何がなにやらだった。


「私はラタトゥイユのオムレツを。」


「僕はパンとスープと・・・プレーンオムレツで。」


「僕はバビロニアのボロロン風味を頼むよ。」


リアーサとルーアは俺にも判る料理だ。

でも、ラリーの頼んだ料理は一体なんだ・・・?


ここは無難な線で行くか、挑戦してみるべきか・・・


多分、オムレツ2種は間違いないはずだ。

だが、バビロニアのボロロン風味・・・一体どんなものを使って、どんな味がするんだろうか?


試してみたい・・・


「ラリー、それって美味しいの?」


一応聞いてみよう。


「うむ、これを食べなければエルフを名乗るのもおこがましいね。」


・・・ゴクリ


「じゃぁ、俺もそれで。」


「「ヒロ様!?」」


リアーサとルーアの驚く声が聞こえる。

エルフ以外が頼むのはおかしいのだろうか?


「ヒロ様、やめた方が良いよっ」


「そうです、ヒロ様、ここは別の物を食べた方が・・・」


「ほう、ヒロ君も頼むのか。

 では僕と・・・勝負だ!!」


「勝負!?

 一体この料理は何なんですか!?」


「大丈夫、直ぐに来るよ。

 どっちが多く食べられるか勝負だっ!!」


多く食べられる!?

チャレンジメニューか何かなのか!?


「ちょっ・・・やっぱりプレーン「逃げるのかい?」オムレ・・・いえ、そのままで良いです。」


ちょっとラリーの「所詮その程度かい?」的な視線にムッとなってしまった。

いいさ・・・来るなら来い!!

いくらでも食べてやるさっ!!


「はい、お待ちどうさま~♪」


俺たちの前に置かれるメニュー。


リアーサの前にはドミグラスソースのたっぷり掛かった大きなオムレツが。


ルーアの前には白いパンと野菜たくさんのスープ、それとふんわりとしたプレーンオムレツが。


俺とラリーの前には・・・ぼこっぼこっと何かが噴出している紫色のソースの上に、緑色のオムレツが鎮座していた。

じ~っと見ていると、煙が目にしみて何か痛い・・・


「・・・・・・・・・・」


絶句して他の3人を見てみる。

3人は何事もなく、揃って「いただきま~す。」と口を付けていった。


ラリーも少しづつ口に入れては「うほー!!」とか「うはー!!」とか言っている。


ラリーと目があう。


目だけで笑われた・・・


くそっ、喰ってやるっ!!


俺はおそるおそるとオムレツにスプーンを近づけていく。


くっ、この臭気に目をやられる・・・


涙が・・・涙が出てくるっ・・・


くっ・・・負けるもんかっ!!



パクッ



もぐもぐ・・・もごもご・・・ごりゅ・・・ぐりゅ・・・がりっ・・・


なんだ・・・この不可思議な食感は・・・・


噛めば噛むほど、どんどん硬く・・・


味は・・・最初は甘く、次にしょっぱく、そして辛いけど・・・美味いぞ?


なんだ?これは!?


うまい・・・うまいっ・・・うまいこれっ!!


ついつい、口に運ぶ手が早くなっていく。


周りの視線を感じるが、そんな事気にしている暇は無い。


うまいっ・・・うまいっ!!



カツッ


「・・・あ」


終ってしまったか。


リアーサの言っていた通り、ここのオムレツは最高だった。

今、俺は至福なり。



「あ・・・・あの?」


そんな至福の絶頂に居る俺に隣から声が掛かる。

誰かと思ってみてみると、顔が青くなっているルーアがいた。


「ん?ルーア、どうしたの?」


「お父さんに変な勝負を持ちかけられたとは言え・・・

 大丈夫ですか?」


「勝負?」


勝負・・・勝負・・・あぁ、そうだ。

ラリーにどっちが多く食べれるか勝負って言われてたっけ。


でも、そんなに量は多くなかったよな?

一体何が多く食べる勝負だったんだろう?


「ええと・・・

 お体は・・・なんとも無いのですか?」


今度はリアーサが青い顔で俺を覗き込んだ。


「ん?なんとも無いけど・・・どうかした?」


ドヨッ


周りがかなりどよめいた気がする。

どうしたんだろう?


そう言えばラリーの姿が見えないな?どうしたんだろう?


「そう言えばラリーは?」


「お父様はそこに・・・」


ルーアの指差したそこには、地面に横たわってビクンビクンと痙攣しているラリーが居た。


「ラリー!?

 どうしたっ?何にやられたんだ?」


ラリーは震える手で俺を指差す。


「えっ、俺?」


「自業自得・・・ですね。」


「うん、お父さんどう考えても自爆。」


一体何があったんだろう?


「えっと・・・一体何が?」


俺の呟きで、リアーサは初めて気がついた。


「そう言えば、ヒロ様、バビロニアのボロロン風味を知らなかった・・・のですよね?」


「うん?そうだよ。

 でも見た目と違って美味しかったね。

 お代わりしたいぐらいだよ。」


ドヨドヨヨッ


後ろでかなりの動揺の気配がする。


「なぁ・・・あいつ・・・」


「馬鹿っ・・・聞こえるって・・・」


「でも・・・なぁ?・・・」


「・・・神の・・・」


「いや魔神の・・・」


「・・・・・・いや、創生神だろ・・・」


「・・・・毒が・・・・でも・・・・」


「・・・わりと・・・・・良い男・・・」


何か色々とヤバい会話が聞こえるような・・・

しかも最後!!男の声だったぞ?


「ヒロ様・・・一旦出ましょう。」


「え?うん、判った。」


リアーサに連れられて店から出る。

もちろん支払いは幼女に払わせる訳には行かない。全て俺が出そうとした。


会計時に

「いえいえ、御代などいただけません。

 それよりもまた来て頂いてよろしいですか?」

などと言った話があり、無料になった。

・・・・・・何故だろう?


ちなみにラリーはルーアが襟首を掴んで引きずっている。


「ヒロ様、こちらに・・・」


リアーサに連れられて20mほど離れた場所にあるベンチに4人で座った。

ラリーは未だに目を覚まさない。


「ヒロ様・・・本当になんとも無いんですね?」


「うん、なんとも無いけど?」


俺の返事にリアーサは化け物を見る目で返す。

失礼なっ!!


「いいですか?

 バビロニアのボロロン風味と言うのは・・・」


「言うのは?」


「原材料は判りませんが、食べるものの魔力を消費し味や食感が変わる食べ物で、魔力強化の為に食べる訓練食なんです。

完食出来たのは一人もいないという伝説の食べ物なんですよ?」


「は?」


耳を疑った。


「だから、完食不可能な一品と・・・」


「なんでそんなものがオムレツ屋さんに?」


「それは、そう言う物ですので・・・」


いや、理由になって無いし、なんでそんな者を食べるのがエルフの伝統・・・


「そこで倒れているラリーは?」


「おそらく魔力を使い尽くし、欠乏症になったのではないかと・・・」


そこで頭を抱えるルーア。


「だから止めなって言ったのに・・・お父さんたら。」


「普通、ここまで食べる人は居ないのですが・・・

 競争心・・・でしょうか?」


「うん・・・まぁ、次からは競争しないと言う事で?」


「はい・・・お願いします。」


そのまま、ラリーが目を覚ますまで、小一時間ベンチで話をする事となった。

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