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063 天使

そんな中、後ろからうめき声が聞こえる。


「う・・あ・・・あ・・あ・・・」


振り向くと、エルが頭を抑えてうずくまっている。


「イヤーーーーーーー!!」


絶叫と共に頭を振り乱す。


ドラゴさんの言った言葉を思い出す。


【恐らくワシが死ねばその娘の記憶がよみがえる。

 その時、支えてやれるのはお主だけじゃ。】


記憶が蘇える・・・あの時の言葉通りに何かの記憶が蘇ったというのか・・・


何が出来るのかなんて判らない。


だが・・・


「エルっ!!大丈夫だ、俺が付いている!!」


暴れようとするエルを後ろから抱きしめる。


エルの爪が背中に食い込む。


背中の肉がえぐられる・・・



エルのうすい水色だった髪が赤く染まっていく。


一体何が起こっているんだ?


エルの身体が力を失っていく。


「ヒロ、もう大丈夫・・・ありがとう。」


エルの声がすると、背中に暖かい光を感じる。


「どうやら思い出したみたいじゃな。」


「ええ、残念ながら・・・ね?」


アリシアの声に返事を返しつつ、軽く胸を押される。


離して、という合図だろう。


ゆっくりと身体を離して見る。


髪の色以外、今までと変わらないエルだが雰囲気が違う。


何がとは言えないが・・・


「奴の命令に従い、動き出すのか?」


「まさか!?赤竜と貴方のお陰で、やっと支配から抜ける事ができたのです。

 何故あやつの元へ戻りましょうか。

 しゅの元へ戻る事が可能となったのです。

 貴方方に恩義こそ感ずれども、仇となすことはできません。」


警戒していたのか?


あきらかにアリシアの声から緊張が抜けるのがわかった。


「それは良かった。

 ただでさえ手一杯な現状だ、お主が以前のままだったらば未来には絶望しか残らぬ所だったわ。」


「ふふ、支配がとけてなければそうなっていたでしょうね。

 偶然とは言え、人として生れ落ちる事で支配から解き放たれたのは幸運でした。

 この世界の生命に連なった事で、一個人になる事が出来ましたから。」


「おぬしが満足しておるのであれば、助かる。

 これからは仲良く出来そうじゃな。」


エルはにっこりと笑って答える。


「あぁ、それは無理です。」


「なんじゃとっ!?」


アリシアの目に警戒の色が戻る。


エルは悪戯な笑みになると、俺の腕に抱きついてきた。


「私はこの方をお慕い申し上げております。

 騙して魂の婚姻まで交わした貴方とは相容れることは出来ません。

 どうしてもというのでしたら、婚姻の解消をお願いしますわ。」


むっ・・・胸があたるっ!!やわらかい・・・


・・・・・・はっ、今何か大事な事言ってなかったか?


聞き逃してしまった・・・


「ふふふ、残念じゃったなっ!!

 その駄肉の感触でヒロは大事な部分を聞いてなかったようだぞ。

 ミカエル、愚かなりっ!!」


「あら、貴方が自主的にそうしてくださるように、わざとヒロが聞こえないようにしただけですわ。」


「むっ・・・残念じゃが、魂の婚姻はそう簡単に解消する事ができるものじゃない。

 それはお主の方がよく判っておるのではないか?」


「いえいえ、貴方が望んでいただけるのなら、どうとでもいたしますので大丈夫です。」


「強情者めがっ!!」


「貴方こそ!!」


2人の間で火花が散っている・・・


話に入れなかった俺達は後ろでこそこそしている訳で・・・


つと、ルナが2人の間に割ってはいる。


「わらわなぞ身体で結ばれた仲じゃ!!」


「「ぶっ」」


なっ・・・いきなり何を言い出すのですか、ルナさん・・・


ああっ、皆「こんな幼女を?」みたいな目で見るのはやめてっ


あれはスキルの暴走だったんですっ!!


けっして幼女が好きなわけじゃなくて・・・それにあの時は大人な女性だったんですよ、その娘!!


「あれはスキルの影響だ、犬にかまれたと思って諦めるがよい。」


って、アリシアさんそれを言っちゃ駄目っ!!


あああああああああ、今度は「何言い出してるんだコイツは?」って目で見られてるっ!?


「まさか・・・ヒロは『獣化』を?」


さすがに師匠は気づいたみたいか。


「うむ、『獣化』を発動した影響じゃのう。」


「それじゃ、仕方ないな。

 というわけでルナ、犬にかまれたと思って諦めると良い。」


「ネイルっ!!何を言い出すのじゃっ!!」


「ヒロは私の弟子だからな。守ってやる義務が私にはあるんだよ。」


なにやらこっちはこっちで新しい火花が・・・


「ヒロ、私の周りでその『獣化』っての使ったら、蹴り倒すからね?」


ミーティアは警戒してるし・・・



「その辺で一度話をさせてもらえないだろうか?」


あちゃ・・・今度はアクスさんが怒ってるし・・・


「今は父上の遺言を守りたいと思っている。

 皆、一度落ち着いて欲しい。」


「すみません・・・ほら、皆も落ち着いてくれ。」


「ああ、エル詳しくは後で話し合うぞ?」


「判っております。アクスさん申し訳ございませんでした。」


「すまぬのじゃ・・・ネイル・・・覚えておれよ。」


「何のことでしょうか?・・・アクス様、すみませんでした。」


「私は何も悪くないんだけど・・・いたっ・・・判ってるわよ・・・。ごめんなさい」



「そうだな・・・何から話そうか。

 とりあえず、あんたらのことは父上から託された。

 民の事も同時にな・・・頭の痛いことだ・・・


 父上とエンヴィー公が亡くなった事は誰にも伝えない。

 このことを知っているのは、ごく一部の兵士とここにいる者たちのみ。


 そこの元魔王様は真犯人の詳しい事情をわかっているみたいだが、兵士の言では父上の遺体の元には勇者ミーティアが居たってことだ。」


皆の視線がミーティアに集まる。


「事情は聞いてるが、そっちのミーティアじゃない。

 偽者って言われている方だ。」


ミーティアが唇を噛む。

相当悔しいようだ・・・


「これから俺は父上の遺言に従い、色々と動こうと思っている。

 そのため、あんた等には少々窮屈な思いをして貰う事になるかもしれない。

 

 ・・・・・・手を貸してくれるか?」


互いに目をかわすと、頷きあった。


「ありがたい。

 それでは、場所を移動したい。

 謁見の魔まで良いだろうか?」


頷くと、俺たちはアクスさんに連れられて、地下にあった医務室から出る。


「ドラゴさん・・・アクアさん・・・本当にありがとうございました。

 お2人の意思は継がせていただきます。」


最後に、2人に頭を下げて部屋を後にする。



それは突然だった・・・


「兵士度も出会え!!

 こやつは手配書に会ったラース公の弟を暗殺した犯人だっ!!」


エル・ルナ・ミーティア・師匠と別れ、2人きりで話があると連れて行かれた部屋でアクスさんが叫び、俺は兵士達に囲まれる。


「すまないが、民の為だ。

 抵抗せずに捕まってくれると助かる。」


何がどうなっているのか判らないまま、俺は囚われの身となった。

お読み頂きありがとうございました。

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