073 鳥頭
目が覚める。
早めに次の町へ向け移動しようと、いつもより2時間は早い起床だ。
トントントンッ
「アーチャ、起きているか?
準備でき次第出るぞ。」
「・・・・・・」
返事が無い。
トントントントンッ
「ヒロ、五月蝿いぞ。」
先にアリシアが目を覚ましたようだ。
アーチャは服を自分で脱いだ事も無いと言うので、アリシアが教えつつ自分で出来るよう訓練していた。
その後も一人で必要な事が出来るよう、一緒の部屋で色々教えながら寝たようだ。
「アーチャ、起きぬか!!」
「んにゅぅ~、後5分・・・」
この後5分はどの世界でも共通らしい。
「えぇい起きぬかっ!!」
「う、ひゃ、ひゃい!!」
順調に教育がなされているようだ。
「アーチャ、朝ごはんと弁当の注文をしに下に降りているから、準備が出来たら降りてきてね。」
「はいっ!!」
返事は良いんだよなぁ~・・・
後はアリシアを信用しつつ、下に降りる。
「早いねぇ、もう出るのかい?」
「ああ、それで朝ごはんの準備と弁当をお願いしたいと思って。」
「あいよっ、弁当は10個あれば良いかい?」
すでにアーチャの食欲が受け入れられている・・・
多分他の宿屋に行っても伝わってるんだろうなぁ・・・
っと、弁当か。
昨日あれだけ食べた上で10人前食べてたからな。
「ん~、20個でお願い。」
「にっ!?・・・あいよっ、20個だね。急いで作っておくよ。」
うん、一瞬吹きかけたな。
俺も言われたら吹くと思う。
もぐもぐ・・・うん、うまい。
今食べているのはレタスときゅうりのサンドイッチだ。
今日の朝食はこのサンドイッチと豆のスープだ。
俺の目の前にはサンドイッチが2個とスープの入った皿があるが・・・
もぐもぐもぐもぐもぐ、はぐはぐはぐはぐはぐ
目の前の少女は1斤のパンを5本と寸胴に入ったスープを食べている。
エルのときも思ったが、なんでこの身体であれだけの量が入るんだろう?
やはり、この世界では胃袋が4次元化しているんだろう。
「アリシア、次の町にはどのぐらいで着くと思う?」
「そうだな、順調に行けば徒歩で10時間、馬車で4時間というところかの。」
「そっか、なら早く出れば間違いなく日があるうちにいけそうだね。」
「そうじゃな。」
「ふぅ、ご馳走様でした。」
相変わらず食べ終わるのも早い。
さっき見たときはまだ半分だった気がするが・・・
「じゃ、出るとするか。」
「はい♪」
銀貨10枚を渡すと宿屋を出る。
宿泊費は銀貨2枚だったと思うんだがなぁ・・・
深くは考えまい。
馬車は街道を走る。
大森林の中だが、街道は通っている。
「そういえば、アーチャっておっちゃんの娘なんだよな?」
「はい、そうです。」
「アーチャは11・2歳ぐらいに見えるけど、おっちゃんはいくつぐらいなんだ?」
「私は15歳で、お父さんは42歳です。」
「へえ、2人とも見た目と実年齢が結構違うんだな。」
「はい、よく言われます。
お父さんあれで結構気にしてるんですよ。」
「あはは、でもどう見ても50台後半っぽい顔だよな。」
「う~、あまり言わないであげてくださいよ。」
「ごめんごめん。」
等と平和な会話を続けながら馬車の旅を楽しんでいた。
「ヒロ、アーチャも有用なスキルを持っておるかも知れん、確認してみたらどうだ?」
アリシアのこの言葉がパンドラの箱を開けるまでは・・・
「ん~、そうだな。
アーチャ、ちょっと見せてもらって良いか?
真名は知らなくても確認できるから。」
「はい?良いですよ?」
アーチャの同意も得たことだし、額をあわせて『スキル確認』っと・・・
『スキル』
○剛力 ○硬化 ○土魔法 ○錬金 ○鳥頭
・・・・・・鳥頭!?
とりあえず、『剛力』、『硬化』、『土魔法』、『錬金』をコピーして・・・っと。
「なぁ、アリシア・・・」
「ん?ヒロよ何か珍しいスキルでもあったのか?」
「鳥頭って、スキルに入るんだな?」
「うむ?ヒロよ、少し聞き違えたようじゃ。
もう一度言ってくれぬか?」
「アーチャのスキルに『鳥頭』ってスキルがあったんだが・・・」
「・・・・・・」
「はい、アーチャずっと前からこのスキル持ってましたよ。
しかも熟練度10もあるんです。
MAXですよ?凄いでしょ♪」
「えっと・・・その・・・なんていうか・・・」
「ヒロよ、少々待ってくれぬか?
ちと常識を整理したい・・・」
「ああ・・・」
そうだ、詳細だけでも確認しておかないとな。
あの鳥頭とまた違った有用スキルかもしれない・・・
『スキル詳細』対象『鳥頭』
○鳥頭―物事を記憶する事が困難になる。熟練度が上がる毎、その精度は高くなる。 熟練度10
※固有スキル
いや、駄目だろコレ。
「なぁ・・・」
「・・・なんじゃ?」
「固有スキルとか書いてあるんだが・・・」
「・・・そうか。」
アリシアも達観モードに入ってるよこれ・・・
「・・・とりあえず凍結しておく?」
「・・・いいねぇ。」
と言う事で、
『スキル凍結』対象『鳥頭』
これで・・・よしっと・・・
「あら?・・・」
額を離すとすぐに反応があった。
「どうした?」
「いえ・・・何か行いましたか?」
「うん、ちょっとね。
何か変化があった?」
「えっと・・・そうですね・・・
今までは頭の中に霧があったのですが、その霧が晴れたと言いますか・・・?」
成功・・・したのかな?
「ちなみに昨日教えた金の使い方を覚えておるか?」
「えっと・・・、物を手に入れるには対価が要って・・・えぇと・・・」
「お金が要るんだよ?」
「あぁ、そうでしたね。」
「金の種類は覚えとるか?」
「えぇと・・・銅と・・・金と・・・えぇと・・・・えぇと・・・」
「金1枚が銀100枚、銀1枚が銅100枚だよ。」
「そうそう、そうでした~♪」
スマホの中でアリシアが頭を抱えてる・・・
なんでこのぐらいの事が覚えていられないんだ・・・?
「ちなみにお金の使い方覚えてる?」
「はい♪物を購入するときはお金を使うんですよね?」
「そうそう、で、お金の種類はどう?」
「はい、金貨と銀貨と銅貨があって、金貨1枚が銀貨100枚分、銀貨1枚が銅貨100枚分ですよね♪」
「お~、今度はバッチリだね?」
「はい、さっきまではもやもやした中に入っていたのですが、すっきりしたらさくっと入ってきました♪」
どうやら・・・今までの努力は水の泡だったらしい。
「アリシア・・・」
「判っておる。
アーチャ、今日から色々教えるからの!!
ビシバシとじゃ!!」
「は・・・はいっ!!
アリシア様、よろしくお願いします。」
こうしてスロウス領首都に着くまでアリシアはアーチャに付きっ切りで常識を教えて過ごした。
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