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075 守衛長

「話を聞かせてもらって良いかな?」


詰所の奥に案内されると、そこには身体が浅黒く、筋肉隆々の男性兵士さんが居た。

俺の知識でいうなら、先ほどの人達はエルフ族で間違いないだろう。

鍛えているのは判るが、どことなくしなやかで線が細い感じがしていた。

だが、目の前の男性はダークエルフ族だ。

いかにも力自慢という感じでエルフとはイメージがまったく違っている。


この世界ではエルフとダークエルフの仲が険悪・・・と言う事はなさそうだ。


俺の視線に気付いたのか、座っていた男性が改めて挨拶してくれた。


「ダークエルフを見るのは初めてかな?

 驚かなくとも良い。

 確かに個体数は少ないが、ここはエルフの国。

 町の中を歩けば、よく見かけるだろう。


 俺はこの南門を任されている者で『マーシャル』と言う。

 よろしくな。」


ニカッと笑うと対照的に真っ白な歯がキラッと光る。


か・・・かっこいい・・・

元の世界で、誰かをここまでかっこいいと手放しで褒められるほどの人はいなかった。


「始めまして。

 俺は旅人のヒロと申します。」


声がわずかに緊張してしまう・・・

一応、そのケは無いはずなんだが・・・


「ふわぁ・・・すごい筋肉ですねぇ。

 私はアーチャと申します。

 前グリトニー領の領主の娘です。」


深々とアーチャがお辞儀をする。

この仕草を見て、中身が残念な子だとは間違っても思いはしまい。


「君が先ほど亡命を宣言した少女だね?

 ・・・ふむ、なるほど、その紋章は確かにグリトニー領領主にしか伝わっていない物だ。

 だが、素直に「はい、判りました。」と受け入れる訳にもいかないのだよ。

 その辺は判って頂けるかな?」


「はい、存じております。」


あでやかに微笑むアーチャ。

馬車の中でこの練習は何度もしてきたからな。

相手がスロウス公じゃなく、門番の統括者だが・・・

さすがに最低限のラインは突破してくれたようだ。


「ご丁寧にありがとう。

 では聞かせてもらって良いかな?」


マーシャルさんはそう言うと、俺達に椅子を勧めてくれた。

ありがたく座らせて頂き、質問を受けていく。


「まず、目的と理由を聞かせてもらえるかな?」


「はい。

 叔父が新しくグリトニー領領主となり、私は遠縁の親族へ嫁に出される事になりました。

 その時、父の部下達が私を亡命させようと、色々と手を尽くしてくださいました。

 その結果、私は数名の侍女と従者に連れられてスロウス領へ亡命してきました。

 その際、魔物に襲われ折にヒロ様へ助けていただき、スロウス領までお送り願った次第です。


 私の目的は、お父様が戻ってきた時の居場所を残しておく事です。」


アーチャの目的が自分ではなく、親の為とは正直思っていなかった。

だが、アーチャは真剣だ。

アホの子じゃなく、一人の領主の娘として話をしている。


「そうですか。

 ですが、貴女の亡命を受け入れた場合、我がスロウス領はグリトニー領に宣戦布告を受ける可能性も有ります。

 そこまで考えた上での亡命でしょうか?」


「叔父もそこまで馬鹿な真似はしないと思います。

 ですが、万が一そのような事態となれば、私を差し出してください。

 私は自分の身や父の立場を守りたいと思っていますが、その為に犠牲を強いる真似だけは出来ません。

 

 叔父は小物と聞き及んでおります。

 後方支援国とは言え、今の時期にスロウス領に宣戦布告を行う事が、どのような状況を引き起こすか判らない筈がありません。

 

 それに、何かが裏で動いている可能性すらあります。

 今、父の手の物が真相を探っているので、その結果がでるまで私は父の為にも自分の身を安全な場所へ置いておかなければならないのです。」


「・・・判りました。

 ですが、何故遠縁の親族へ嫁ぐのではなく、亡命を選んだのですか?」


アーチャは困った顔をする。

そういえば、流れでつれて来ることになったけど、しっかりとした理由を聞いたことは無かったな。


「それは・・・」


「それは?」


「すみません、従者にそういうもの・・・と説明され、納得してしまいました。」


「・・・そうですか。」


・・・・・・さすがアーチャ、期待を裏切らない・・・


(のう、ヒロや。)


(ん?アリシアどうしたの?ここに来てからずっと黙っているし。)


(黙っておるのは、下手な騒ぎにならぬよう居ないものとして扱ってもらおうと思ってな。

 それより、今のアーチャの返答・・・変じゃ無かったか?)


(変?アーチャだし、言われたとおり逃げ出したって言うのはありえそうだけど?)


(そうではなく、何か妙な間が気になっての。)


(ふぅん・・・何か特別な理由でも有るのか後で聞いてみようか?)


(そうだの。頼んでも良いか?)


(判った、聞いてみるよ。

 駄目だった時はアリシアのほうからお願いね。)


(判った。)


ふむ・・・

この会談が終ったらそれと無しに聞いてみるとするかな?


「今日はこの話を黒姫様に報告し、結果は明日お知らせしたいと思っております。

 それまでは申し訳ございませんが、兵士宿舎をお使いください。


 確か1室空いていたはずです。」


1室か・・・となると今日はアーチャと同じ部屋となるな。

ちょうど良い、機会を見て色々と聞いてみるか。


「それはいかんぞ!!」


いきなりポケットの中から声がする。

先ほど黙っているといったばかりのアリシアが何故か急に声を出したのだ。


「ヒロ君・・・だったね?

 今のは・・・?」


あちゃぁ・・・


(アリシア、急に大きな声出すなんてどうしたんだよ?

 黙ってるっていったばかりなのに・・・)


(す・・・すまんっ・・・少々受け入れがたい提案だったものでなっ)


(受け入れがたい?

 俺は1部屋でも大丈夫だぞ?

 所詮妹と一緒に寝るようなものじゃないか?)


(寝る!?

 やはりいかん・・・どうしても一緒はいかんのだ!!)


「今のは我だ。」


再度アリシアの声がポケットからする。

俺は覚悟を決めると、スマホをポケットから出した。


「マーシャル殿、今まで黙っていた非礼をわびよう。

 我はヒロと共に旅をしておるアリシアと言う。」


「ほう・・・これはこれは・・・

 精霊族・・・でしょうか?

 始めてみましたが、精霊族とはこのような存在だったのですな?」


へぇ、精霊族なんているんだ?

アリシアのような存在なのかな?


「うむ、我は電子の妖精という者でな。

 他の妖精と違い、このような板の中に住んでおるのだ。」


なんとかごまかそうと冷や汗浮かべながら嘘ついてるし・・・

実際は違うようだな。


「それで、アリシア殿が急に話し出したのは一体どのような用件で?」


「うむ、それだがな・・・アーチャとヒロは同じ部屋で寝るのがまずいと言うか、一応男性と女性なのだから、なんとか別々の部屋とすることはできぬか?」


「ふむ・・・そうですね。

 アーチャ殿も護衛と一緒の方が安心できると思ったのですが、何か問題がおありなんですね?」


アーチャと俺が一緒だと何か問題があるのだろうか?


「うむ・・・あー、ヒロ、少々席をはずしてもらえないだろうか?」


「え・・・どうやって?」


この部屋には俺達3人とアリシアのスマホだけであり、席をはずすのは難しいのでは・・・?


「あぁ、ちょっと扉の前に出ていてくれるだけで良いよ?

 それほど問題も無いだろう。」


「はい・・・判りました。」


なんか引っかかるものを感じるが・・・まぁ言う通りにしよう。


「あぁ、すまぬがアーチャも外して貰って良いか?」


「はい?・・・判りました。

 ではアリシア様、失礼しますね。」


そう言ってアーチャは先に部屋の外へ向かった。


「ほれ、ヒロもはよぅ。」


「あ・・・あぁ・・・」


アーチャと一緒に部屋の外に向かう。




パタン


部屋から出ると、廊下に長椅子が置いてあるので、アーチャと一緒に座った。

アーチャとの距離が離れすぎていないか?

俺が椅子の端に座ったら、アーチャも逆側の端に座っている。

これは何か避けられているのだろうか・・・


「なぁ、アーチャ。」


「はい、何でしょうか?」


「なんでそんなに離れているんだ?」


「はい、アリシア様から2人きりになったときは、なるべく3m以内に近づくなと言われましたので。」


何それ!?

アリシアさん、俺の事を何だと思っているのですか!?

確かに最初に彼女が欲しいとか騒いだ気がするけど、こんな少女に何かするつもりなんて無いですよ!?


等と時間にして2・3分の話をしていると、マーシャルさんが扉から顔を出す。


「2人ともまたせた。

 中に入ってくれ。」


何か、俺に対して警戒の視線を感じたが・・・どうしたんだろうか?


「ヒロ君は・・・確か護衛と言っていたね?

 となればこの国へ来た理由も目的も同じような物かな?」


おおっと、そうだった。

明日聞いてきてくれるなら、一緒にこの手紙もお願いした方が良いかな?


「いえ、俺は俺で用事があってきました。」


「ほう?

 どのような目的と理由か教えて貰えるかな?」


「ええ、判りました。

 俺はプライド領領主様より、この手紙をスロウス領へ届けるよう言付かってきました。」


「ふむ、プライド領領主様か・・・

 ちょうど今からスロウス領領主様へ本日の報告書を提出に行く所だ、この封書は私が黒姫様へお出ししよう。」


「はい、よろしくお願いします。」


そう言って俺はアクスさんより預かった?手紙をマーシャルさんへ手渡した。


「確かに預かった。」


「ありがとうございます。」


「それでは、君達を改めて招待しよう。

 ようこそ、エルフ達の都、スロウスへ。」


そうして俺達はマーシャルさんと別れて兵舎へ向かう事となった。

・・・が?


「さて、アーチャ殿、貴方は今日は私の家でおもてなししましょう。

 ヒロ君はそこの兵士に空き部屋に案内して貰うと良い。」


どういうわけか、アーチャはマーシャルさんの家でお世話になる事になったらしい。


「アリシア殿、助言ありがとうございました。

 ヒロ君、悪いがアーチャ殿はお預かりさせて貰うよ?」


有無を言わせぬ迫力で顔を近づけてくる。


「あ・・・はい・・・お願いします。」


俺はそれだけ言うのがやっとだった。


「それと、私の家にはアーチャ殿と同じぐらいの娘がいるんだが・・・

 ヒロ君、なるべく家には近づかないように頼むよ?」


「え?・・・は・・・はい。」


一体どうしたのだろうか?


「アリシア君もお借りさせて貰うよ?

 彼女もアーチャ殿に話があるようでね。」


「はい、それは大丈夫です。

 申し訳ありませんが、よろしくお願いします。」


「判った。

 安全はしっかりと守ろう。

 ・・・・・・だから、君は近づいちゃいかんよ?」


「あ・・・はい。」


それだけ言うと、マーシャルさんはスマホを片手にアーチャを案内しつつ外に出て行った。




部屋は4畳ほどの大きさに2段ベットが1つと作業机が2台。

後は人一人がぎりぎり歩けるスペースしか残っていない。


「間違いなく寮・・・だな。」


その部屋に案内されると、俺は1人でベットへ付く事になった。

なにか、アリシアと話してからマーシャルさんの態度がおかしくなったが、一体なんだったんだろうか?

お読み頂きありがとうございました。

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