081 宿泊①
俺はスロウス公の屋敷へ泊まる事となったが、アーチャとアリシアはマーシャルさんの家に泊まる事となった。
会談の後、アーチャが
「今日もリアーサちゃん家に、泊まって良い?」
と聞いた事で、アーチャはしばらくマーシャルさんが護衛しつつ泊める事になったらしい。
「1度始めた事だ、最後までこのアホ娘に常識を叩き込んでくれる。」
とアリシアも付いて行ってしまった。
結構笑顔で言っていたので、アーチャのことが気に入ってしまったのだろう。
バカな子ほど可愛いと言うが・・・まさしくアーチャのための言葉・・・と思ってはいけないだろうか?
アリシアも面倒見が良く、良い母親になるだろうな・・・と思うのは良い事だろうか?
夕食では俺とスロウス公が差し向かいで食べる事となったが、緊張する事はなかった。
エルフは菜食主義なのか、献立は山菜のスープ、ライ麦パン、山ほどの果物だった。
テーブルマナーとか大丈夫かな?と思ったが、スロウス公はスープを思いっきり音を立ててすすったり、果物を手づかみで食べてたので、テーブルマナーを気にする必要はなかった。
ただ、山菜スープはきのこが沢山入っていて、だしが良くとても美味しく、果物も見たことがないものばかりだったが、味は桃やパイナップル等、知った味ばかりだったので美味しくいただきました。
食後に与えられた部屋に行くと、1人のメイドさんがお茶とお茶請けの準備をしてくれていた。
「ヒロ様、お待ちしておりました。
私、滞在中のお世話をおおせつかりました"ルーア"と申します。
これから暫くの間、よろしくお願いします。」
優雅な仕草で挨拶をしてきた。
エルフ特有の金色の髪と青い瞳、透き通るほどの白い肌の綺麗な子で、こちらも思わず。
「こちらこそよろしくお願いします。」
と返事してしまったほどだ。
この屋敷は驚くほど居心地が良く、いつまでも滞在してしまいたくなりそうだった。
ただ・・・1点だけ疑問がある。
・・・・・・なぜに幼女?
この屋敷では、もちろん男性の使用人もいる。
だが・・・女性の使用人は、ほとんどが小学生やせいぜい中学生までの幼女~少女のみなのだ!!
児童福祉法に触れないのだろうか?
そんな言葉が頭をよぎったが、そもそもここは異世界。
世界が違うのだ。
だからそのような法律は無いが・・・よく親御さんが仕事に出してるな・・・
さっきの件もあるし、絶対スロウス公の趣味・・・だよな?
「それではヒロ様、準備が出来ましたので、どうぞお飲みください。」
「あぁ・・・ありがとう。」
小さな体でぴょこんとお辞儀すると、部屋の隅で待機した。
だが、どう見ても完璧な所作で、プライド公の所で働いていたメイドさんより上なんじゃないだろうか・・・
「どうせなら、一緒にお茶でも?」
なんとなく、小さい子を働かせておくのは悪い気がしてお茶に誘ってみる。
「良いのですか!?
ありがとうございます。」
そう言ってルーアは向かいの椅子にお茶を入れると、にこにこしながら座った。
やっぱりこの辺はお子様だな。と安心してしまう。
「この果物、めったに食べる事出来ない物なんですよ。
食べて良いです?」
「ああ、どうぞ。」
すごく目をきらきらさせながら言ってきたので、俺の前においてあった茶請けの果物をルーアの前に出してあげる。
「ありがとうございます!!」
メロンのような果実を、笑顔でほおばるルーアを見ていると、妹のことを思い出す。
妹もスイカやメロンが好きで、8つ切りにしたメロンを嬉しそうに頬張っていたな・・・
いかんいかん、最近妹のことを思い出すことが多くなっている。
自分でも気付かないうちに、過去の想い出にすがっているのだろうか・・・
今は今として、きちんと受け入れないとな・・・
せっかくなので、入れて貰ったお茶を口には運ぶ。
美味い!?
味わいはレモンティーなんだが、渋みやえぐみがまったくなく、するっと喉を通っていく。
「このお茶は?」
「それは世界樹の葉を煎って干したお茶なんです。
この領最大の特産品なんですよ。」
「へぇ、美味しいね。」
「それに、私がこのお屋敷の中で一番美味しくお茶を入れることが出来るんですよ♪」
「そうなんだ?
ルーアが入れてくれたお茶は凄く美味しいよ。」
「良かったぁ、ありがとうございます。」
感心し、素直に礼を言うと、ルーアは凄く嬉しそうに微笑んだ。
久しぶりに穏やかな時間だ・・・
こういうのも悪くないな。
ふと考える。
スロウス公の協力はうまく取り付けることが出来た。
詳しい話はこれからだが、何とかなりそうだ。
でも予想外の事実もあった。
まさかスロウス公があの手の人だったとは・・・
絶対、秋葉原とか連れて行ったら戻ってこないだろうなぁ・・・
それに、ここのメイドさん達も趣味で揃えたんだろうが・・・成長したらどうするんだろうか?
コンコンッ
「あっ、はい!!、ヒロ様よろしいでしょうか?」
来客にルーアは背筋をただし、椅子から降りると、来客を通して良いか確認してくる。
「あぁ、いいよ。僕が出る。」
「いえっ、ヒロ様はそこでお待ちください。」
代わりに出ようとするが、凄い勢いでドアの前まで飛んでいった。
「はいっ、どなた様でしょうか?」
「あぁ、オレオレ、俺だよ俺。」
「生憎、名乗る名前の無い方をお通しする訳には行きません。」
「ほら~、オレオレ。俺だってば。」
「残念ですが、たとえ領主様でもお引取りください。」
「判ってるじゃんよ~。通してってば。」
「お名前をお名乗りください。」
「ちぇっ、スロウス公さまですよ~。」
どこかで聞いたようなやり取りだ・・・
「あぁ、スロウス公様でしたか。
これは失礼いたしました。
ヒロ様、お通ししてよろしいでしょうか?」
わざとらしい返事をすると、入れて良いか確認してくる。
「はい、どうぞ。」
「いや、ありがとう。
この子も有能なんだけど、融通が利かなくてね。」
「まぁ、あのやり取りだったら、間違いの無い対応だったかと。」
「おぅ、ヒロ様も結構厳しいね・・・」
うぅん、いちいちオーバーアクション気味な人だな。
どこかの獣人さんを思い出してしまう。
・・・というかキャラ被って無いか?
「まぁ、夜更けに申し訳ないと思ったけど、ヒロ様に見て欲しい物があってね。」
「見て欲しい物ですか?」
「そうそう。
あ、もちろん危険は無いし、騙すつもりも無い。
どうだろう?付いてきて貰えないだろうか?」
う~ん、あまり勝手な行動をするのもどうだろう・・・
協力してくれるとは言っているが、元々ラース公側の人だって話しだしな・・・
「そうだな・・・もし付いてきてくれれば、一回だけ『スキル確認』をさせてあげるよ。
名前を教えるつもりは無いけどね?」
この提案には心が傾きかける。
あの速さ、あの殺気。
もしコピー可能なスキルで再現する事ができれば、この先の為にもなる・・・
「う~ん・・・
あまり勝手な事をする訳にも行かないですから・・・」
「なら、このルーアもあげちゃおう。」
「あ、いらないです。」
「ガーン・・・」
あ、しまった・・・
つい即答で返事してしまったが、部屋の隅でルーアが落ち込んでいる。
「と言うか、エルフ族ってだれかれ構わず人をあげたりするんですか・・・?」
マーシャルさんといいスロウス公といい・・・
「あれ?他の種族ってしないの?」
常識だった!?
「えぇと・・・いくら何でも、人を簡単にあげるとか言わないかと・・・」
この言葉にはスロウス公の方がびっくりだった。
「そうなのか、驚きだねぇ。
エルフ族では、気に入った人間に自分の娘を嫁に出すのは常識なんだが・・・」
え・・・・?
「今、娘って・・・?」
「ん?この子は言ってなかった?
僕の娘でルーア、よろしくね。」
「お父さん、働いている間は、侍女の1人でしかないですよ。
ヒロ様、一応そう言う事になります。よろしくお願いしますね。」
「スロウス公・・・幼女愛好家じゃ・・・?」
「うん、娘が可愛くて可愛くて、ついつい幼女が好きになってしまってね。」
・・・・・・駄目だこりゃ。
「ルーア、苦労してるんだね・・・」
「ヒロ様・・・ありがとうございます。」
「まぁまぁ、情報と娘あげるから着いて来て。」
俺達が呆れているのには意も解さず、俺を連れて行こうとする。
「はぁ・・・俺は幼女好きじゃないですからルーアは要りませんが、そこまで言うなら付き合いますよ・・・」
「ほんと?ありがとう。
直ぐそこだから、こっちこっち。」
スロウス公は部屋から飛び出すと、廊下でおいでおいでと手招きしている。
「ええと・・・ヒロ様、行ってらっしゃいませ。」
ルーアは呆れ半分、ため息半分で俺たちを送り出した。
「じゃぁ、行ってくるよ。」
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