044 新たな制約
え~っと・・・
何か可笑しいのだろうか。
ここは付き合って笑うべきかっ!?
よし、笑ってみよう。
「あははははははははっ」
『笑うでないわっ』
さっきまでとうって変わって怒気がする。
『まったく、お主は最も肝心な部分を忘れおって。』
「う・・・申し訳ない・・・」
『まぁ、あの時はお主も意識が混濁しておったからな。いまさら責めても仕方あるまい。』
「はぁ・・・」
『しかし、お主の勘違いのせいで我はずっと大変だったのだぞ?』
「えっと・・・?」
『我としても覚悟を決めてお主と魂を結んだと言うのに、お主は真名を間違えて言うから、結び方がおかしくなったのじゃからな。』
「それはすみません・・・」
『まぁ、大変だったのは我だけでなく、お主もだったから互いに大変だったとしか言いようが無いが・・・』
「俺もってことは、何か俺も問題が?」
『ん?気づいておらぬかったのか?』
「何を?」
『お主の膨大な魔力が、いつもほぼすっからかんな状態についてだ。』
「・・・・・・・・え?」
『魂の結び方がおかしくなったせいで、お主はほぼ前魔力を我に注ぎ込むが、我には百分の一しか魔力を受け取る事ができていなかったのじゃよ。』
「それってどう言う事?」
『お主は魔力が膨大なのに魔法がほとんど使えない。我は魔力を取り込むことが出来ないので精神体を復活させる事ができない。と言う事だ。』
「え・・・・えぇぇぇぇぇぇぇ~」
『まったく、魔力ぐらいステータスで確認できるじゃろうに。』
「いや、バグってるのかと思ってて・・・」
『なるほど、そう思い込んでいたのか。
我も気づくことができんで悪かった。』
「いやいや、アリシアが悪い訳じゃないから。」
・・・・・・・・・あれ?
『ほう、話してる間に思い出してきたか?』
「ん~?」
『ほれ、思い出してみい。我と婚姻したではないか?』
婚姻・・・コンイン・・・こんいん・・・えっと・・・
俺の中にこの世界で始めて制約を行った場面を思い出していく。
俺が何かに喰われそうになった事・・・
その直前まで会話していた事・・・
助かる為に彼女・・・アリシア・サタンと婚姻を結んだ事・・・
全て思い出した。
「あ・・・ああぁぁぁぁぁぁ~」
そう、俺は婚姻を結んだにも関わらず、ルナとあんな事をしてしまった・・・
『不倫』
頭の中に浮かんだ文字はその2文字だった・・・・・・
「うわぁぁぁぁ、ごめんなさいーーーー」
『あぁ、あれは我が考えた末、獣化を起動させたのだから仕方あるまい。
犬でもかんだと思って諦めてくれ。』
それでいいのか・・・
まぁ、そう言ってくれるのなら助かる・・・か?
『それよりもフィアンセ殿よ、我が復活する為にも改めて制約を結んで欲しい。』
「制約を?」
『うむ、あの時の言葉をもう一度、我とそなたで申し立てるのだ。
・・・もちろんお主が構わないのであればじゃが・・・』
俺はこの声の主に何度も命を助けて貰った。
それなのに、頼みの1つも聞けないとあっては男じゃない。
「もちろん、アリシアが良ければ構わない。」
『肉体が無い嫁になるのじゃぞ。』
「大丈夫っ」
ちょっと大丈夫じゃないけど、ここで断るのは違うだろう。
『周りに変な人と思われるかも知れぬのじゃぞ?』
「大丈夫、すでに思われてる。」
ちょっと涙声だったかもしれない。
『ならば我と共にもう一度制約しよう。』
「もちろんだっ。」
『改めて名前を聞こう。』
「生まれた時の名前・・・それは、【郡司一馬】だ。」
『我 アリシア・サタンなり。』
「我、郡司 一馬なり。」
『汝、グンジ カズマよ』
「汝、アリシア・サタンよ」
『その力を我に与えよ』
「その力を我に与えよ」
『代償として、魂の半分を明け渡す』
「代償として、魂の半分を明け渡す」
『互いを新しき半身とし、永遠に離れない事を誓う』
「互いに新しき半身とし、永遠に離れない事を誓う」
『ここに魂の婚姻を成立する』
「ここに魂の婚姻を成立する」
目の前の光が膨張し、一気にはじけ飛ぶ。
そして頭の中に、
『これで名実共に我とお主は魂で結ばれた婚約者。
他の娘共は、妾なら許してもいいぞ?
これから魂が掻き消えるまでよろしく頼むぞ、フィアンセ殿よ。』
と声が響いてきた。
目を開けると、驚いた顔のドラゴさんと、瞑想を途中で辞め、穴が開くほど俺を見つめているルナが居た。
「えっと・・・?」
「ヒロ、その魔力の波動は一体どうしたのじゃっ!?」
ルナが掴みかかる勢いで襲い掛かってきた。
俺は久しぶりにステータスを開いてみる。
<名前> ヒロ
<職業> はぐれ魔王
<性別> 男
<年齢> 19歳
<LV> 高い
<HP> 並
<MP> 膨大
・・・・相変わらず役に立たないステータスだ・・・
「ごめん、自分では判らないんだけど・・・」
「ふむ、ならばお主の知っている一番強い呪文を唱えてみると良い。」
ドラゴさんがアドバイスしてくれるので、回復魔法の最上位『オメガヒール』を唱えてみる。
疲れが吹き飛んだ気がする・・・が、目に見える効果が現れないので、ちょっと判りづらい。
「わかりづらいのじゃ。ふんっ。」
ガブッ・・・ちゅ~ちゅ~ちゅ~・・・
「・・・っぷはっ、ご馳走様なのじゃっ。美味しかったぞ。」
いきなり血を吸うとか・・・やばい、意識が途切れそうだ・・・
一体どれだけ吸ったんだ・・・
おおぉ、意識が・・・・やばいっ
『オメガヒール』
手の光が身体全体に広がっていく。
どうやら血が足りない気はするが、身体のふらつきは治ったようだ。
「おぉ、最上級の回復魔法を連続で使えるとはすごいの・・・」
ルナは素直に驚いている。
「やはり、阻害していた流れが正常となったか・・・
これで魔術が使えると考えて良さそうだな。」
「そうですね。
それと2人に・・・いや、皆に報告しなければならない事が出来ました。」
やはり判っているのだろう。
ドラゴさんは鷹揚に頷いた。
俺の中のアリシアが、声をかけてくる。
『すぐに皆を集めるのだ。
これからシン国の・・・いや、世界について重大な話をせぬばならぬ。』
「判ってる。だから今ドラゴさんに交渉しているんだろ。」
俺の独り言にルナもドラゴさんも?マークだ。
うん・・・独り言の多い暗い人に思われても仕方ないよね・・・
でも、アリシアがどうしても伝えなければいけない事と言っている以上、皆に伝えぬばなるまい。
「お願いします。」
真剣な思いが伝わったのだろう。
「すぐに他の者にも伝えよう。
謁見の間へ移動してくれ。」
と言って兵士に指示を与え続けていった。
お読み頂きありがとうございました。




