082 スロウス公の秘め事
「ここだよ。入って入って。」
それから屋敷を5分ほど歩いただろうか。
-関係者以外立ち入り禁止-
の札がそこかしこに張ってある部屋に案内された。
スロウス公に導かれるまま、その部屋に入ると・・・
そこに有ったのは元の世界にあった俺の部屋・・・とは細部が違うな・・・
だが、ちょっと大きめの部屋には、壁一面の本が並び、机の上にはノートパソコンが一台。
ご丁寧にコタツとベットまで置いてある。
百人の内5人か6人はこの状況を見れば、あれ?俺の部屋?と、言いたくなるだろう。
この世界では始めてみた物ばかりだが、俺にとっては懐かしいばかりの部屋だ・・・
「これは・・・」
俺が呆気に取られていると、心情を把握したのか、
「君の世界では、珍しくも無いようなものばかりかな?」
と聞いてきた。
ここで嘘をつく意味は無い。
「ええ、ごく普通の部屋ですよ。
蔵書量が少々大目かな?とは思いますが。」
「そうか、なら使い方を聞いても大丈夫そうかな?」
「もしかして?」
「そう、このお宝の使い道を知りたかったのさっ!!」
それはもうキラキラとした目で答えてきたのだった。
「でも、これはどうしたんですか?」
「『召喚』はヒロ様も知ってるよね?」
「はい、俺もその『召喚』された存在ですから。」
「異世界の住人の『召喚』ってのは、召還魔導師の生涯につき一回のみって言うのは?」
「はい、それも聞きました。」
「そうか。
だが、"住人"ではなく、"物"であれば条件が整えば無制限に呼び出せるとしたら?」
「それは・・・考えても居ませんでした。」
「もちろん召喚魔導師の実力に応じてだがね。
ちなみに、うちにはその実力を持つ召喚魔導師がいる。」
「そうなんですね?」
まぁ、大体今までの説明で予想はつくが。
「ああ。
そこで、私はいつも彼女に異界の本を呼び出してもらっていたのだよ。」
応接の間にあった本棚・・・そしてここの壁側に山と詰まれた本・・・まさか!?
「うん、お考えの通りこの部屋全てを召喚した。」
さすがに驚いた・・・何が驚いたかって?
帰ったら、部屋がなくなった人がいるという事実だ。
召喚されたってことは、間違いなく異世界ではこの部屋ごとなくなっている。
「恐ろしい・・・ことをしますね。」
もし、自分の部屋が帰ったら無かったと言う事を想像すると・・・
「そうかい?結構普通に行われているが。」
「そう・・・ですか。」
どうやら元の世界で色々な物が無くなっていたのは、こっちの世界で召還していたからだそうだ・・・
「いやぁ、本はいつも召喚してもらっていたし、勉強したから内容とか判るんだけど、他の物が使い方が判らなくてね。
異世界から来たヒロ様ならもしかしたら。って思ったけど、正解だったようだね。」
「ええ・・・まぁ、そのぐらいで良ければお教えいたしますが。
電気ってこの世界にあるんですか?」
「電気?」
「ですよね・・・」
この世界で電気を使っているのは見たことが無い。
・・・待てよ?
雷の魔法は・・・強すぎるよな?
ん~・・・
お?もしかしたら・・・
よし。
「ちょっと失礼します・・・
むむむ・・・はっ!!」
魔力付与を行い・・・雷の属性付与を行う。
「威力を弱めて・・・っと。
スロウス公、そのコードの先端の銀色が2つ付いている部分ありますよね?」
「これかな?」
スロウス公がコタツのプラグを手に取る。
「ええ、それを俺の手に持たせてもらえますか?」
「了解。」
コンセントを手に持ったが、コタツが壊れるとか起こらない。
よしよし。
「今度、その中に足を入れて座って、そこのスイッチ・・・そう、それです。
白い部分をスライドさせてみてください。」
「判った・・・おぉ?
なんだこれは?足が温かくなった!?」
「これがコタツという道具になります。
雷の力を使う事で、中に熱を発生する事ができます。
このように俺の世界の道具は、ほとんどこの雷の力を使って作動させるようになります。」
「そうなのか・・・
一応、雷の力・・・電気と言ったかな?が必要な事はわかった。
他の道具も一通り教えて貰って良いかな?」
「はい、構いませんよ。」
そう言って俺は、コタツ、冷蔵庫、クーラー、掃除機などの使い方を教えた。
だが、TVは電波が無いので、付く訳が無いと説明した。
ノートパソコンに至っては、バッテリーで起動する事ができたが、中にあるソフトで表計算や文書を書くぐらいしか使い道がないだろう。
コタツ、冷蔵庫、クーラー、掃除機などはスロウス公もかなり驚き、なんとか電気を作ることができないか、本気で思案していた。
そう言えばこのパソコン、何が入ってるんだろう?
「スロウス公、このパソコン中身を見て良いですか?」
「ああ、好きに使ってみてくれ。
良さそうなものがあれば言ってくれれば良い。」
「判りました。」
そう言ってパソコンの起動ボタンを押す。
ヴゥンッ・・・カリカリカリカリ
起動スピードは・・・速いな。
結構性能のいいパソコンなんだろうか?
「おにいちゃんっ♪おっはっよっ♪」
「!?」
起動音が改造してある!?
しかも今の声にスロウス公が超反応してる・・・
「ヒロ君・・・今のは何かね?」
「ええと・・・このパソコンの起動音の一種・・・です。」
間違っては居ない・・・な。
「この四角い箱から幼女の声が聞こえたんだが?」
「まぁ・・・そういう設定をしてあったみたいです。」
「そうか・・・」
それだけ言うと、俺の横に座って画面を凝視し始めた。
画面起動が終ると、デスクトップに様々なアイコンが表示される。
うん・・・ワードにエクセル・・・基本的なソフトが入っているな。
あとは・・・この"美少女ゲーム"というフォルダが怪しいんだが・・・・
・・・・・・予想外だった・・・
いや、ある意味予想通りだった・・・のか?
かなりの数の美少女ゲームが入っていた・・・
この内容をスロウス公に報告すれば恐ろしい事になるだろう・・・
「ヒロ様、この絵柄は一体!?
よっ・・・幼女様の絵に見えますが!!」
そう・・・なぜか幼女を題材とした美少女ゲームばかりがインストールされていた・・・
今のスロウス公は、幼女を愛でるだけで満足している。
ある意味、今の状態ならギリギリセーフだ。
だが・・・もしこのパソコンの意味を知ったらどうなるか・・・
結論・・・久々にパソコンをいじらせて貰いました。本当にありがとう・・・
バチッ
・・・・・・・ボンッ
「あ・・・」
「うわぁっ!?
・・・すみません、スロウス公。
雷の力が強すぎたみたいです。
これではパソコンはもう動きませんね。」
「そうか・・・残念だ。
酷く残念だ・・・
幼女様の声が・・・
幼女様の絵が・・・」
この姿にはちょっと罪悪感を刺激される・・・
「いやぁ、本当に申し訳ないです。」
「いや、このコタツや洗濯機、冷蔵庫と言ったものだけでも相当な宝だ。
それに電気の力が強すぎるとどうなるか判ったしな。
これからは電気の時代だね。
よし、ジイに電気の作り方を調べさせるか。」
気にしては無いみたいだ・・・助かったぁ・・・
「スロウス公はどうされるんですか?」
「僕かい?
僕は・・・今の衝撃を吹き飛ばす為にも幼女様の聖典に癒されるよ・・・」
駄目っぽい・・・
「あ・・・そうですか。」
「うむ、ヒロ様ありがとう。
本当に助かった。」
「いえ、お役に立てたのであれば幸いでした。」
「じゃ、部屋に戻ってくれて良いぞ?」
「ええ、では失礼しますね。」
ここはそっと1人にしてあげた方がよさそうだ・・・な?
「ヒロ様、お帰りなさいませ。」
部屋ではルーアが待っていてくれた。
ルーア・・・俺は今日、君のお父さんを正しい方向へ進むよう頑張ったよ。
口には出せないが、心の中で思い浮かべ、ルーアの頭を撫でた。
お読み頂きありがとうございました。




