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057 暴風のレイピア・赤竜の爪

他の皆は?と見てみると、師匠は一本のレイピアを手にうっとりと眺めていた。


まったく微動だにせず、魂が抜かれたように魅入ってる。


「ちなみにあのレイピアもそれなりに気難しい武器だ。

 気に入らない奴が触れば手を切ることもあるんだがな。

 あの嬢ちゃんは気に入られたみたいだな。」


嬢ちゃんって・・・アクスさんのと師匠は同じぐらいにも見えるが・・・


「ちっと試してみるか・・・

 お~い、獣族の嬢ちゃん、試し斬りしてみるかい?」


試し斬りのあたりで師匠は顔を綻ばせながら振り向く。


「いっ・・・いいのですかっ!?」


「おう、裏に訓練用のでく人形がある。

 試しに行ってみるかい?」


「お願いしますっ!!」


そのままアクスさんは店内を見渡すと、


「そこの水色髪の嬢ちゃん、あんたも短剣の切れ味試してみるかい?

 あと、・・・お~い、店番頼むよ。ちっと試し斬りさせてくるわ。」


エルも誘った上で奥のほうに声をかける。


「はいっ、師匠すぐに参ります。」


50ぐらいのひげもじゃおっさんが走って出てきた。

見た感じグリトニー公に似ている事からドワーフ族かな?


あの人が師匠ならまだしも、あの人に師匠って呼ばれて居るのか・・・


「失礼だが、アクス殿はおいくつなのですか?」


師匠も疑問に思ったのだろう、率直に聞いてきた。


「あぁ、僕は火竜族でね、見た目は20代でも、実際には500歳なんだよ。

 ちなみに彼はドワーフで200歳だよ。

 僕より150ほど年下で50年前から弟子入りをしているんだ。」


色々とおかしい気もするが、きっと突っ込んだら負けなんだろう・・・


「ほう、やはり種族が違うと寿命も違うのですね。」


師匠が納得しているので、問題はきっとないはずだ。


「それでは行きましょうか。」


いつの間にかエルが一本の短剣を持ち、俺の横に立っていた。


「では、ついてきて下さい。」


アクスさんは横にあった扉を開けると、その奥に入っていった。


師匠とエルもアクスさんについて、扉の奥に消えていく。


ちょっと気になったので、俺もその後ろについていった。




中は10畳ぐらいの広さで、中央には1体の木偶人形が座り込んでおり、片隅にはいくつもの木偶人形が転がっている。


「それじゃ、先に試してみるのはどっちかな?」


師匠がエルに頷くと、エルは入り口脇(俺の隣)に戻ってきた。


「それじゃ、準備するよ。」


アクスさんが何か唱えると、木偶人形が動き出した。


「強さはこの国の一般兵士並みにしておいた。

 存分に試してくれ。」


そう言うと木偶人形が師匠へと襲い掛かっていった。


今のは一体なんだ?と思うが、師匠もエルも平然としている。


この世界では、木偶人形が動き出すのは普通なのだろうか?




木偶人形はそれなりのスピードで師匠のほうへ向かっていく。


右手を振りかぶって師匠を殴りつけようとするが、師匠は既に人形の横へ回り込んでいる。


人形が右手を振り下ろすのと、師匠のレイピアが人形の頭部へ吸い込まれるのは同時だった。


人形の頭部へレイピアが吸い込まれると、刺突面を中心に周辺が抉り取られた。


レイピアを引くと同時に後ろへ飛ぶ、人形はそのまま崩れ落ちた。


「この国の一般兵士とはこの程度なのですか?

 鍛え直すことを薦めたいですが、他領の事なのであまり口を出すのも・・・」


等と呟いている。


ここで間違っても、貴方が強すぎるんですよ。とは間違っても言えない。


「ふむふむ、風の精霊が宿った武器だとこのぐらいの威力は出るのか・・・参考になるなぁ。」


アクスさんは冷静に分析してるし、変なのは俺のほうなのだろうか・・・


「ありがとうございました。ですがこのレイピア、魔力を通しただけで風を纏った気がします。

 どのような武器なのでしょうか?」


「その武器は金剛鋼をベースに剣身を作成し、風の魔石を柄に合成して作ったら、風の精霊が宿ってな。

 精霊が気に入った奴には手を貸してくれるそうだ。」


魔力を通した、と言う所で怪訝な顔をしたが、特に詮索をする事も無く説明してくれた。




「それでは次に私が試し斬りしてもよろしいでしょうか?」


短剣を撫でながらアクスさんに尋ねている。


エル・・・目が怪しいけど、その短剣変な呪いとかかかってないだろうな?


「そうだね、じゃ次行ってみようか。」


アクスさんは新しい木偶人形を持ってくると、先ほどと同じく詠唱を唱える。


「今度は兵隊長レベルにしてあるよ。

 さっきより手ごわくなっているから気をつけてね。」



人形がエルに向かって敬礼する。


先ほどの人形が問答無用で襲い掛かってきた事を考えると、今回は理知的になってきたと考えて良いのだろうか。


エルも人形に敬礼すると、人形は拳を、エルは短剣を構える。


ゴクリ・・・


人形が先に飛び出す。


低い体制からエルの足元へタックルを仕掛ける。


エルは素早く避けると、短剣を人形の首筋に突き刺そうとする。


カインっ


エルの攻撃は装甲の厚さに阻まれる。


「ふむ、あの子はおねぼうさんだったが、まだ寝ぼけているのかな。」


どう言う事だ?


体制を立て直した人形は短剣の攻撃を警戒したのか、ヒットアンドアウェイで短剣の射程内に入らないように戦っている。


だが、エルの表情はまったく曇っていない。


どうやらあれを試すつもりらしい。


だが、人形の動きは素早い。


集中する時間が取れなければ、発動は難しい。


「さすがに目が覚めないと難しいだろうな。試し斬りはここで終了しておいた方がいいかな?」


アクスさんが詠唱を唱えようとした所で、異変に気づく。


ザシュッ


一撃離脱をしようとした人形の右手が地面に落ちる。


「・・・エル、もう自分のものにしてるな。」


集中する時間は無かったはずだ・・・


だが、一瞬の隙にエルの持つ短剣は炎に包まれている。


ただの炎ではない、白い炎が揺らめき陽炎のように空間自体がゆがんでいる。


炎は温度によって 赤→白→青 へと変わっていく。


それだけ炎の温度が高いと言う事だ。


「いきますっ」


短くそれだけ言うと、エルは短剣を人形に向かって投擲した。


短剣が手を離れた瞬間、揺らめきによって姿を消す。


ボコッ・・・ボココッ


音がして人形の腹部に大きな穴が開く。


それどころか、人形の後ろにある壁にまで大きな穴が開いていた・・・


穴の周囲は融けて真っ赤になっている。


「「・・・エル、やり過ぎ」」


俺と師匠は揃ってエルを嗜め、アクスさんはその威力に呆然としていた。




「実は―」


アクスさんの意識が戻ってきたところで先ほどの説明をする。


「なるほど、魔力を短剣に纏わせ属性を乗せたってことか。

 よくそんな事が出来るね。」


「ええ、ですがまさかあれほどの威力になるとは思っていなかったもので・・・」


「武器との相性も良かったんだろうな。」


「と言いますと?」


「あの武器は先ほど彼が購入した『赤竜の衣』と同じく伝説の赤竜王の爪から作られた短剣だ。

 こいつはローブと違ってねぼすけでな、嬢ちゃんを気に入って手にとらせたのか、嬢ちゃんが持っていたのがたまたまその短剣だったのか知らないが、間違いなく嬢ちゃんを気に入ったようだ。

 火竜の爪だけあって、炎の加護がある。だから嬢ちゃんの技があそこまでの威力になったんだろう。」


あの威力は短剣があったからこそと言う事か。


それでも凄い、師匠もエルも新しい武器を得たことで相当なパワーアップとなるだろう。


「レイピアが金貨1枚、短剣が金貨2枚だ。

 両方とも名付けはしていないから、嬢ちゃん達でそいつらに名前をつけてやってくれ。」


師匠は懐から金貨1枚を取り出し、アクスさんへ渡す。


「お前の名は『暴風の突剣サイクロン』だ!!」


そう言って師匠はレイピアを目の前にかざす。


サイクロンと名付けられたレイピアは、キラリと光り師匠に答えたかのように見える。


「私もお願いします。」


エルも懐から金貨を取り出すと、アクスさんへ渡す。


「貴方をこれから『赤竜のファフニール』と呼びます。

 これからよろしくお願いしますね。」


ファフニールと名づけられた短剣にキスをすると、剣身が赤く染まっていく。



「・・・良い持ち主に会ってよかったな、お前達。」


2人には聞こえないよう、ぼそりとアクスさんが呟いていた。

お読み頂きありがとうございます。

なんか思っていたより、進みが遅いですね。


小説を書き始めたのが最近からなので、キャラが妄想の中で勝手に動き回っています。

こういうのが普通なのか判りませんが、キャラ達の動き次第で展開がもっと遅くなるかもしれません。

書きたい場面とか色々考えているのですが、風化しないか心配です・・・


読んでいる方は、こんな感じのまったり展開でも読んでいただきありがたいと思っております。


※因みに武器や防具の名前は何故か『赤竜の爪』で『爪』の部分だけに『ファフニール』と表示されていますが、『赤竜の爪』で『ファフニール』と読んでいただけると助かります。これは他の武具にもいえるので、よろしくお願いします。・・・色々試したのですが、『の』を入れると表示が変になってしまいました・・・未熟ですみません。

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