078 黒姫との会談
「改めて、ご挨拶させていただきます。
グリトニー領元領主の娘、アーチャ様。
元魔王、アリシア様。
魔王候補、ヒロ様ですね。
私はこちらスロウス領、領主補佐のリアーサと申します。
世間では黒姫と呼ばれております。
ちなみにこの駄目父親はスロウス領、部隊総長マーシャルと申します。」
リアーサが紹介すると、マーシャルさんが居住まいを正して挨拶してくる。
「少し話が脱線してしまいましたが・・・
マーシャルと申します。
改めてよろしくお願いします。」
改めて挨拶をされたので、こちらも返答しないといけないな。
「改めて、ヒロと申します。
魔王候補は・・・自分でそんな柄ではないと思っているので、今は考えないでください。
今までは色々と流されるままに旅をしていたのですが、今回プライド公からの手紙に有ったように、一連の流れの真相を確かめるべく、スロウス公の力を借りたいと思い、面会をお願いしました。」
「我はアリシアと申す。
今は、ヒロと共に旅をしておる身だ。
色々と思うところもあるが、ヒロの付き添いで来た様な物だ。」
「改めて挨拶申し上げます。
私は元グリトニー領、領主の娘。
現領主の姪となるアーチャと申します。
叔父の異変の原因を探るべく、亡命という形でスロウス領主様のお力を借りたく面会を申し出ました。」
3者3葉の理由とあわせて改めて挨拶をする。
「とりあえず、先ほどのお話はまた今度にすると言う事でよろしいですね?」
リアーサがマーシャルに確認すると、不承不承という形で頷いた。
先ほどまでの、恥ずかしがりな少女の変貌振りに少々面食らっていると、
「一応説明しておくが、こいつは仕事となると性格変わるから、さっきまでと同じと思わないほうが良いぞ?」
マーシャルさんが理由を説明してくれた。
確かに仕事となると性格変わる人っているよな・・・
ここまで変わるのはびっくりだが。
「ヒロ様、アリシア様、まずはアーチャ様の件から結論を出させていただいてよろしいでしょうか?」
「あぁ、それで良いですよ。」
「うむ、その方がよかろう。」
俺たちの事情は少々込み入っている。
まずはアーチャの亡命受け入れからやって貰った方が良いだろう。
「では、アーチャ様、幾つかお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「はい!!」
「大体の事は昨日お聞きしましたが、核心は聞いておりませんでした・・・
アーチャ様、貴方は亡命をして何をしたいのですか?」
「ええ・・と・・・」
いつもははきはきと応えるアーチャとしては珍しく、口ごもっている。
ちらちらとこちらを見ているので、俺達がいては応えにくいのだろうか?
「アーチャ様、大丈夫です。
おそらくヒロ様達も無関係ではございません。」
「えっ、そうなんですか!?」
「はい。
ヒロ様は前グリトニー公とお知り合いですから。」
凄いな・・・どこまで知っているのだろう?
「そう言えば、話してなかったかな?
この刀はおっちゃんから譲ってもらったんだ。
証明にならないかな?」
腰に差してあった刀をアーチャの前に置く。
「これは・・・宝剣イフリート・・・
それではヒロ様、お父様に認められていたのですね。」
「うん、言ってなくてゴメンね。」
「いえ、大丈夫です。
私のほうこそ気付かずに申し訳ございませんでした。」
アーチャの場合は気付く以前の問題だろうからなぁ・・・
「それでは改めてお願いします。
父を助ける為、助力を頂きたいのです!!」
助ける!?
どういうことだろうか・・・
アーチャの話は2転3転して本質が見えてこない・・・
また、配下の人の話と齟齬が発生しているのだろうか?
アーチャは懐から指輪を取り出すと、机の上に取り出す。
「これは父の生命力を示す魔石です。
元は綺麗な黄色だったのですが、今は濁った色です。
ですが、魔石が割れていないと言う事は、父は生きていると言う事なのです!!
お願いします。
どうか・・・どうか、父を助ける手助けをしてください。」
涙を流しつつ、リアーサをしっかりと見つめるアーチャ。
・・・今までの行動をかんがみると、素直にはいそうですかとは考えられない。
だが・・・今のこの真剣なアーチャは嘘を言っているようにもとぼけているようにも見えない。
「これがドワーフ族にのみ伝わる生命の魔石ですか・・・
少々触っても?」
リアーサは指輪を受け取り、しっかりと確認している。
(アリシア、どう思う?)
俺はアリシアにコンタクトを取る。
今はスマホを支えているから念話が通じるはずだ。
(うむ・・・本来の姿が見えぬが、今のアーチャは真剣じゃと思う。
おそらく、今までの中で始めて見せた顔ではないか?)
(うん、こんなアーチャは始めてみた。
今のアーチャなら大公の娘といわれても納得するかもしれない。)
(そうじゃな。
そしてヒロは判らないと思うが、魔石というのには色々種類があってな。
ドワーフ族は特殊な製法により、自身の生命力と連動する魔石を作ることが出来るのだ。
あれがオーチャの魔石で間違いないなら、命は残っている。
死んでいるなら石が割れておるはずだからな。)
(そうか、ありがとう。)
(うむ、お主もオーチャは好いておるからな。
無事でいると良いの?)
(うん、そう願っているよ。)
「ありがとう、お返しします。
おそらく貴方が言っていることは、間違いないでしょう。
後ほどスロウス公と相談の上、返事をしましょう。
それまでは私の家へ滞在する事をお勧めします。」
「ありがとう、リアーサちゃん♪」
あ・・・最後にはいつものアーチャに戻ってたな。
まぁ、いつものアーチャの方がなんか安心するし、良いけどな。
「続いてヒロ様、よろしいでしょうか?」
「はい、よろしくお願いします。」
「はい。」
俺を見ると、ちょっと顔が赤くなる。
先ほどの話をまだ気にしているんだろう。
まったく、マーシャルさんは・・・
「大体の内容はプライド公からの書状に書いてありました。
まずは、結論から申しましょう。
私どもスロウス領は、プライド公の書状に対し、回答を保留させていただきたいと思っております。」
リアーサは可愛い顔と裏腹に、非常な決断を俺たちに突きつけた。
お読み頂きありがとうございました。




