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071 お嬢様

町の中には活気があった。

鍵付きの家を持てば、宿屋は必要ないが、鍵付きの家というのはかなりの掘り出し物らしく、鍵無しの家を手に入れるのが一般的らしい。。

なので、こういった宿場町は栄えるようだ。

とアリシアに聞いた。


「さて、まずは宿に行こうか。」


先ほどの漫才コンビにお勧めの宿を聞いておいた。

今回は連れも居るし、家に帰っても一人なので外泊をしようと思った。

前の世界では色々とあってボロアパートに一人暮らしだったのだが、この世界に来てから騒がしい日々が日常になっていた。

今更一人の家に帰ると言う事に寂しさを感じていたのだ。



きっと元の世界で養父は高笑いをしているんだろう。

俺が居なくなった事で、遺産が全て手に入るんだからな・・・



おっと黒くなってしまったな・・・

つい昔の事を思い出してしまった・・・


「アーチャ、行こうか。」


さっきまでアーチャが居た場所には誰も居ない。

・・・まさか追っ手が居たか!?


「ヒロ様~、このソーセージすっごく美味しいですよ~。」


道の外れにある屋台でホットドックをほおばるアーチャの姿があった。

・・・・・・これはまさか?


「・・・アーチャ、お金は払ったのかい?」


俺が聞くと、アーチャはきょとんとした顔で、


「おじさんが「食べるかい?」って渡してくれたんですよ?」


・・・・・・・マジ?

屋台のお兄さんを見る。


「お、あんたが保護者かい?

 銀貨1枚ね。」


高っ!?

銀貨1枚って1万って事じゃないか・・・

この世界のホットドックってそんなに高いのか!?


「ちょっ・・・銀貨1枚ってぼったくってない?」


お兄さんに噛み付く。


「と言ってもねぇ?

 今25個・・・いや、26個目食べてるからね。

 これでもサービスしてるんだよ?」


指差された先には『ホットドック1個 銅貨4枚』と書いてあった。


26個!?

驚いてアーチャを見ると、


「えへへ~、これ美味しいです~。いくらでも食べれるます~。」


凄く美味しそうに26個目も完食していた。


「アーチャ、色々と聞きたいことがある?」


「はい?なんでしょうか?」


その間にもアーチャはお兄さんからホットドックを受け取り食べている。

27個目が3口で消えた。

28個目も同じく。

29個目も・・・

30個目を渡した所で我に返った。


「ストップ、スト~ップ!!」


「ヒロ様、どうしたのですか?」


「チッ」


いや、そこの屋台のお兄さん、今チッって聞こえたぞ。

実は確信犯だったんじゃないだろうか・・・


「アーチャ、君はこの前なんで兵士に追われたか判っているか?」


アーチャは小首をかしげ、


「はい、従者が屋台のおじさんを半殺しにしたからですよね?」


・・・判ってねぇ・・・・・・。


「あのな・・・、その前にアーチャが食い逃げしたってのが抜けてるぞ。」


その言葉に今度は屋台のお兄さんの目が光る。


「坊主、話をするのはかまわねぇが、銀貨1枚と銅貨50枚だ。」


・・・従者の気持ちが少しだけ分かった気がした。


「判ってます。払いますよ・・・

 でも、判っててやったんだから、銀貨1枚と銅貨20枚。

 良いですよね?」


屋台のお兄さんは笑うと、


「っか~、参った参った。

 しゃぁねぇ、銅貨20枚分はサービスしてやるよ。

 銀貨1枚と30枚だ!!

 お嬢ちゃんのお陰でしっかりと宣伝もできたしな。」


その言葉につられて周りを見てみると、人、人、人の壁が出来上がっていた。


「へぇ、あの店美味しいんだ?」


「そういえば結構旨かったんだよなぁ。」


「今日の夕飯はホットドックにしない?」


という声が聞こえてくる。


「宣伝費って事ですか・・・

 まぁ、安くなる分には助かりますが・・・」


「へへっ、毎度。

 口論は裏でやってくんな、スペースぐらいは貸してやるよ。」


直訳すると、店の邪魔はしないでくれ。と言う事か。

まぁ、俺は俺でアーチャに教育しないといけなそうだ。

ありがたく貸してもらうとしよう。


「じゃ、ありがたく。

 アーチャ、ちょっとこっちおいで。」


「はい♪」


上機嫌でアーチャは付いて来る。

・・・これはこってりと絞ってやらないといけないな。


「で、アーチャ。

 何でホットドックを食べて続けたんだ?」


「だって、美味しいじゃないですか?」


「・・・・・・人の話をきちんと聞く時は、食事の手を止める。」


「はーい。」


「それと・・・この前の町でも同じように「食べるかい?」と聞かれて串焼きを食べ、最後には食い逃げ~って言われたじゃないのか?」


「すごいですっ!!なんでそんな事が判るんですか!?」


・・・もしかしたらと思っていたが・・・


「アーチャ、今まで鳥頭とか言われた事無いか?」


「ヒロ様凄いっ!!そんなことまで判っているんですね!!」


いや、ちょっと話しただけで判った・・・



これは失敗したかもしれない。

何が失敗かって?

そりゃもちろん、アーチャとスロウス兵の話を聞いて全て判ったと思っていたことだ。

間違いなく、従者の方々は悪くなかったかもしれない。

置いてきてゴメンな、従者さん達。


「アーチャ、君はもう少し人の話を聞かなければいけない。」


「はい!!ヒロ様のお話聞かせていただきます!!」


多分、良い子の筈なんだけどなぁ・・・


(アリシア、この子どうしよう?)


(うむ、我は知らん!!)


見捨てられたっ!?


(と言う訳にも行かぬじゃろうな。

 まぁ、片時も目を離さず常識から教えてやらぬばならぬとは思うぞ?)


(やっぱりそれしかないか?)


(うむ。)


「じゃ、まずお金についてから覚えていこうか。」



それから物を買うこと。

お金について。

商売人の口車に乗せられるな。

と話した上で銀貨2枚を渡した。


「これが今のアーチャの全財産だ。

 スロウス公に亡命するまではこのお金だけでやりくりをするんだよ?」


基本的に衣食住は揃っている・・・はずだ。

お小遣いとしてなのでこれだけ渡しておけば心配ない・・・と思いたい。


「はい!!ありがとうございます♪」


返事は良いんだよな~、返事は・・・


「じゃ、宿を取りに行くから今度ははぐれず着いてきてね。」


「はい♪」


それから40分後、兵士さんに案内されていた宿屋へ着いた。


「ヒロ様~、このおまんじゅうとっても美味しいですね~。」


一緒に歩いていたアーチャは、いつの間にか両手一杯の肉饅頭を持っている。

きちんとお金は払っていたので、今回は問題ないだろう。

なんでホットドック30個食べたすぐ後に、肉饅頭15個も食えるのかは知らないが・・・

きっとエルと同じで胃袋がアイテムボックスに繋がっているんだろう・・・

考えたら負けな気がしてきた・・・


キンコーン


「いらっしゃ~い。」


「今日の宿と夕飯をお願いしたいのですが。」


「おや、あんたは・・・」


まさか気付かれた!?

手配書はなかったはずだが・・・

アーチャの件も示談してあるはず・・・


「嫁さんとは仲直りできたみたいだね、良かった良かった。

 君の事は宿屋ギルドで有名になっていたんだよ。

 でも、念のため一番頑丈な部屋でいいかい?」


・・・そっちだったかぁ~


「いえ、その件とはまた別件なので、シングル部屋を2部屋お願いします・・・」


宿屋ギルド・・・その情報スピード恐るべし・・・


「ほう?

 嫁さんとは別の部屋にするのかい?

 まぁ良いけどよ。

 シングル2部屋で銀貨2枚、夕飯は別料金だ。

 この下の酒場で食って貰うようになる。いいかい?」


宿屋ギルドの情報網は恐ろしそうだ。

きちんと言って置こう。


「今回はこの方の護衛なんでね。

 夕飯は判った。後で食いに降りさせて貰うよ。」


「まいど~。」


こう言って置けば良いだろう。



その日の夕飯、俺は銅貨6枚の定食。アーチャは銅貨10枚の定食を10人前食べた。

早いうちにスロウス公へアーチャを届けないと、と再度心に誓った。

お読み頂きありがとうございました。

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