034 新たなる謎
「ヒロ・・・」
後ろからルナの声が聞こえる。
ルナもミーティアとかなり仲が良くなっていた、やはりショックだったんだろう。
ミーティアのことは信じたい、だがプライド公を襲撃しているのはミーティアだという。
ならば、ミーティアに連絡を取るためにも、家に行かなければならない。
だが、家につなぐ事ができないのはどういうことだろう。
この鍵はマスターキーだ。
たとえどのような状況でも、マスターキーを使って家に入れないと言う事はありえないと聞いた。
一体何が起こっている・・・
ミーティアはどうしたんだろう。
そして一緒についているエルの安否は・・・
最悪の事態を想定しよう。
何かライブラで異変が起き、ミーティアは元勇者としてプライド公と戦わざるを得なくなったとしよう。
エルは家で待機していてくれるのであれば構わない。
だが、エルもプライド公との戦いの場にいるかもしれない。
もやもやする・・・理由は分からないが、彼女を危険な目に合わせたくない。
頼む、どうか安全な場所にいてくれ・・・・
トントンッ
肩を叩く感触に気づくと、隣にはルナが居た。
「ヒロ、とりあえず他人の家の中では扉を開く事はできんぞ?」
・・・・・・・・・・・はい?
「ミーティアとエルの事が気になるのは分かるが、急ぎすぎじゃ。
まずは落ち着くのじゃ。」
えーっと・・・・、うん、まずは落ち着こう。
その間にもエンヴィー公は兵士と会話を続けている。
「連絡が取れなくなった場所は分かるか。」
「はっ、おそらく人族との国境。
ここから早飛竜で5時間の場所でございます。」
「早飛竜で5時間か・・・今からではあの御方の身が・・・」
「ワープゲートは無いでしょうか。それがあればすぐに転移できます。」
「ラスト様、残念ですが通信が断たれた場所は近くにワープゲートはございません。」
「そうか・・・」
「魔王よ、聞きたい事がある。」
エンヴィー公から声をかけられる。
おそらくミーティアの事だろう。
「はい、何でしょうか。」
「ミーティアと連絡を取ることは可能か?」
「ええ、家に戻れば魔力通話の機械があるはずです。
そこにミーティアが登録していれば連絡する事が可能かと思います。」
「なら、すぐにお主の家に行かせて貰おう。
悪いが、拒否権は無い。」
「分かりました。すぐに扉を開く為、城から出たいのですが。」
「それなら中庭の樹木を使えば良かろう。すぐに行くぞ。」
俺とルナ、師匠とエンヴィー公の4人は中庭に向かうと、群生している樹木にマスターキーを挿す。
今度は問題なく扉が開く。
4人で扉を開くとそこには山と詰まれた皿と美味しそうに串焼きをほおばるエル。
そして足元で青い顔をしてぐったりしてるミーティアが居た。
「・・・・・・・・何してるの?」
俺の声に振り向き、ルナは固まった。
「いえっ、これはなんと言いますか・・・。」
うん、エルがご飯大好きなのは知ってたけど、ここまでだったとはね・・・
「ふっ・・・普段はきちんと我慢しているのですが、今日はミーティアが臨時収入が入ったとご馳走してくれると・・・」
赤くなってうろたえているエルが可愛くてつい、笑みを浮かべてしまう。
「大丈夫じゃ、エルが食いしん坊なのは周知の事実なのじゃっ。」
ルナがエルを慰めようとするが逆効果だろう、それ・・・
「う・・・うう・・・はうぅ・・・」
エルは困ったようにしつつも、皿に残っている串焼きをほおばり始めた。
「は・・・恥ずかしいぃ・・・」
いや、食べながら言うなよ・・・
「彼女がエルで間違いないのだな。」
空気を読まずにエンヴィー公が聞いてくる。
「ええ、話にあったウェンディア王国第3王女です。」
「そうか、ならばそこで青くなっているのがミーティアでいいのだな。」
冷ややかな目で床に横たわっているミーティアに目を向ける。
「うう・・・・お腹痛い・・・」
どうやらエルに付き合って食べたのだろう、食いすぎで動けなくなっているようだ。
「正直に答えて貰おう、この数日おぬし達の行動を聞かせて貰いたい。」
エルが?の顔だ。
おっと、そうか。
「エル、この方はエンヴィー領の大公でエンヴィー公、プライド公の補佐をしている方でもある。
今プライド公にミーティアが襲撃を行っていると報告があり、エルの安全とミーティアに連絡が取れないか戻ってきたんだ。
それがこの状況だったからな、
俺も2人がどうしていたか知りたいし、教えて貰っていいかな?」
そういうと納得したようだ。
「エンヴィー公、お初にお目にかかります。
元ウェンディア国第3王女 エルと申します。」
さすが王女なだけある、その優雅なしぐさに心奪われそうになってしまう。口の横にソースついてるけどな。
「エルっ」
エルに声をかけつつ、口の横にソースがついている事を伝えてやる。
エルはまったく気にしない優雅なしぐさでソースをふき取った。・・・慣れてるなこれは。
という余談はおいておいて、エルは俺達と別れてからの様子を教えてくれた。
ミーティアはこの国で冒険者として活動しているらしく、エルとペアを組んでクエストを受けていたようだ。
冒険者に仕事を斡旋する場所。
つまり冒険者支援グループという組織があり、そこで冒険者はクエストを受け、クエストに応じた賃金が支払われるのだと言う。
冒険者支援グループは世界に点在し、基本的に中立的存在で人族でも魔族でも登録に制限は無い。
ただし、犯罪を犯したものはその限りでない。
サトリのように、『審議官』スキルを持つ者が各地で飛び回っており、登録の際や問題があったときはすぐに駆けつけられるようになっている。
そのため、犯罪を犯した者等は、その場で弾かれ、憲兵や領主へ突き出されるそうだ。
クエストも民間のお願いや困りごとを解決するのが主で、国に対しては魔獣討伐の手助けや、災害救助等は手伝うが、戦争関係は絶対に手を貸さないらしい。
そのため、冒険をしながら生活する物は基本冒険者支援グループへ登録するのが一般的だそうだ。
ミーティアとエルはウェストタウン近くに巣を作っていた、破壊意思の巨大鬼の討伐を行っていたそうだ。
ウェストタウンからさらにグリード領へ2日ほど進んだところにオーガの巣があったらしく、そこを襲撃、壊滅し、戻ってきてその報酬でご馳走を食べていたとの事。
ミーティアが突っ伏しながらも冒険者カードをよこし、それを確認したエンヴィー公が納得した事で、ミーティアの嫌疑は晴れた。
俺としてもミーティアが暴走して、プライド公へ攻撃を仕掛けたのではなくほっとしていた。
だとするとプライド公を襲ったミーティアとは一体・・・
エンヴィー公から、声がかかる
「早飛竜の準備が整ったと念話が入った。
今は強力な力を持つ者が必要だ、ここに居る全ての者の助力を要請する。」
プライド公には力を貸して貰わなければならない。
俺が助力するのは当然として・・・
エルを見るとすでに準備を開始しているようだ。
師匠やルナも頷いている。
「エンヴィー公、全てが終わったら私も聞きたい事があります。宜しいですか。」
ミーティアはエンヴィー公に取引を持ちかけているのだろう。
「私で分かる事なら答えよう。だからあのお方を助けるのに力を貸してくれ。」
「・・・・・・分かった。」
ミーティアとしては複雑なようだ。
だが、勇者として名をはせた、彼女の助力があればかなり違うだろう。
俺達は急いで準備を整えると、俺の開いた扉からエンヴィー公の中庭に出た。
そこには3人は乗ることのできそうな飛竜が5匹待ち構えていた。
「今回は急ぎだ、私と魔王で1匹。他の者はドラグーン+1名で騎乗し、最速の状態で向かう。
質問はあるか。」
1人の兵士が質問する。
「宜しいでしょうか。」
「なんだ。」
「人数が多少多いです。構成はいかが致しましょうか。」
「今は個の質が必要だ。質で言えば客人に勝る兵士はここに居ないだろう。。
飛竜の操作は必要だろうから、ドラグーン4名と私、後は客人5名で向かう。いいな。」
「はっ、そのように手配いたします。」
兵士は4名のドラグーンを選ぶと、俺に向かって近づいてきた。
「プライド公は我等にとって必要な御方であり、最大の恩人です。
何卒、よろしくお願いいたします。」
本当は自分が行きたいところを我慢しているんだろう。
握った手から血が滴っているのが見える。
「任せてくれ。」
俺に出来るのは、彼等の代わりにプライド公を助け出すだけだ。
「皆、必ずプライド公を助け出す。
力を貸してくれ。」
「「「「もちろんっ」」」」
お読み頂きありがとうございます。




