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058 アクスの怒り

無事、師匠とエルの武器も決まり、店内に戻ってくるとなにやらおかしいことになっていた。


「お客様っ、どうしてくれるのですかっ!!

 これでは私が師匠に怒られてしまうじゃないですか・・・

 絶対に買い取ってくださいね!!」


「何故そうなるのじゃっ!!

 わらわが気になってこの服を手に取ったら、色が変わっただけなのじゃっ!!

 わらわは誓って何もしておらぬからなっ!!」


・・・一体何を言い争っているんだ?


「ですがっ!!間違いなくお客様が手に取るまではそのローブは純白だったんですよっ!!

 それがお客様が手に取ったとたん、真っ黒に変色したんです。

 きっとお客様が何かしたに違いありません!!

 さぁ、白状してください!!

 さぁ!!」


「うっ・・・じゃ・・・じゃが、わらわは・・・」


おぉ、あのルナが言い負かされそうになっている。


「そのローブ、師匠の最高傑作のひとつで金貨1枚もするんですよ!!

 それをそのようにして・・・

 いくら小さな子と言っても、やって良いことと悪い事があるんですからねっ!!」


「わ・・・わらわは小さな子じゃ・・・ふ・・・ふぇ・・・ふぇぇぇぇ~ん」


あ、とうとう泣き出した・・・


何をしたか判らないが、しょうがない・・・買い取っておくか。


「あの・・・」


「おい・・・」


うっ・・・アクスさんからものすごい殺気が・・・


やばいっ、これはすぐにでも弁償しなければっ!!


「すみません、すぐに弁償するので許してください!!」


「てめぇ、商品の事をよく知らずに、お客さんに当り散らしてんじゃねぇよっ!!」


・・・・・・・・え?


「本当にすまない!!」


アクスさんは大急ぎでルナの前まで行くと、頭を下げた。


「へ?師匠何やってるんですか?

 その子供は師匠の最高傑作を台無しにした犯人ですぜ?」


ドワーフのおっさんはアクスさんの目の前でルナから黒いローブを取り上げる。


「あっ、馬鹿っ・・・」


「へ?

 ・・・うぎゃぁぁぁぁ」


ドワーフのおっさんは雷に打たれたかのように痙攣すると、泡を吹いて地面に倒れ伏した。


「・・・たくっ、だからてめぇは50年経っても下っ端のままなんだよ。」


アクスさんはドワーフのおっさんを見下ろすと、ぼそっと呟いた。


このおっさん、50年も下っ端を続けているのか・・・


他にどのぐらいお弟子さんを持っているのかわからないが、それってそうとう駄目ってことなんじゃ・・・?


アクスさんはバツが悪そうに頭をぼりぼり書くと、


「はぁ・・・ったく。

 連れに対して申し訳ないことをしたな。

 このローブは主の魔力特性によってその姿を変化させるんだ。

 店の片隅においておけば、質素なただのローブに・・・

 少女のように強大な闇の祝福を受けたものなら、この様に闇色に染まる。


 こいつにも店の商品全て熟知してるはずなんだが・・・

 ったく、鳥頭だから未だに下っ端以上になれないんだっての。」


そのあともぶつぶつと、おっさんの事を褒めたり貶したりしていた。


「ともかく、悪かったな。

 だが、弁償ではないがこいつはあんたの事を気に入ってるみたいだ。

 良ければ試しに着てみないか?」


ルナに向き直り、ローブを改めて手にとらせる。


俺の服のすそをつまんでいたが、その手を離しローブを受け取ると、


「し・・・仕方ないのう。その服がわらわを気に入ったと言うのなら、試着する事もやぶさかではないのじゃ。」


さっき泣いたばかりだと言うのに、もう笑っている。


やはり子供は可愛いな。


声に出すとまた怒られるので言わないが。


「更衣室はこっちだ。ついておいで。」


アクスさんがカウンター隣にある部屋へルナを案内する。


「覗くのではないぞ?」


と言ってルナはアクスさんについていく。


さて、ルナはこれでいいとして、後はミーティアか


見てみると、エルと一緒にあれやこれやととっかえひっかえ防具を身体に合わせて見ている。


俺は素早さを生かすためにローブを着用しているが、師匠は皮の防具、エルはブレストプレート、ミーティアは各部位を守るパーツ鎧を好んで身につけている。


だが今ミーティアが見ているのはチェインメイルとローブの組み合わせだ。


チェインメイルはもう決まっているらしく、その上に羽織るローブでエルに意見を求めているようだ。


「ミーティア、先ほど選んでいたのはこちらのローブと思っていましたが、何故そっちの深紅のローブに替えたのですか?」


「え~っとぉ・・・ほら、赤い色の方が返り血が目立たなくて良いと思わない?」


物騒な理由だな・・おい。


「私としては最初に選んでいた、このローブの方がミーティアには似合うと思うのですが?」


「僕もそっちのローブの方が合うと思うけどね?」


2人にアクスさんが加わる。


「何故代えたのか判らないが、そっちの深紅のローブは弟子が作ったものでな、ある程度以上の魔力があれば誰でも使いこなせる。

 だが、最初に選んだローブは君を選んだ。

 間違いなく、君を守る守護となるだろう。」


「でも赤い方が・・・」


「じゃ、こうしましょ。私がその深紅のローブを使って、貴方が最初に選んだローブを使う。

 そして時々交換するって言うのはどうかな?」


さすがエル、まるでミーティアのお姉さんのようだ。


「う~ん・・・じゃ、そうする。」


「では、一緒に試着してみましょうか。

 アクスさんよろしいですね?」


「あぁ、小さな嬢ちゃんが着替えてるから、一緒に行ってきな。」


「では着替えてきますね。」


「行ってくるね~。」


2人が部屋に入っていくとアクスさんが話しかけてくる。


「あんた等、一体どんなパーティーなんだい?

 高額な装備をぽんぽんと買うわ、うちの秘蔵っ子共が軒並み懐く。

 さすがに俺もここまでのパーティーは始めて見た。」


言っていいものかどうか・・・


まぁ、ドラゴさんの紹介で信用できる職人だろうし、言っても問題ないか。


「言ってもいいですけど、アクスさんのことも聞いていいですか?」


この人の作るものはどこか違う。


今まで見たことも無い武器ばかりだ。


武器に精霊が宿っている?


所有者に合わせて変形する?


何故そのような武器が作れるのか知りたい。




「――と言う事です。」


「なるほど、それならば納得できるな。

 しかし、魔王・勇者・姫が一緒に行動しているとは・・・

 一昔前には考える事もできない事ばかりだ。」


「えらくあっさりと信用するんですね。」


「そりゃ、信用せざるを得ない。

 作ってから数百年ほど、主が現れなかった装備達に揃って主が現れてるんだからな。」


さすがにその言葉には驚く。


「そうなのですか!?」


「あぁ、その『赤竜の衣』も『赤竜の爪』も親父から託された身体の一部を加工した。

 作ったのは200年も前だが、今日まで宿った意思が所有者として認めたものは居なかった。」


「伝説の赤竜王って、アクスさんのお父さんだったんですか!?」


さらなる衝撃の事実に驚く。


「あぁ、だが俺は鍛冶や精霊の祝福を受けても戦闘に関してはからっきしだったんでな、こっちの道で生きていく事にしたんだよ。」


「では、もしかしてここの装備が異常なのって・・・」


「あぁ、俺のスキルには『鍛冶神の加護』と『精霊王の加護』ってのがある。

 どちらも固有ユニークスキルだから、今の世界ではここまでの武具を作る事ができるのは俺だけだろう。

 まぁ、俺が死んだ後はしらねぇがな。」


事も無げに教えてくれた。


その2つのスキルがあるからここまでの装備を作る事ができるのか。


なら、ここで装備を整えるのが一番だろう。


お読み頂きありがとうございます。


1話ぐらいで買い物終ると思っていたのですが・・・あんれぇ?


9/6訂正

 × 親父の遺体を使って作った。

 ○ 親父から託された身体の一部を使って作った。


色々と設定が甘い部分があり申し訳ございません。

この先の設定などが頭の中で絡まる時があるため、気がついたときはご指摘いただければと思います。

今回ご指摘いただいた方。本当にありがとうございました。

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