042 もう1人のミーティア
ドラゴさんは相当つらそうだ・・・
やはり前魔王様を守りたかったんだろう。
だが、もう1人のミーティアとは一体何なんだろう。
詠唱も泣く魔法を使いこなす・・・俺も詠唱を必要としないで魔法を使う事ができる。
異世界人、もしくはスキルの影響でそうなっているかと思っていたが、その話からするともう1人のミーティアも異世界人なのだろうか。
しかし、人族・魔族・魔獣を従えていたと言うのが分からない。
一体どうすればそんな混成部隊を作る事ができるのだろうか?
だが、もう気になる事も出来た・・・
「エル、何故分かっていたなら話してくれなかったんだ?」
俺たちの視線はエルの方へ集中する。
エルは答えづらそうに躊躇った後、
「ドラゴ様との約束でしたので・・・」
とだけ答えた。
ドラゴさんのほうを見ると、首を振ってくる。
「悪いが理由があってな。
そこに関しては触れないで貰いたい。」
何か理由があるのだろう、釈然としないがここはドラゴさんに従っておこう。
さが、もう1つ気になる事はある。
「1つ聞いてもよろしいでしょうか?」
魔獣を操る・・・それは本当にできる事なのか?
「魔王は魔獣を操る事ができるのでしょうか?」
ドラゴさんはゆっくりと首を振り
「魔獣を操るなど、前魔王様でもできる事ではなかった。」
「では一体どうやって魔獣を・・・」
「それがワシにも不可解でな。
色々調べてみたが、まったく分からなかった。」
「そうですか、ありがとうございます。」
魔王でもできなかった事をもう1人のミーティアは行う事ができる。
それは何かを意味するのだろうか?
念のためにエルにも聞いてみるか・・・
「エル、人族では魔獣に関して何か操る方法の研究とかしていたか?」
「いえ、私の国では研究をしてはいましたが、制御できたと言う報告はありません。
他の国でも制御が出来るのなら、パワーバランスが崩れるほどの研究です。
すでに公表し、第一国となっているでしょう。」
そうか・・・
魔王の力と勇者の力、そして未知の力を操る・・・
「ドラゴさん、この世界に第3勢力と呼べる勢力はありますか?」
「それはワシも考えたが、見つける事はできない。
最近分かった唯一の可能性以外は・・・な。」
「可能性・・・ですか?」
「うむ、・・・お主の召喚主だ。」
衝撃を受けた・・・
幾度となく引き出される名前・・・
だが納得する事はできなかった・・・
「理由を教えていただく事はできますか?」
自分の声が硬いのが判る・・・
「まず最初に確認したいが、回復魔法のその先は何か分かるか?」
回復魔法・・・
肉体の治癒力を補助し、肉体の回復を行う術
その先・・・だめだ、思いつかない。
「申し訳ありません。考え付きません。」
「ふむ、ならばラース公の治癒術を受けた事はあるか?」
「ええ、それならば受けた事があります。」
「他の回復魔法にはない、ラース公の回復魔法の特徴は覚えているか?」
「激しい痛みを伴いましたね。他の回復魔法には無かった事です。」
「ならば、何故痛みを伴う治癒かわかるか?」
「そういう魔法だから・・・ではないのですか?」
「まずそこが違うのだよ。
彼女の回復魔法をただの回復魔法と思っている時点で間違っている。」
どう言う事だ?
「彼女の治癒術は回復魔法ではない。いわば蘇生魔法なのだよ。」
なっ・・・
「蘇生魔法ですか!?
そのような魔法存在してはいけないはずでは・・・」
あまりに驚いたのか、普段口を挟むことの無いエルが口を挟んできた。
「神話では、神の禁忌に触れ、使用する者が途絶えて久しいと聞き及んでおります。
一体どこからそのような術式を手に入れたといわれるのですか!?」
「それはワシにも分からない。
だが、彼女の治癒で感じる痛み、それは細胞の増殖における負荷から生み出されるものと思っている。
一度だけ見た事があるが、彼女は失われた左手を治癒術で再生していた事がある。
無から有を作り出す魔法・・・
それは蘇生術ではないのかね。」
エルはドラゴさんの言葉に何も言い返せず、何かを考え込んでしまった。
「どのような理由でそんな術式を手に入れたかは分からない。
だが、失われた術式の中には、魔物を従わせる魔操術も含まれている。
もしも、第3勢力と考えられるのが彼女だったら・・・と思うと当てはまるのだよ。」
蘇生術に魔操術・・・
エルが短剣に操られていたのも魔操術と言う可能性はある。
それを考えると、確かにラースさんが・・・と考えられない事も無い。
だが、理由が見つからない。
ドラゴさんはその辺も考え付いているのだろうか?
「ラースさんがそんな事をする理由等は考え付くのでしょうか?」
「・・・そこがワシにも判らんのだよ。」
そこで振り出しに戻ってしまっているから、可能性に止めていると言う事か。
「そうですね。俺もラースさんの真意を知るべく、ドラゴさんに相談しに来たんです。」
エルも俺もドラゴさんも頭を抱えてしまった・・・
「そんなの、偽ミーティアをとっつかまえて聞き出せばいいんじゃないかな?」
ミーティアが不思議そうに聞いてくる。
・・・確かにそうか
「確かにそうだ、まずは偽ミーティアを捕まえ、聞き出すのが一番だな。
だが、偽者は強いぞ?
このワシでもあやつには勝つ事ができなかった。」
「ドラゴ様っ!?」
その言葉にエンヴィー公が驚きの声を上げる。
「まさか、本気を出した竜族・・・いえ、ドラゴ様に勝つとは・・・偽者はどのような力を持っているのですか?」
「あれは面白いぞ。光と闇、相反する2つの特性をうまく使い分けていた。
戦っていて、久しぶりに血が滾ったわ。」
ドラゴさんはどれほど強いのだろうか?
こっそりとルナに聞いてみる。
「ドラゴ公の力か・・・前魔王様の次に強く、ブレス一息で一個師団を壊滅させる事ができるのじゃ。」
そんな人物に勝つとは、偽者の力も相当なものだな。
「だが、ワシもただではやられはせん。
意識を刈り取られる前に両手と右足は食いちぎってくれたわ。」
それは相打ちって事ですか・・・
「だからワシ等を助けに来た時、偽者が立ちはだかってこなかったのだろう。」
そのおかげで救出が可能だったのか。
ドラゴさんの言うとおりの実力であれば、エル達に勝ち目は無かっただろう。
「逆に言えば、ドラゴさんが助け出された以上、偽者は傷を回復次第、再度攻めてくる可能性がある・・・と言う事ですか?」
ドラゴさんは意地の悪いような笑みを浮かべると、
「よく判っておる。
きっと今度こそワシを捕まえようとやってくるだろうな。」
「つまり、その時に今度はこっちが偽者を捕まえてやるって事だね?」
ミーティアもドラゴさんのような笑みを浮かべると、納得したように問いかけた。
「勇者よ、お主とは他人のような気がせんな。
本当に面白い。」
いやいや・・・ドラゴさん、隣でアクアさんがすっごい顔でミーティアをにらんでますよ?
ミーティアもまったく気づいてないが、後で教えてやっておいたほうがいいだろうな・・・
「と言う事で魔王よ、偽者を捕まえる為に手を貸してもらいたいが如何かな?」
おれとしても偽者が誰の意図で、どのように動いているか知りたい。
エルとルナの顔を見ると頷いてくれている。
ミーティアは間違いなくドラゴさんの手伝いをしたがっている。
ならば、考える必要も無いだろう。
「俺でよければ、是非手伝わせてください。」
「うむ、よろしく頼むぞ。」
そしてドラゴさんの隣で今まで黙っていた師匠が、
「ラスト公の代わりといっては何だが、私の力も加えさせて貰っていいかな?」
と言って来る。
師匠の力は俺が一番知っている。
手伝って貰えるのであれば、これほどありがたい事は無い。
「ラスト公の・・・ではお主にも働いて貰おうぞ。」
ドラゴさんも同じ意見のようだ。
次の目標は決まった。
偽者を倒し、ドラゴさんの協力を得る。・・・だ。
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